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2024年12月04日
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【男とツンデレの相合い傘】

2010年01月29日
 急な雨に困ったなあと思わせつつ、天気予報を見ていたので傘を持ってる俺は優等生。
 そんな優等生が鼻歌交じりに帰宅途中、困った顔をした知り合いが雨宿りしてるのを見つけたので困った。
 いや、普通に声をかければいい話なのだが、生憎とその知り合いは普通に声をかけても面倒くさいことになってしまうのだ。何、信じられない? じゃあやってみるぞ。(幻聴と会話中)
「よっ、ふみ。傘持ってこなかったのか?」
 知り合い──ふみは俺の声に気づくと、くるりとこちらを向いた。やる気なさげな半眼が俺を見つめている。
「……誰かと思ったらおにーさんですか。用がないなら帰ってください。これは秘密ですが、おにーさんが私の視界に入ってると不愉快なんです」
「その秘密は墓まで持っていけ!」
 ほら見ろ、とんでもないことになった。
「それで、私に声をかけてどうするつもりですか。略取ですか。未成年者略取ですか。高校生が中学生を略取していいんですか」
「人を犯罪者扱いするのはやめてほしいです」
「おにーさんだけです、こんなこと言うの」
 特別扱いが裏目に出た。
「はぁ……なんでもいいから、俺の傘に入ってけ。知らない顔ならまだしも、知ってる奴、しかも年下の子供を放って帰ったりしたら、枕を高くして寝れないんだよ」
「子供じゃないです。中学生です」
「そうやってムキになるところが子供」
「えい」
「危なっ! 危なあっ!」
 淡々と目を狙ってきやがった。怖すぎる。
「中学生です。大人です」
「は、はい。ふみは大人です」
「それでいいんです」
 満足げに鼻息を漏らす様子は、どう見ても子供だった。言うと失明するから言わないけど。
「それより、私をほっといても平気なよい案が浮かんだので聞きなさい」
「嫌な予感がするが、まあいいや。何だ?」
「寝なければいいんです。ぐっどあいであ」
 予感は予想通り当たった。
「ばっどあいであ。何故なら人間は寝ないと死ぬから」
「それを含めての、ぐっどあいであ」
 とりあえずほっぺをぐにーっと引っ張ってやる。
「体罰です。おにーさん最悪です」
「気にするな」
「します。しまくりです。一生気にします。裁判沙汰です。勝訴しました。一億円で手打ちです。臓器売りまくりで、おにーさん可哀想」
 ふみの中で俺の人生が大変なことに。
「傘に入れてやるから、訴訟は取り下げる方向で」
「……入れて“やる”?」
「どうか私めの貧相な傘の中に入ってください。ついでと言ってはなんですが、訴訟も取り下げていただけると何かと助かります」
「まあ、そこまで言うなら」
 ようやっとふみは重い腰を上げ、俺の傘に入ってくれた。やれやれだ。
 ふみの体は小さいのだけど、それでも傘ひとつに人間ふたりとなると、やはり濡れない面積は限られてくる。ばれないよう少しだけふみの方に傘をずらし、ふみを濡れないようにする。
「ぴっちぴっちちゃっぷちゃっぷらんらんらん。……雨は嫌いじゃないです」
「好きな人と相合傘できるから?」
 鳥類あたりなら悶死する視線を向けられたので、違うみたい。
「……世界が静かになるからです。傘の内側と外側、その隔てられた世界で、雨粒が傘に当たる音を静かに聞く。……わびさびです」
「子供のくせに枯れてんなあ」
「子供じゃないです。失明したいんですか」
「ごめんなさい」
「まったく、懲りない人です……あれ?」
「ん? どうかしたか?」
 ふみは何かに気づいたようで、無言で俺をじーっと見つめている。なんだか嫌な予感がするよパトラッシュ。
「……どうしておにーさんの肩が濡れてるんですか」
「肩だけ異常に発汗する体質なんだ」
「……どうして左肩だけ濡れてるんですか」
「訂正。左肩だけ異常に発汗する体質なんだ」
「……どうして傘を私の方に傾けてるんですか」
 ああもう。これだから無駄に賢しい奴は。
「女の子なんだから体冷やしても面白いことひとつもねーぞ」
「……どうして、おにーさんは私に優しくするんですか?」
 一呼吸置いて、ふみはゆっくりとした口調で俺に尋ねた。
「善人だから」
 一瞬にして様々な答えが浮かんだが、その中で一番無難な答えを選ぶ。
「……自分で善人と言う人に、善人はいません。おにーさんは偽善者です」
「偽善者でも、ふみの体が冷えなけりゃそれでいーや」
 ふみはちょっとふてくされたような様な顔をしながら、数度俺の顔を見た。
「……おにーさんはずるいです。そーゆーこと言われたら、返しようがないです」
「大人はずるいのさ」
「……むぅ」
 ふみは少しだけほっぺを膨らませると、俺が握っている傘の柄に自分の手を重ねた。
「お、おい」
「……し、出血大さーびす。中学生の柔肌に、おにーさんうはうは」
「時々おやじ臭いな、お前」
「嫌なら手、離しますけど」
「んなこたぁ言ってませんよ!?」
「……ならいーです。さ、早く帰りましょう」
「あ、ああ」
 それから、世間話をしながら帰ったと思うんだけど、意識の大半をふみの柔らかな手に持っていかれたのでよく覚えていない。

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【あぶく銭が入った男とそれを嗅ぎ付けたツンデレ】

2010年01月29日
 宝くじで! 当選して! お金が! 沢山! 潤沢に! 手に入った!
 その翌日、目覚めると枕元にふみの顔。
「うわらばっ!?」
「うわらば?」
「あ、いや……え? なんでふみがここにいるの?」
「ふむ。おにーさんは私の存在を否定しますか。じゃ、私は全身全霊でそれに対抗します。とー」
 極めてやる気のない声をあげながら俺の目を潰そうとする知り合いの魔の手から必死で逃げる。
「そんなつもりはありません! ありませんとも!」
「なんだ。おにーさんは紛らわしいです。反省してください」
 朝っぱらから人の命を奪おうとする行為の方が反省に値すると思います。言うと怖いので言わないけど。
「まったく……で、何用ですか」
「おにーさん、宝くじが当たったそうですね」
「いいえ」
「……どうして顔を背けるんですか」
「ふみの顔があまりに美しすぎて、直視するのが難しいんだ」
「男性なら美しい女性におごるのが当然ですよね、おにーさん」
「ロリ趣味だから美しい女性よりも可愛らしい女性のほうが好みなんだ」
「幸いなことに私はロリ系なので、可愛い系ですよ、おにーさん」
 普段は子供扱いしたら怒るくせに、こういう時だけ自分の武器を使いやがる。
「……欲求は」
「おにーさんのお金で贅沢三昧」
「ものすごく真っ直ぐに金をせびるその気概が気に入った! 分かった、今日は一日ふみとデートだ!」
「デートじゃないです。放蕩三昧です。おにーさんは財布です」
「デートなら行く」
「じゃ、来なくていいんで財布だけください」
「そんな青いサイバーロボネコのポケットなしみたいな扱いは嫌だあ!」
「ぐだぐだ言ってると昏倒させて財布だけ奪いますよ」
 脅迫されたので、着替えて出かけることに。
「さて。おにーさん、何を買いますか。あのビル買いますか。入ってるテナントもこの不況で少ないし、安いと思いますよ」
「買わない」
「おにーさん、ケチです……」
 無茶を言うふみを引き連れ、近所のモールにやってきた。
「ここを買うんですか。……10億くらいいるんじゃないですか? お金足ります?」
「なんでお前はすぐに店を買おうとする」
「昨日、いただきストリートをやったので」
 ああ、と納得しそうになる自分が嫌。
「まー、デートだしここで軽く飯でもと思いまして」
「デートじゃないです」
「クレープか。美味そうだな」
「……デートではないですが、おにーさんがどうしてもと言うのであれば食べてあげます」
 表面上は嫌がるふみと一緒にクレープ屋台の前に並ぶ。休日ということもあってか、そこそこの列ができていた。
「おにーさん、お金を投げて並んでる愚民たちを追い払ってください」
「酷い成金もいたものだ」
「早くしないとクレープが売り切れます」
「そう簡単に売り切れねーよ」
「売り切れたらおにーさんのせいです。一生恨みます。その上で財布も奪います」
 ことあるごとに人の財布を付け狙うふみだったが、幸いにしてそのような事態にはならなかった。
「さて。何にするかなー」
「私はバナナカスタード。おにーさんには梅昆布茶をひたひたに浸した生地のバナナカスタードを」
「和洋折衷の均衡が崩れた!?」
 しかし、そんなメニューはなかったのでイチゴジャムを注文する。
「はむはむ。……おいしーです」
「そいつは重畳」
 おいしそうにクレープを食べるふみの頭をなでながら、俺も自分のクレープを食べる。数年ぶりだが、昔と変わらずおいしかった。
「おにーさん、この店舗を買い取るべきです。いつでもこの味を楽しめます」
「だから、すぐに店を買おうとするな。どんな衝動買いだ」
「おにーさん、宝くじ当たったのに全然お金使ってません。お金腐りますよ?」
「腐らねーよ。それに、金ならさっき使ったじゃんか」
「こんなの、全体のちょっぴーりです。全然、ぜーんぜんです」
「しかし、もう残りも2万と……9000円ちょいだしなあ」
 はむはむしてるふみの動きがぴたりと止まった。
「……おにーさん、宝くじ、いくら当たったんですか」
「沢山」
「……具体的な数字を」
「三万円」
「全然たくさんじゃないです! そんなの、ちょっと遊んだらすぐなくなっちゃいます!」
「え、いやでも、高校生に三万円ってお前、結構な額だぞ? バイト半月分くらいには」
「うー……一生たかるつもりだったのに。計画が崩れました」
「まあまあ。少なくとも、数ヶ月は遊べる額だぞ?」
「……しょうがないです。数ヶ月たかってやります」
「うむ。数ヶ月デートしましょう」
「デートじゃないです」
「ふみ、口にカスタードついてる」
 指でついてたクリームを拭ってやる。そして、そのクリームをぺろりと舐める。甘い。
「デートじゃないのにデートっぽいことされました。恨みます」
「じゃあ、黙ってて道行く通行人たちに心の中で笑われた方がよかったか?」
「……ハンカチとかでさらりと拭うと、エレガントです」
「エレガント率は極めて低いから、ハンカチを携帯してないなあ」
「じゃ、今日はそれを買いにいきましょう。私が見立ててあげます」
「実にデートっぽくなってきましたな!」
「デートじゃないです」
 再三デートじゃないと繰り返すふみと一緒にデートをしました。アンパンマンハンカチ買わされた。
「ふみ……あの、このハンカチ」
「おにーさんの精神年齢にぴったり。お似合いです」
 色々言い返したかったが、嬉しそうに笑うふみを見てると、何の文句も出なくなってしまうから女の子はずるい。
「明日から学校にも持っていってください。おにーさんが手を洗うたび巻き起こる失笑……私も高校生ならよかったです」
 流石に文句言った。
「むー」
 可愛くむくれられたので、学校に持って行くことになってしまった。畜生。

拍手[9回]

【ツンデレにお前の為だったら何だって出来るって言ったら】

2010年01月27日
 学校帰り、ふらふらしてる奴がいたので近寄ったら顔見知りだった。
「どした、ふみ。ふらふらして」
 絶賛ふらふら中の奴は知り合いの中学生、ふみだった。よく見ると顔が青ざめている。貧血、もしくは熱中症か。……こいつ身体弱いからなあ。
「……あ、おにーさん。なんでもないです。ちょっと頭がくらくらするだけです。これにはおにーさんに声をかけられ不愉快になったせいも多分にあります」
 色々思ったが、一応年上なので近くの喫茶店にふみを招きいれて休ませる。
「……ふー。落ち着きました。表面上だけでも感謝の言葉を言っておいた方が後々よさそうなので言います。ありがとうございました、おにーさん」
「最後の言葉だけなら素直に受け取れるのになあ」
 店内の涼しさに息を吹き返したのか、ふみの顔色は若干マシになっていた。口の悪さもよくなったらいいのに。
「じゃあ、ついでだし色々食べます」
「あー、そだな。何か軽く腹に入れておいた方がいいかも。少しならおごってやるよ」
「少しと言わず全部おごってもらいます。当然です」
 鼻をつまんでやる。
「きゅふー」
 困り顔が可愛かったのでおごることにする。
「簡単ですね、おにーさん」
 それすらもふみの考えの内だったことに気づき、大変に後悔する。
「まあ、言質はとったので今更無駄です。すいません、パフェとアイスケーキとアイスコーヒーと」
「やめてお願いやめてマジでやめてください!」
 必死の懇願もむなしく、しばらくすると小さなテーブルの上に続々とスイーツが並べられていった。
「おいしそーです」
「あーそりゃよかったな」
 自分で注文したコーヒーをずぞぞぞすする。
「……あの。怒ってます?」
「そりゃな。注文したものは仕方ないけど、あんま無理すんなよ。ただでさえ食が細いんだから、無理して食ってまた体調悪くしても知らねーぞ」
 ふみは目をぱちくりさせた。何か変なことでも言っただろうか。
「……あの。勝手にたくさん注文したことを怒ってるんです……よね?」
「そりゃもちろん俺の財布に大ダメージで怒り心頭だが、それとは別で冷たいもん食いすぎたら身体によくないからな。あまりこういう無茶な食い方はしてほしくない」
「……おにーさん」
 ふみはスプーンを咥え、上目遣いで俺を見た。
「あー?」
「……やさしーです。ずるいです。卑怯です」
「大人は優しくてずるいものさ」
「……なんで、そんな私に優しいんですか?」
「……お前のためなら、何だってしてあげたいのさ」
「え……ええっ!? あ、あの、あのあの、そ、その、……こ、困ります。あ、あの、悪い意味じゃないです、悪い意味ではないです。悪い意味ではないですが……あの、困ります」
 ふみの顔が真っ赤になった。湯気が出そうな勢いだな、しかし。
「──と言ったら、ふみは嬉しいか?」
「えい」
「危なっ、危あっ!?」
 普通にフォークで刺してきた。どうにか避けたが、怖すぎる。
「おまっ、おまえなあ! 無茶すんなっ! 怖えよっ!」
「乙女心をもて遊んだ罰です。おにーさんのばか」
 そう言うと、ふみはパフェを片手にがつがつ食いだした。
「あーあー、そんながつがつ食うな。まったく、どこが乙女だ」
「知りません。おにーさんのばか。……あぅっ」
 一気に食いすぎて頭がキーンとなったのだろう、ふみの手が止まった。
「ほら、無理すっから」
「うるさいです。無理なんてしてません。……うー」
「ったく、強情っぱりが。もらうぞ」
「あっ」
 残ってるパフェを奪い、がじがじ食う。うむ、おいしい。
「お、おにーさん。……そ、それ、私のスプーンです」
「あ、悪い。つい」
「嫌です。許しません。絶対にわざと使ったに違いありません。中学生のつばを体内に摂取したかったに違いありません」
「妖怪か、俺」
「妖怪、つば飲み。可愛い女子中学生のつばを飲まずにはいられない妖怪。別に飲まなくても生存には何ら問題ないことから、妖怪ではなくただの変質者である可能性が非常に高い」
「俺の嘘解説が取られた!」
「おにーさんはそんな妖怪なのですから、可愛い私のつばをぺろぺろしたくて私のスプーンを使ったんです。絶対です」
「人聞きの悪いことを……。あと、自分で可愛いとか言うな」
「……誰も言ってくれないなら、自分で言うしかないじゃないですか」
「ええっ!?」
「ええっ……って?」
「いや、お前のクラスの男子の目が節穴なのか、それとも恥ずかしくて言えないのか……いやはや、お兄さんびっくりだ」
「何がですか? ……おにーさんはよく分からないことばかり言います。嫌です」
「えーと……なるほど、確かに直接言うのは恥ずかしいな。だがしかし俺も男なので言うます!」
「語尾がおかしいです。おにーさんに普通の箇所はあるんですか?」
「ふみはとても可愛い。まる」
「えっ……えええっ!?」
「大丈夫。お前は体つきこそアレだが、ものすげー可愛いぞ」
「だ、騙してます。おにーさんは私を騙してるに決まってます。男子は私をからかってばかりで、そんなこと言われたこと一度もないです」
 あー……ちょっかいかけて気を引くってアレな。中学生ってまだガキなのなー。
「……でも、嘘だとしても、ちょこっと嬉しいです」
「だから、嘘じゃなくて……」
「ありがとうございます、おにーさん」
 そう言って、ふみはにっこり笑った。
「あー……うん。どういたまして」
 まあ、もう少しこいつが大人になるまでは、俺だけがこの笑顔を占有していよう。
「……で、体つきがアレってどういうことですか」
 ふみの目がすーっと細まる。忘れてたらよかったのに。
「なななんのことだか俺にはまるで見当が」
「……そりゃ、私の胸は平均的な胸囲にすら達してませんが、貧しくはありません。いわゆる微乳──いえ、“美”乳です!」
「なんでもいいからいかがわしいことを店内で叫ぶな!」
「ところでおにーさんは大きいのと小さいの、どっちが好きですか?」
「小さいの! 大好き!」
 一瞬にして本能の野郎が理性を駆逐した。
「なるほど、いいこと聞きました。今日から乳製品摂りまくりです」
「いやあああああ! 俺のふみがああ!」
「だ、誰が俺のふみですか。いかがわしいことを店内で叫ばないでください。えいえい」
 俺もふみもいかがわしいことを叫んだのに、俺だけが頬を引っ張られた。

拍手[11回]

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