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2024年11月24日
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【ちなみんのほか弁】
2010年02月21日
人間、迂闊なことを言うもんじゃないよね。回り回って自分に降りかかるからね。
「『やー、おにゃのこがお弁当作ってくれたら嬉しいよね。交際を申し込みたくなるよね。結婚を前提に付き合いたくなるよね。嫁が欲しいなあ!』。……と泣いて友人を引かせていたタカシのために」
とか言いながら俺に弁当を押し付けるちなみを見ながら、そう思う。
「超嫌な予感がするので断る」
「……折角私が作ってやったお弁当を、タカシは食べないと言う。……貧乳の作る飯は残飯に劣ると言う」
NOという感じの手をして断ったら、恨み言を言われた。そこまでは言ってねえ。
「聞いた? 別府くん、残飯が大好物なんだって」
「うわ、別府くん青空生活者……」
クラスメイトが微妙に聞こえる程度の声で囁きあっている。別に青空を屋根に生活はしてないし、残飯も好物ではない。
「いや、好意は嬉しいが、ほら、パン買ってきてるし」
「…………」(じわーっ)
「ちなみが弁当作ってくれるだなんて感激だなあ! 育ち盛りだからパン+弁当でもヘッチャラさ!」
「……容易し」(ぼそり)
やはり嘘泣きか。分かっててかかる俺もどうかと思う。
「……じゃ、冷めないうちにどうぞ」
「弁当というのは冷めているものだと思うが」
「……特製、ちなみのほか弁。……ほかほか。……触ってみて?」
「そこまで言うなら」
ちなみのほっぺをむにむにする。うむ、お餅みたいにやーらかい。
「……違う。私じゃない。……お弁当」
「分かった上でやったんだ。本当は胸を触りたかったけど、冗談で済まない気がしたんでこっちにしたんだ。そんな俺を褒めろ」
ちなみが不満そうに俺を睨み始めたので、弁当を触ってみる。
「お、まだ温かいじゃん。どういう仕組み?」
「……家庭科室に忍び込んで、チンした。……偉い?」
「偉いのはチンと鳴った機械であり、忍び込んだ人物は偉くない」
「……頑張ったのに、タカシは褒めない。……これだから狭量の男は」(ほっぺぷくー)
「狭量とか言うない。んじゃ、いただきますか」
両手を合わせてから、弁当のフタを取る。玉子焼きにハンバーグ、千切りキャベツにプチトマトと目にも鮮やかな料理が並んでいた。
「へぇ……頑張ったんだな」
「……べ、別に頑張ってない。……こんなの、私にかかればちょちょいのちょい。……タカシ相手に頑張るとか、意味分かんない」
ちなみはちょっと照れ臭そうにして、そっぽを向いた。褒める事を強要するわりに、褒められ慣れしてない奴め。
「や、偉い偉い」
ねぎらいの意を込めてちなみの頭をなでる。
「……タカシはすぐ私を子供扱いする」
不服そうになでられるちなみだったが、その頬は高揚していた。指摘すると怒られるから言わないけど。
「ここまで頑張られては食うしかないな。んじゃ、いただきます」
「…………」(じーっ)
「ごちそうさま」
視線に耐えかね、箸を置く。
「……全然食べてませんが」
「擬音が実際に聞こえそうなほど見つめられては、食べるのにも抵抗がありまして」
「……こうしてるから、気にせず食べる」
そう言って、ちなみは両目を覆った。
「それなら問題ない。いただきます」
「…………」(指の隙間からじーっ)
「ごちそうさま」
「……見てないのに、タカシはお弁当を食べない」
「嘘つけ。明らかに見てたじゃねえか」
「……見てないにゅ?」
ちなみは頭の悪い語尾をつけながら小首を傾げた。
「そんな可愛い感じの語尾をつけても誤魔化されないぞ」
「……ど、どうしてタカシは私をぎゅーっとするのか」
「む」
誤魔化されはしなかったが、俺の体はちなみを抱きしめていました。
「ええい、頭では媚びていると理解しているのに! 畜生、可愛いぞこの娘!」
「……け、計算通りですよ? ここまで過剰な反応するなんて予想だにしていなかったなんて、思ってないですよ?」
目を白黒させながら言われても説得力ありません。
「そっ、それよりお弁当食べなさい、お弁当。……時間、もうないから」
「えー? それよりこのまま保健室に連れ込み、色々なことを」
「…………」
「すいませんご飯食べます」
無言の圧力に負け、抱っこを解いて再び弁当の前に。箸を取り、まずは玉子焼きを。
「もぐもぐもぐ」
「……どう?」
「おいしい」
「……当然。私の作るものに失敗があるはずもない」
どこかほっとした様子で、ちなみは一息に言った。
「タマゴの殻が入ってなければ言うことなし」
ジャリジャリ鳴る玉子焼きを噛み砕きながら言うと、ちなみの頬が膨れた。
「……男なら細かいこと言わない」
「いや、細かくはないと思うが」
「……お弁当を作ってもらっておきながら、タカシは文句を言う。……なんと狭量な生物だろうか」
「狭量はともかく、なまもの言うな。あと、頼んでない」
「……文句言う暇があったら、早く食べる」
「はいはい。がつがつがつ」
多少は問題があるものの、全体的に美味しくいただけました。
「ごちそうさまげふー。うまかったぞ」
弁当にフタをしてちなみに渡すが、そのまま動く様子がない。
「どした?」
「……お弁当作ってもらえて、嬉しかった?」
「? まぁ、悪い気はしないな」
「……そ、そう。……やれやれ、私を嫁にしたいとタカシは言う」
「超言ってねーっ!」
突拍子もない台詞に、全力でつっこむ。
「……言った」(ほっぺぷくー)
「いつ言った何時言った何時何分何秒地球が何回まわったとき言った!?」
「……タカシ、子供みたい」
「子供に言われたくねー!」
「……子供じゃない。大人。超大人」(ほっぺぷくー)
「ちなみが大人なら、俺はもはや中年と言っても過言ではないぞ?」
「……やーい中年」
「まるで嬉しくない! 畜生、畜生! はめられた!」
「……いま分かった。タカシは馬鹿だ。基本的に何も考えずに喋ってる」
「失礼な。時々は考えてるぞ?」
呆れたようにちなみは首を振った。失礼な奴め。
「……まあいい。……それじゃ、また次も作ってくるので、ありがたく食べるように」
「え」
「……私の作るお弁当をタカシは嫌だと言う。……吐き気を催さんばかりだと言う」(じわーっ)
「だから、言ってねーっつの! すぐ女の武器を使うな! 分かったお願いしますどうか俺に弁当作ってきてください!」
「……やれやれ、そこまで言われては断れない。……まったく、タカシはワガママだ」
どっちがワガママだ、と思いながらも次の弁当を楽しみにしている自分がいた。
「……べ、別に私が作ってあげたいんじゃない。……タカシが楽しみにしてるから、作ってやるだけ。……ああ面倒だ」
俺の視線に気づいたのか、慌てたように言い訳を並べるちなみだった。
「『やー、おにゃのこがお弁当作ってくれたら嬉しいよね。交際を申し込みたくなるよね。結婚を前提に付き合いたくなるよね。嫁が欲しいなあ!』。……と泣いて友人を引かせていたタカシのために」
とか言いながら俺に弁当を押し付けるちなみを見ながら、そう思う。
「超嫌な予感がするので断る」
「……折角私が作ってやったお弁当を、タカシは食べないと言う。……貧乳の作る飯は残飯に劣ると言う」
NOという感じの手をして断ったら、恨み言を言われた。そこまでは言ってねえ。
「聞いた? 別府くん、残飯が大好物なんだって」
「うわ、別府くん青空生活者……」
クラスメイトが微妙に聞こえる程度の声で囁きあっている。別に青空を屋根に生活はしてないし、残飯も好物ではない。
「いや、好意は嬉しいが、ほら、パン買ってきてるし」
「…………」(じわーっ)
「ちなみが弁当作ってくれるだなんて感激だなあ! 育ち盛りだからパン+弁当でもヘッチャラさ!」
「……容易し」(ぼそり)
やはり嘘泣きか。分かっててかかる俺もどうかと思う。
「……じゃ、冷めないうちにどうぞ」
「弁当というのは冷めているものだと思うが」
「……特製、ちなみのほか弁。……ほかほか。……触ってみて?」
「そこまで言うなら」
ちなみのほっぺをむにむにする。うむ、お餅みたいにやーらかい。
「……違う。私じゃない。……お弁当」
「分かった上でやったんだ。本当は胸を触りたかったけど、冗談で済まない気がしたんでこっちにしたんだ。そんな俺を褒めろ」
ちなみが不満そうに俺を睨み始めたので、弁当を触ってみる。
「お、まだ温かいじゃん。どういう仕組み?」
「……家庭科室に忍び込んで、チンした。……偉い?」
「偉いのはチンと鳴った機械であり、忍び込んだ人物は偉くない」
「……頑張ったのに、タカシは褒めない。……これだから狭量の男は」(ほっぺぷくー)
「狭量とか言うない。んじゃ、いただきますか」
両手を合わせてから、弁当のフタを取る。玉子焼きにハンバーグ、千切りキャベツにプチトマトと目にも鮮やかな料理が並んでいた。
「へぇ……頑張ったんだな」
「……べ、別に頑張ってない。……こんなの、私にかかればちょちょいのちょい。……タカシ相手に頑張るとか、意味分かんない」
ちなみはちょっと照れ臭そうにして、そっぽを向いた。褒める事を強要するわりに、褒められ慣れしてない奴め。
「や、偉い偉い」
ねぎらいの意を込めてちなみの頭をなでる。
「……タカシはすぐ私を子供扱いする」
不服そうになでられるちなみだったが、その頬は高揚していた。指摘すると怒られるから言わないけど。
「ここまで頑張られては食うしかないな。んじゃ、いただきます」
「…………」(じーっ)
「ごちそうさま」
視線に耐えかね、箸を置く。
「……全然食べてませんが」
「擬音が実際に聞こえそうなほど見つめられては、食べるのにも抵抗がありまして」
「……こうしてるから、気にせず食べる」
そう言って、ちなみは両目を覆った。
「それなら問題ない。いただきます」
「…………」(指の隙間からじーっ)
「ごちそうさま」
「……見てないのに、タカシはお弁当を食べない」
「嘘つけ。明らかに見てたじゃねえか」
「……見てないにゅ?」
ちなみは頭の悪い語尾をつけながら小首を傾げた。
「そんな可愛い感じの語尾をつけても誤魔化されないぞ」
「……ど、どうしてタカシは私をぎゅーっとするのか」
「む」
誤魔化されはしなかったが、俺の体はちなみを抱きしめていました。
「ええい、頭では媚びていると理解しているのに! 畜生、可愛いぞこの娘!」
「……け、計算通りですよ? ここまで過剰な反応するなんて予想だにしていなかったなんて、思ってないですよ?」
目を白黒させながら言われても説得力ありません。
「そっ、それよりお弁当食べなさい、お弁当。……時間、もうないから」
「えー? それよりこのまま保健室に連れ込み、色々なことを」
「…………」
「すいませんご飯食べます」
無言の圧力に負け、抱っこを解いて再び弁当の前に。箸を取り、まずは玉子焼きを。
「もぐもぐもぐ」
「……どう?」
「おいしい」
「……当然。私の作るものに失敗があるはずもない」
どこかほっとした様子で、ちなみは一息に言った。
「タマゴの殻が入ってなければ言うことなし」
ジャリジャリ鳴る玉子焼きを噛み砕きながら言うと、ちなみの頬が膨れた。
「……男なら細かいこと言わない」
「いや、細かくはないと思うが」
「……お弁当を作ってもらっておきながら、タカシは文句を言う。……なんと狭量な生物だろうか」
「狭量はともかく、なまもの言うな。あと、頼んでない」
「……文句言う暇があったら、早く食べる」
「はいはい。がつがつがつ」
多少は問題があるものの、全体的に美味しくいただけました。
「ごちそうさまげふー。うまかったぞ」
弁当にフタをしてちなみに渡すが、そのまま動く様子がない。
「どした?」
「……お弁当作ってもらえて、嬉しかった?」
「? まぁ、悪い気はしないな」
「……そ、そう。……やれやれ、私を嫁にしたいとタカシは言う」
「超言ってねーっ!」
突拍子もない台詞に、全力でつっこむ。
「……言った」(ほっぺぷくー)
「いつ言った何時言った何時何分何秒地球が何回まわったとき言った!?」
「……タカシ、子供みたい」
「子供に言われたくねー!」
「……子供じゃない。大人。超大人」(ほっぺぷくー)
「ちなみが大人なら、俺はもはや中年と言っても過言ではないぞ?」
「……やーい中年」
「まるで嬉しくない! 畜生、畜生! はめられた!」
「……いま分かった。タカシは馬鹿だ。基本的に何も考えずに喋ってる」
「失礼な。時々は考えてるぞ?」
呆れたようにちなみは首を振った。失礼な奴め。
「……まあいい。……それじゃ、また次も作ってくるので、ありがたく食べるように」
「え」
「……私の作るお弁当をタカシは嫌だと言う。……吐き気を催さんばかりだと言う」(じわーっ)
「だから、言ってねーっつの! すぐ女の武器を使うな! 分かったお願いしますどうか俺に弁当作ってきてください!」
「……やれやれ、そこまで言われては断れない。……まったく、タカシはワガママだ」
どっちがワガママだ、と思いながらも次の弁当を楽しみにしている自分がいた。
「……べ、別に私が作ってあげたいんじゃない。……タカシが楽しみにしてるから、作ってやるだけ。……ああ面倒だ」
俺の視線に気づいたのか、慌てたように言い訳を並べるちなみだった。
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