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2024年11月23日
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魔幼女

2010年04月02日
 唯一の特技である逃げ足を用い、誰一人戦うことなくやってきた魔王城。真っ向から戦うと100%負けるので、暗殺だ!
 というわけで魔物に見つからないよう、震えながら夜を待つ。草木も眠る丑三つ時、こっそり魔王がいるという部屋に忍び込む。
 ……魔王がいる部屋ってくらいだから骸骨とか血まみれの死体とかゴロゴロしてると思ったが、なんか、すげーファンシー。女の子の部屋みたい。
 おっと、それより魔王だ魔王。こいつを倒して救国の英雄に!
 金やら女やら名声やらという文字が頭を駆け巡る中、天蓋のついたベッドに近寄る。
魔幼「……くーくー」
 そこにいたのは魔王ではなく、クマのぬいぐるみを抱いたちっちゃな女の子だった。……もしかして魔王、逃げた?
勇者「ふ……ふははははは! 俺に恐れをなして逃げたか! 恐るるに足らず、魔王!」
魔幼「ん……むぅ、うるさい……」
 幼女が起きた。半開きの目を手でごしごしとこすり、俺を見た。
魔幼「……だれ?」
勇者「みんなの憧れ、勇者だよ」
 親しみやすさを演出するためにっこり笑いかけると、幼女の目が見開かれた。
魔幼「もっ、もう来たの!? ど、どうしよ、今日は来ないと思ってなんの準備もしてないのに……あぅぅ」
 女の子はベッドから飛び降りると、わたわたとタンスが置いてある方に走った。
魔幼「あうっ!」
 こけた。
勇者「あーはいはい、なに焦ってんだか知らないけど、俺は魔王とかと違って無差別に虐殺とかしないから安心しな」
 女の子を抱き起こすと、睨まれた。
魔幼「わたしだって無差別じゃない! 逆らう人とかだけしか殺してないぞ!」
勇者「子供が変なこと言い出した」
魔幼「子供じゃなくて、魔王だぞ!」
勇者「ぶわははは!」
魔幼「笑った!?」
勇者「や、面白い娘っ子だ。よし、お兄ちゃんの妹にしてやるから、人に言えないようなことしよう」
魔幼「いーやー! はなせ、ばかー!」
勇者「よーし、とりあえずお医者さんごっこしような。どこが悪いんですかー?」
魔幼「わっ、こら、服を脱がせんな!」
 楽しい楽しいことをしてたら、廊下から複数の足音が聞こえてきたが、今はお医者さんごっこの方が大事!
側近「魔王様! 勇者が潜入したと報告が……」
魔幼「うわーん、はなせ、はなせよー!」
勇者「うーん、いけない世界に足を踏み入れたようだ。だがしかし、ロリはいいなぁ」
 女の子の平坦な胸元に顔を埋めていて気づかなかったが、なんか化け物に囲まれてる。
 集団リンチの末、死んだ。
王様「おお勇者よ、死んでしまうとは情けな……」
勇者「よし、もっかい!」
王様「ひいっ!?」
 棺桶から勢いよく飛び出したら、王様が変な声あげてた。
勇者「こんにちは、勇者です」
王様「しし、知っとるわい! いきなり棺桶から飛び出すな! びっくりして死ぬかと思ったわい……」
勇者「あー確かにおっさんぐらいの歳だと、衝撃で棺桶に入る可能性は高いわな。はっはっは」
王様「…………」
 不穏な空気を感じたので、逃げるように呪文で魔王城の王座まで飛ぶ。
魔幼「うわっ、また来た!」
 王座には魔王ではなく、先ほどの幼女がいた。
勇者「こんにちは、愛でに来ました」
魔幼「ちがうだろ、おまえ魔王たおしに来たんだろ!?」
勇者「あ、あー……いや、覚えてたよ?」
魔幼「うそつけっ!」
勇者「けど、魔王いないみたいだし楽しく遊びましょう」
魔幼「だ、だからわたしが魔王なの! が、がおー、がおー!」
勇者「ふむ、魔王ごっこか? なら俺も魔王に。……貴様のはらわたを喰らい尽くしてくれるわッ!」
 得意の化け物ボイスで、幼女に凄む。
魔幼「う……うわぁぁん! こわいよーーーーーーっ!!!」
 幼女が全力で泣き出した。その鳴き声を聞きつけた化け物たちに、また囲まれた。
王様「おお勇者よ、また死んだか……」
 なかなか魔王に会えない。

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