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2024年11月21日
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【ツンデレと一緒に焼き芋を食べたら】

2010年03月27日
 学校からの帰り道、みことと一緒に歩いてると石焼き芋屋がイモイモ言いながら近づいてきた。
「みこと、石焼かれたイモでも食わんか? 奢られてもいいぞ」
「食うのは構わんが、絶対に奢らん」
「ケチ」
 ちょっと悪口言ったら首を絞められたので、必死に謝る。
「奢ってくれるなら、許してやろう」
 死にたくないので奢ることにする。余計なこと言うんじゃなかった。
「げほげほ……おっちゃーん、イモくれ。二個」
「あいよっ、イモ二つで1000万円だよ」
 この国の物価はここまで跳ね上がっていたのか。あまりの高額に思わず泣きそうになる。
「じょ、冗談だよ……1000円ね、1000円」
「なんだ。でも高いな、10円にしろ」
「んなこと言われてもねぇ……うちも商売なんで」
 そう言いながら、おっちゃんは困ったように笑った。
「じゃあ間を取って100円。これ以上出せというなら、今ここでみことを犯す」
 鼻血が出るまでみことに殴られたので、犯さない。
「はい、1000円」
「ま、まいど……」
 赤い染みのついた1000円札を怯えながら受け取り、おっちゃんは俺に芋入り袋を預け全力で逃げた。
「んじゃ食うか」
「いいからまず鼻血を止めろ。見てて不愉快だ」
 誰のせいだとは言えず、みことに芋袋を渡してから鼻にティッシュを詰める。
「……む? おいタカシ、これ三つ入ってるぞ」
「どれどれ」
 勘違いしたフリをして、みことの襟を指で軽く引っ張り胸元を覗き込む。
「ブラがあって先端のさくらんぼが見えない。みこと、外して」
 色々あって、また鼻血が噴出した。
「暴力はよくないですよ、みことさん?」
 半分泣きながら鼻に再びティッシュを詰める。
「貴様が余計なことしなければ済む話だろうが、この色欲魔人めッ!」
「わはは。んで、三つとか言ってなかったっけ?」
「あ、ああ。これ……さっきと同じ事したら、確実に殺すからな」
「わははは、ま、まさか、するわけないじゃないデスカ」
 背中に冷や汗が伝うのを感じながら、みことの持つ袋を覗く。確かに、芋が三つ入っていた。
「本当だな、三つある。きっとアレだ、みことの暴虐ぶりを見て恐れをなし、一つ献上したんじゃないか?」
「そんなわけないだろう! 私があまりに綺麗なので、サービスしたに決まってる」
 一人で納得してるが、本当は殴られまくってる俺を哀れに思い、サービスしてくれたに違いない。
「何を落ち込んでいる? ほら」
 辿り着いた真実に一人落ち込んでいると、みことは俺に焼き芋を差し出した。
「喜べ、特別に貴様にもやろう。嬉しいだろう?」
「みことみこと、俺の金。俺のお金がイモに変わったの。奢ってもらって喜ぶのは、みこと」
「…………」
 子供が喰らったら泡吹いて失神するレベルの視線に貫かれる。
「わぁい、みことが手ずからイモを食べさせてくれるなんて、人生で7番目くらいに嬉しいなぁ」
「だっ、誰も手ずから食べさすなどと言ってない! それに、7番目とは何事だ!」
「じゃあ6番目」
「何を言っている。1番目に決まっているだろう」
「どうでもいいから食おう。腹減った」
「…………。ふんっ!」
 俺の口に芋を突っ込み、みことは乱暴に芋の皮を剥いた。
「あぎあぎ。うーん、皮がまじぃ」
「うるさい。黙って食え。皮は剥け」
 言われたとおり黙って食べる。3秒で飽きた。
「みこと、イモ食うとおならが出るよな。つまり、俺たちはおならカップルなのか?」
「……貴様の脳はどうなってるんだ? まったく、訳の分からぬこと……か、カップルだと!?」
「カップル。男女ふたりの組み合わせ。夫婦。恋人同士」
「ば、ばか、私と貴様なんかがそんな関係の訳ないだろう! このばか、ばかばか!」
 みことは顔を真っ赤にしながら俺を叩いた。照れ隠しの攻撃と思うが、確実に急所ばかりを狙ってくるので実は俺を亡き者にしようとしているのかもしれない。
「すいません、もう少しだけ生きたいです」
 あまりの痛みに地面に転がったまま許しを請う。
「はぁはぁ……まったく、いいから立て」
 みことは俺に手を貸して立たせてくれた。時々優しくて困惑するが、基本的に厳しいので問題なし。
「手がやわこい」
 思ったことを言ったら蹴られた。ほら、厳しい。
「いちいち言うな、馬鹿者っ!」
「すいません」
 顔を赤らめてる娘さんにまた蹴られては敵わないので、自分で立つ。
「なんで焼きイモを食うだけで鼻血出したり蹴られたりしないといけないんだろう」
「貴様が余計なことばかりするからだ、馬鹿者」
 なるほどそうか。じゃあ余計なことしないで、大人しく食べよう。
 もぐもぐもぐ。ぷぅ。
「……?」
 咀嚼音の中に、異音が。俺じゃないよ。
「みこと、さっき」
「気のせいだ!」
 みことは真っ赤になりながら俺の言葉を遮った。
「言われてみればそうかも。ところでみこと、俳句を思いついたので聞け。芋美味し おならぷうぷう 5秒後」
「見事な俳句だなッ!」
 ボコボコにされた。
「ふん、ふん。私だって人間だ、おならくらいするさ」
 みことはふて腐れたようにもそもそ芋を食った。
「あいたた……まぁ、気にするな。俺も気にしない」
「……思いっきり馬鹿にした奴が、何を」
 いかん、みことがいじいじいじけ虫に! いじけ虫には、世辞だ!
「え、えっと、みこと」
 じっとみことを見つめるが、言葉に詰まってしまう。
 ……むぅ。いざ褒めるとなると、なんというか、その、照れる。
「な、なんだ? ……まっ、まさか!?」
 よく分からんが、みことまで焦りだした。
「こ、こんな道端で言うのか? 私としては、もっとロマンチックな所の方が……し、しかしどうしてもと言うなら、その、私もやぶさかではないというか、そのだな」
 何かむにむに言いながら俺方向に熱視線をぶつけているようだが、こっちはそれどころではないのだ! ええい、男は度胸! 言っちまえ!
「つるぺたっていいよね!」
「…………。……ふ、ふふ、ふふふ」
 最高の笑みでサムズアップすると、みことが笑った。やった、世辞成功! 世辞というか本音だけど!
「……いい度胸だ」
 べこんぼこんにされた。褒めたのに。
「つるぺたって褒め言葉だと思うんですが」
「うるさいッ! 猛省しろ、超鈍感男!」
 つるぺたに怒られながらも、一緒に帰宅した。

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