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2024年11月22日
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【かめちなみん】
2010年04月04日
学校に行くと、なんか変なのが俺の机の上に載ってた。
「……新手のいじめか? なんだこれ、甲羅?」
机の上にある甲羅は、人ひとり入れるほどの大きさだった。……人ひとり?
「しまった、最近なかったから油断してた!」
机から飛びのくより早く、甲羅の穴ぼこから手が伸びて俺の腕をがっしと掴んだ。
「……かめです。かめかめ」
かめかめ言いながらちなみが顔を出した。
「亀はかめかめ言いません」
「……しゅん」
しゅん、と言いながらも俺の手を放そうとしない亀。
「てーかここ学校だぞ? 学び舎に亀が入ってきていいと思ってるのか?」
「……亀にそんなこと言われても、分かりません」
む、亀であることを逆手に取るとはやるな。
「じゃあ池にでも放しに行こう」
「がぶ」
甲羅を持とうとしたら手を噛まれた。
「亀は噛まないよ?」
「……噛み付きカメです。噛みます、よ?」
よ、と言いながら小首を傾げられても困る。
「知らないかもしれないが、噛まれると痛いんだぞ」
違う、誰も噛んだ箇所を舐めろなんて言ってない。いや、気持ちいいけど!
「ぺろぺろ、ぺろぺろ……治りました?」
「まだ! もっと!」
「……タカシは治療とは別の目的で舐めさせようとしてる。……鬼畜」
ばれた。ばれたけど、鬼畜とか言うな。そこまで酷い事してない。
「見た? 別府くん、ちなみに舌での奉仕という鬼畜な行為させてるよ」
「うわ、別府サイテー」
級友たちの微妙に聞こえる程度の囁く声が聞こえる。このクラスでは、治療行為は鬼畜な行為になるようです。あと奉仕とか言うな。
「つーかちなみ、学校に着ぐるみ着てくるな」
「……可愛いのに」
「可愛くても、カメの着ぐるみで学校に登校してはいけません」
「……校長先生が、いいって言いました」
うちの校長、頭おかしい。
「……さっき偶然廊下で会って、『かか可愛いっ! 制服代わりに最適っぽい! ……よし、それで学校生活送るの許可許可!』とか言ってました」
うちの校長、本格的に頭おかしい。
「……なんか、校長先生ってタカシに似てます」
「しし失礼な! 俺は頭おかしくないぞ!」
「……考えなしに勢いで喋るところ、とか」
悲しいことにまるで反論できない。
「そんなことは極めてどうでもいい。いーから着替えて来い、もうすぐ授業始まるぞ」
「むっ。……まだ、褒めてもらってないです。……褒めてもらったら、着替えます」
「えーと、この甲羅硬そうだな」
「……そんなところ褒めてもらっても、嬉しくありません」
カメの褒める場所なんて、甲羅くらいしか思いつかない。
「えーとえーとえーと、防御力高そう」
「……また甲羅。……ダメです、不きょきゃです」
ちなみは不許可と言えなかった。
「不……なに?」
「ふ、ふきょきゃ。……ふきょきゃ、……ふきょ、きゃ」
何度言っても言えないようです。
「きょ、きょきゃ! ……きゅ」
「きょきゃ? 許可じゃなくて、きょきゃ?」
「……うう、タカシがいじめる。……はっ、まさかタカシは浦島さん?」
「ばーか」
ちなみの鼻を軽くデコピンする。
「あぅっ。……カメをいじめるとは、ひどいです。許しがたいです。……カメの恨みを思い知るべきです」
そう言って、ちなみはいきなり俺に覆いかぶさった。甲羅がやけに重い。
「ぐあ、重い……」
「……レディーに対してあんまりな暴言。許すまじ、です」
「の、のいてください、カメさん。重いっす」
「……言うこと聞いてくれるなら、どきます」
「な、なんだ?」
「……抱っこ」
「…………。はい?」
「だ、だから……抱っこ、……してください。……そしたら、のきます」
「え、いや、けど」
「……ダメ、ですか?」
ダメです。ダメですが、とても重くて苦しくて情けない様子をクラスメイトに見られてる現状でダメと言えません。
「ばっちこい!」
「……わ、分かりました」
そう言うと、ちなみは俺から離れてそそくさと教室を出て行った。そしてすぐに制服姿で戻ってくると、ぽふりと俺の膝に収まった。
「ば、ばっちきました」
クラスメイト達の生暖かい視線にさらされ、尋常でないほど恥ずかしい。
「やっぱダメ。のけ」
「…………」(うるうる)
「──と言うほど狭量でもない別府タカシさんを尊敬してもいいよ?」
泣かれるのだけは勘弁。すごく苦手です。
「……ふふ、たやすい」
「あれぇ、嘘泣き!?」
「うるさいぞ、別府」
いつの間にか来ていた教師に叱られた。
「あ、すいません……いやいやいや! 違うっしょ、怒るのは俺の胸に張り付いてる物体にこそ怒るべきでは!」
物体の頬が膨れた。
「いや、別にいいじゃん。先生も学生の頃はそういう風に授業受けたいって欲望あったし、よく分かるぞ」
「いや、分かるな! おかしいだろ、絶対!」
「大丈夫、他の先生たちにも言っておくから今日はそのまま授業受けろ。よかったなー、別府」
よくない。全然よくない。嬉しそうに俺の胸にすりすりする物体を見ながら、そう思った。
「……新手のいじめか? なんだこれ、甲羅?」
机の上にある甲羅は、人ひとり入れるほどの大きさだった。……人ひとり?
「しまった、最近なかったから油断してた!」
机から飛びのくより早く、甲羅の穴ぼこから手が伸びて俺の腕をがっしと掴んだ。
「……かめです。かめかめ」
かめかめ言いながらちなみが顔を出した。
「亀はかめかめ言いません」
「……しゅん」
しゅん、と言いながらも俺の手を放そうとしない亀。
「てーかここ学校だぞ? 学び舎に亀が入ってきていいと思ってるのか?」
「……亀にそんなこと言われても、分かりません」
む、亀であることを逆手に取るとはやるな。
「じゃあ池にでも放しに行こう」
「がぶ」
甲羅を持とうとしたら手を噛まれた。
「亀は噛まないよ?」
「……噛み付きカメです。噛みます、よ?」
よ、と言いながら小首を傾げられても困る。
「知らないかもしれないが、噛まれると痛いんだぞ」
違う、誰も噛んだ箇所を舐めろなんて言ってない。いや、気持ちいいけど!
「ぺろぺろ、ぺろぺろ……治りました?」
「まだ! もっと!」
「……タカシは治療とは別の目的で舐めさせようとしてる。……鬼畜」
ばれた。ばれたけど、鬼畜とか言うな。そこまで酷い事してない。
「見た? 別府くん、ちなみに舌での奉仕という鬼畜な行為させてるよ」
「うわ、別府サイテー」
級友たちの微妙に聞こえる程度の囁く声が聞こえる。このクラスでは、治療行為は鬼畜な行為になるようです。あと奉仕とか言うな。
「つーかちなみ、学校に着ぐるみ着てくるな」
「……可愛いのに」
「可愛くても、カメの着ぐるみで学校に登校してはいけません」
「……校長先生が、いいって言いました」
うちの校長、頭おかしい。
「……さっき偶然廊下で会って、『かか可愛いっ! 制服代わりに最適っぽい! ……よし、それで学校生活送るの許可許可!』とか言ってました」
うちの校長、本格的に頭おかしい。
「……なんか、校長先生ってタカシに似てます」
「しし失礼な! 俺は頭おかしくないぞ!」
「……考えなしに勢いで喋るところ、とか」
悲しいことにまるで反論できない。
「そんなことは極めてどうでもいい。いーから着替えて来い、もうすぐ授業始まるぞ」
「むっ。……まだ、褒めてもらってないです。……褒めてもらったら、着替えます」
「えーと、この甲羅硬そうだな」
「……そんなところ褒めてもらっても、嬉しくありません」
カメの褒める場所なんて、甲羅くらいしか思いつかない。
「えーとえーとえーと、防御力高そう」
「……また甲羅。……ダメです、不きょきゃです」
ちなみは不許可と言えなかった。
「不……なに?」
「ふ、ふきょきゃ。……ふきょきゃ、……ふきょ、きゃ」
何度言っても言えないようです。
「きょ、きょきゃ! ……きゅ」
「きょきゃ? 許可じゃなくて、きょきゃ?」
「……うう、タカシがいじめる。……はっ、まさかタカシは浦島さん?」
「ばーか」
ちなみの鼻を軽くデコピンする。
「あぅっ。……カメをいじめるとは、ひどいです。許しがたいです。……カメの恨みを思い知るべきです」
そう言って、ちなみはいきなり俺に覆いかぶさった。甲羅がやけに重い。
「ぐあ、重い……」
「……レディーに対してあんまりな暴言。許すまじ、です」
「の、のいてください、カメさん。重いっす」
「……言うこと聞いてくれるなら、どきます」
「な、なんだ?」
「……抱っこ」
「…………。はい?」
「だ、だから……抱っこ、……してください。……そしたら、のきます」
「え、いや、けど」
「……ダメ、ですか?」
ダメです。ダメですが、とても重くて苦しくて情けない様子をクラスメイトに見られてる現状でダメと言えません。
「ばっちこい!」
「……わ、分かりました」
そう言うと、ちなみは俺から離れてそそくさと教室を出て行った。そしてすぐに制服姿で戻ってくると、ぽふりと俺の膝に収まった。
「ば、ばっちきました」
クラスメイト達の生暖かい視線にさらされ、尋常でないほど恥ずかしい。
「やっぱダメ。のけ」
「…………」(うるうる)
「──と言うほど狭量でもない別府タカシさんを尊敬してもいいよ?」
泣かれるのだけは勘弁。すごく苦手です。
「……ふふ、たやすい」
「あれぇ、嘘泣き!?」
「うるさいぞ、別府」
いつの間にか来ていた教師に叱られた。
「あ、すいません……いやいやいや! 違うっしょ、怒るのは俺の胸に張り付いてる物体にこそ怒るべきでは!」
物体の頬が膨れた。
「いや、別にいいじゃん。先生も学生の頃はそういう風に授業受けたいって欲望あったし、よく分かるぞ」
「いや、分かるな! おかしいだろ、絶対!」
「大丈夫、他の先生たちにも言っておくから今日はそのまま授業受けろ。よかったなー、別府」
よくない。全然よくない。嬉しそうに俺の胸にすりすりする物体を見ながら、そう思った。
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