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2024年12月04日
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悠久幻想曲のマリアの話
2011年03月26日
というわけで、こんにちは。完全に無欠なほど知らない者を置いてけぼりにしている俺だ。
一年ほど前、あらぬ冤罪をかけられ超大変だったが、友人達の助けもあり、どうにか疑いを晴らすことが出来た。助けてくれた友人達には、感謝しても仕切れない。
そんなわけで平穏無事な毎日が戻ってきたということなので、俺は平和を謳歌しつつ、相変わらずジョートショップでだらだらと働いている。
今日は休日。俺は陽のあたる丘公園のベンチに腰を下ろし、ぼやーっとしている。足元では毛まみれの生物がうろちょろしている。たわむれに踏んでやれ。
「むぎゅっ! いきなり何するッスか、彰人さん!」
小生意気にも、この毛玉生物は人語を操るようだ。俺の名を呼びながら怒ったような顔をしている。
「未確認生物を直接手で触る勇気はないんだ」
「もう一年以上一緒に住んでるっス! どこが未確認生物っスか!」
「そもそもお前なんなの? 犬?」
「テディはテディっス! それ以外の何者でもないっス!」
「これはこれはご丁寧に、符長彰人と申します」
「どうして自己紹介してるっスか?」
テディが不思議そうな顔をしてたので、引っ張り上げて踏んだ際に着いた汚れを落としてやる。
「あっ、彰人っ! おーい!」
しばらくトリミングしてると、何やら奇声が聞こえた。が、幻聴はよくあることなので無視。
「彰人さん彰人さん、呼んでるっスよ?」
「お前も幻聴が聞こえるようになったの? 俺のステージへようこそ」
「違うっス、幻聴じゃないっス! マリアさんっス! そこでぶんぶん手を振ってるっスよ?」
「本当かあ? 嘘だったら承知しないぞ? 晩飯のおかずを一品貰うぞ? あと風呂場でタオル代わりにするぞ?」
「おかずもあげないし、タオル代わりも勘弁してほしいっス!」
「なんてわがままな奴だ。そんなんじゃ立派なタオルになれないぞ?」
「そんなの、最初っからなるつもりないっス!」
「あ、タオルで思い出した。石鹸が切れてたんだ。買いに行こうぜ」
「もう、しょうがないっスねぇ……じゃ、夜鳴鳥雑貨店に行くっス」
「そうしよぅあっちぃ! 俺の尻が突如発火を!? くそぅ、こんなところで俺の秘儀、尻ホタルのスキルが発動しようとは!」
「違うわよっ! マリアが魔法で火の玉を飛ばしたの! ず~っとマリアを無視なんかしてるからそんな目に遭うのよ、ばーか!」
地面を転がりまわって尻の火を消してると、マリアがつかつかとやってきて罵声を浴びせる。
「こんにちはっス、マリアさん!」
「こんにちは、テディ。今日ももふもふね」
マリアはテディを抱きあげると、嬉しそうに頭をなでた。
「いやぁ、それほどでもないっス!」
「なんだとコンチクショウ、俺だってもふもふだぞ!」
「なんの対抗心よっ!」
いらぬ負けん気が発動したため、マリアに怒られた。
「ていうかいうかていうかですね、マリアさんよ。こんな街中で攻撃魔法なんか使うな。俺だったからよかったものの、これがテディなら今頃こんがり焼けて香ばしい匂いがあたりに漂い俺の腹が鳴ってるぞ?」
「た、食べないで欲しいっス! ボクはおいしくないっス!」
想像したのか、テディが震えていた。
「安心しろ、お前はきっとおいしい」
「ふわ~ん、マリアさ~ん! 彰人さんがいじめるっス~!」
小癪にも、テディの奴はマリアに抱きついて俺を悪人に仕立て上げた。なんて羨ましい! 俺もあの薄い乳に包まれてえ!(大変失礼)
「ああ、よしよし。もー、彰人っ! テディをいじめたらダメじゃないの!」
「うーん……ごめんな、テディ。よく見たらお前は吐き気を催すほどまずそうだよ」
「ふわーんっ!!!」
テディの泣きが強まった。
「彰人ッ!」
「どうしろと言うのだ」
「ぐすぐす……酷いっス、彰人さん。あんまりっス」
「ああごめんな、テディ。あまりに怖がるから面白がっただけだ。お前は大事な友達だから食べたりしないよ」
マリアからテディを受け取り、優しくなでる。
「うー……あんまり意地悪しちゃダメっスよ?」
「はっはっは」
「うう……笑うばっかりで約束してくれないっス」
「ははは……うん?」
「…………」
ふとマリアを見ると、俺達のやりとりをどこか羨ましそうに見ていることに気づいた。
「どした。お前もテディをなでたいのか?」
「え? いや、そうじゃなくて……」
「?」
「な、なんでもないわよ、なんでも。そ、それよりっ! なんで最初にマリアが声かけたときに無視するのっ!」
「いつもの幻聴だと思ったんだ」
「うわっ、彰人って幻聴とか聞こえちゃうの? 気持ち悪いわねー」
「ああ、よく爆発音と『ごめんなさーいっ!』って響きが聞こえる」
「ぐっ……」
「そして、その後にどういうわけか俺がお前の尻拭いをさせられることが多い」
「い、いいのっ! 彰人なんてそれくらいしか役に立たないんだからっ!」
「いや、ジョートショップで働いてるんだし、もうちょっと人の役に立ってると思うが……」
「ぶ~! ぐちぐち言わないっ!」
「叱るか屁を放つかどっちかにしろ」
「口で言ってるの! 屁なんてしてないわよっ!」
「なんだ、紛らわしい」
「……ね、テディ。よくこんなのと一緒で疲れないわね」
「……一年以上も一緒にいたら慣れそうなもんっスけど、彰人さんはそれを上回るスピードで進化するので一向に慣れないっス。正直、疲れたっス」
何やら向こうで俺被害者の会が結成されそうな雰囲気だ。こいつぁいけない。
「と、ところでマリアさんや。俺に何か用か? あ、何か妖怪? なんちて。うひゃひゃ」
「……ルーンバレット!」
「超熱ぃ!?」
俺の小粋なジョークが魔法で焼かれた。あと、ついでに俺も焼かれた。また地面を超ごろごろ転がって鎮火する。
「ツッコミで人を焼くな」
「彰人が悪いの! つまんないことばっか言ってるから!」
「面白くあれ、と頑張ってはいるんですよ?」
「知らないわよ! ……そ、それよりさ。今、暇?」
「いや、石鹸買いにいかないと」
「あ、あの、彰人さん。それならボクが買いにいってくるっス」
俺の足をくいくい引っ張りながら、テディが殊勝なことを言ってきた。
「そか? それなら助かるが……」
「じゃ、じゃあ暇よね? それじゃ行こっ!」
「わ、たたっ。引っ張るねい」
「お気をつけて~」
なんかハンカチ振ってるテディをその場に置いて、俺はマリアに引っ張られる形で公園の奥へ連れ去られた。
「んで、何か買い物でもするのか? それとも魔法の実験の付き合いか?」
「え、え~っと……そ、そうっ! 魔法の実験!」
「お前も好きな。まあいいや、どんな魔法?」
「え、ええ~っと……」
マリアはきょろきょろと視線をさ迷わせると、芝で何かをついばんでる小鳥にぴたりと視線を合わせた。
「あれっ! あの鳥を」
「焼くのか。お前は焼いてばっかりだな。焼いた後は俺にくれな」
「違うわよっ! ……彰人って変なことばっか言ってるよね」
「たぶん、お腹が空いてるからだと思う」
「だからテディにあんなこと言ってたのね……かわいそうに。あの子震えてたわよ」
「俺だって震えられるぞ? はぁぁぁぁッ!」
「なんでいちいち対抗するのよ! 揺れるな!」
周囲の人間がざわつく程度には震えていたら、叱られた。
「ただいまの震源地は俺。震度2強」
「もー! 彰人が震えるから鳥がびっくりして逃げちゃったじゃない! どうしてくれるのよ!」
「こんなことなら震えるんじゃなかったと思った」
「もー!」
「痛ぇ」
頬をぐにーっと引っ張られながら公園を歩いてると、屋台を発見した。甘い香りが腹を刺激する。
「あっ、クレープだって! 彰人、買って買って!」
俺の頬から手を離すと、マリアは俺の腕を取ってわっさわっさと揺らした。
「わーった、分かったから揺らすな」
匂いに引き寄せられるようにふらふらと屋台の前までやってくる。中で綺麗なお姉さんがせっせとクレープを焼いていた。
「ふー……あ、いらっしゃい。どれにする?」
お姉さんが素敵スマイルで俺を魅了する。俺に年上属性があったら危ないところだっただろう。
「ぶ~! ニヤニヤしない!」
「してねぇよ……」
俺達のやりとりに、お姉さんは笑顔をこぼした。
「ふふっ、可愛い妹さんね」
「妹じゃないもんっ! マリアは、マリアは……その、彰人の……」
「?」
マリアは俺をチラチラと見ては、何やら指をちょこちょこと遊ばせていた。
「……い、いいのっ! マリア、チョコ&バナナ!」
「よく分からん奴だなあ。まあいいか。さて、俺はどれにするかな……」
「彰人はチョコ&イチゴね」
「あい、了解」
「お?」
不思議なことに、俺の意見が存在しないままに注文が終わった。お姉さんが手早く生地を焼き、てきぱきと具を入れ、あっという間に完成した。
「あい、二つで16Gね」
お金を支払い、商品を受け取る。その間にマリアは近くの芝に座り、おいしそうにかぶりついていた。
「ん~☆ おいしーっ♪」
「そいつぁよござんした」
そのすぐ隣に座り、俺もクレープをいただく。なるほど確かに大変甘くて、とてもおいしい。
「ね、ね。彰人のクレープもおいしそうだよね?」
「ゴミ以下の味がする」
「そんなわけないでしょ! ……ね、一口ちょーだい?」(小首をこてりと傾げながら)
「断ろうと思ったのだけど、おねだりポーズが鼻血が出そうなほど可愛らしかったのであげます」
「い、イチイチ言わなくていーのっ! ……あ、そのままでいーよ」
マリアの渡そうと思ったのだが、制された。……まさかっ!?
「……あ、あー、っむ」
マリアは大きく口を開けると、そのまま俺のクレープにかぶりついた。いわゆる“あーん”が発生したッ!
「むぐむぐ……うん、彰人のクレープもおいしいねっ☆」
こんなでも一応は羞恥心があるのか、少し頬を染めながらマリアははにかむような笑顔を見せた。
「…………」
「あ、あの、彰人?」
「うん?」
「ど、どしてマリアの頭をなでてるの?」
「うん? ……ぬぅんっ!?」
言われて見れば確かに俺の手がせっせとマリアの頭をなでていた。
「これはたぶん先ほどのマリアの笑顔にしてやられた結果と見てよろしいのではないでしょうか」
「し、知らないわよっ!」
とまれ、このままではいけないと思い手を離そうとしたら、マリアの少し悲しそうな顔が目に入った。
「……あ、あー。もうちょっといいでしょうか」
「……ち、ちょっとだけなら」
そんなわけで、べたーっとくっついたままマリアの頭をなでてる俺がいます。
「こ、これは誰かに見られたら恋人と勘違いされそうですね」
「……い、妹じゃなくて?」
「あんまりこういうことは妹にゃしねーだろ」
「そっか。……へへっ、そっか☆」
「?」
「いーから。彰人はマリアの頭をいっぱいなでるの!」
「魔法の実験はいいのか?」
「え? うーんと……うん。それはもういいの!」
よく分からないが、晴れやかな笑顔だったので追求はしないでおいてそのままぺとーっとくっついて頭をなでてたら、帰りが遅いと心配したマリアの執事がやってきてその様を目撃し、俺が大変なことになった。超怖かった。
一年ほど前、あらぬ冤罪をかけられ超大変だったが、友人達の助けもあり、どうにか疑いを晴らすことが出来た。助けてくれた友人達には、感謝しても仕切れない。
そんなわけで平穏無事な毎日が戻ってきたということなので、俺は平和を謳歌しつつ、相変わらずジョートショップでだらだらと働いている。
今日は休日。俺は陽のあたる丘公園のベンチに腰を下ろし、ぼやーっとしている。足元では毛まみれの生物がうろちょろしている。たわむれに踏んでやれ。
「むぎゅっ! いきなり何するッスか、彰人さん!」
小生意気にも、この毛玉生物は人語を操るようだ。俺の名を呼びながら怒ったような顔をしている。
「未確認生物を直接手で触る勇気はないんだ」
「もう一年以上一緒に住んでるっス! どこが未確認生物っスか!」
「そもそもお前なんなの? 犬?」
「テディはテディっス! それ以外の何者でもないっス!」
「これはこれはご丁寧に、符長彰人と申します」
「どうして自己紹介してるっスか?」
テディが不思議そうな顔をしてたので、引っ張り上げて踏んだ際に着いた汚れを落としてやる。
「あっ、彰人っ! おーい!」
しばらくトリミングしてると、何やら奇声が聞こえた。が、幻聴はよくあることなので無視。
「彰人さん彰人さん、呼んでるっスよ?」
「お前も幻聴が聞こえるようになったの? 俺のステージへようこそ」
「違うっス、幻聴じゃないっス! マリアさんっス! そこでぶんぶん手を振ってるっスよ?」
「本当かあ? 嘘だったら承知しないぞ? 晩飯のおかずを一品貰うぞ? あと風呂場でタオル代わりにするぞ?」
「おかずもあげないし、タオル代わりも勘弁してほしいっス!」
「なんてわがままな奴だ。そんなんじゃ立派なタオルになれないぞ?」
「そんなの、最初っからなるつもりないっス!」
「あ、タオルで思い出した。石鹸が切れてたんだ。買いに行こうぜ」
「もう、しょうがないっスねぇ……じゃ、夜鳴鳥雑貨店に行くっス」
「そうしよぅあっちぃ! 俺の尻が突如発火を!? くそぅ、こんなところで俺の秘儀、尻ホタルのスキルが発動しようとは!」
「違うわよっ! マリアが魔法で火の玉を飛ばしたの! ず~っとマリアを無視なんかしてるからそんな目に遭うのよ、ばーか!」
地面を転がりまわって尻の火を消してると、マリアがつかつかとやってきて罵声を浴びせる。
「こんにちはっス、マリアさん!」
「こんにちは、テディ。今日ももふもふね」
マリアはテディを抱きあげると、嬉しそうに頭をなでた。
「いやぁ、それほどでもないっス!」
「なんだとコンチクショウ、俺だってもふもふだぞ!」
「なんの対抗心よっ!」
いらぬ負けん気が発動したため、マリアに怒られた。
「ていうかいうかていうかですね、マリアさんよ。こんな街中で攻撃魔法なんか使うな。俺だったからよかったものの、これがテディなら今頃こんがり焼けて香ばしい匂いがあたりに漂い俺の腹が鳴ってるぞ?」
「た、食べないで欲しいっス! ボクはおいしくないっス!」
想像したのか、テディが震えていた。
「安心しろ、お前はきっとおいしい」
「ふわ~ん、マリアさ~ん! 彰人さんがいじめるっス~!」
小癪にも、テディの奴はマリアに抱きついて俺を悪人に仕立て上げた。なんて羨ましい! 俺もあの薄い乳に包まれてえ!(大変失礼)
「ああ、よしよし。もー、彰人っ! テディをいじめたらダメじゃないの!」
「うーん……ごめんな、テディ。よく見たらお前は吐き気を催すほどまずそうだよ」
「ふわーんっ!!!」
テディの泣きが強まった。
「彰人ッ!」
「どうしろと言うのだ」
「ぐすぐす……酷いっス、彰人さん。あんまりっス」
「ああごめんな、テディ。あまりに怖がるから面白がっただけだ。お前は大事な友達だから食べたりしないよ」
マリアからテディを受け取り、優しくなでる。
「うー……あんまり意地悪しちゃダメっスよ?」
「はっはっは」
「うう……笑うばっかりで約束してくれないっス」
「ははは……うん?」
「…………」
ふとマリアを見ると、俺達のやりとりをどこか羨ましそうに見ていることに気づいた。
「どした。お前もテディをなでたいのか?」
「え? いや、そうじゃなくて……」
「?」
「な、なんでもないわよ、なんでも。そ、それよりっ! なんで最初にマリアが声かけたときに無視するのっ!」
「いつもの幻聴だと思ったんだ」
「うわっ、彰人って幻聴とか聞こえちゃうの? 気持ち悪いわねー」
「ああ、よく爆発音と『ごめんなさーいっ!』って響きが聞こえる」
「ぐっ……」
「そして、その後にどういうわけか俺がお前の尻拭いをさせられることが多い」
「い、いいのっ! 彰人なんてそれくらいしか役に立たないんだからっ!」
「いや、ジョートショップで働いてるんだし、もうちょっと人の役に立ってると思うが……」
「ぶ~! ぐちぐち言わないっ!」
「叱るか屁を放つかどっちかにしろ」
「口で言ってるの! 屁なんてしてないわよっ!」
「なんだ、紛らわしい」
「……ね、テディ。よくこんなのと一緒で疲れないわね」
「……一年以上も一緒にいたら慣れそうなもんっスけど、彰人さんはそれを上回るスピードで進化するので一向に慣れないっス。正直、疲れたっス」
何やら向こうで俺被害者の会が結成されそうな雰囲気だ。こいつぁいけない。
「と、ところでマリアさんや。俺に何か用か? あ、何か妖怪? なんちて。うひゃひゃ」
「……ルーンバレット!」
「超熱ぃ!?」
俺の小粋なジョークが魔法で焼かれた。あと、ついでに俺も焼かれた。また地面を超ごろごろ転がって鎮火する。
「ツッコミで人を焼くな」
「彰人が悪いの! つまんないことばっか言ってるから!」
「面白くあれ、と頑張ってはいるんですよ?」
「知らないわよ! ……そ、それよりさ。今、暇?」
「いや、石鹸買いにいかないと」
「あ、あの、彰人さん。それならボクが買いにいってくるっス」
俺の足をくいくい引っ張りながら、テディが殊勝なことを言ってきた。
「そか? それなら助かるが……」
「じゃ、じゃあ暇よね? それじゃ行こっ!」
「わ、たたっ。引っ張るねい」
「お気をつけて~」
なんかハンカチ振ってるテディをその場に置いて、俺はマリアに引っ張られる形で公園の奥へ連れ去られた。
「んで、何か買い物でもするのか? それとも魔法の実験の付き合いか?」
「え、え~っと……そ、そうっ! 魔法の実験!」
「お前も好きな。まあいいや、どんな魔法?」
「え、ええ~っと……」
マリアはきょろきょろと視線をさ迷わせると、芝で何かをついばんでる小鳥にぴたりと視線を合わせた。
「あれっ! あの鳥を」
「焼くのか。お前は焼いてばっかりだな。焼いた後は俺にくれな」
「違うわよっ! ……彰人って変なことばっか言ってるよね」
「たぶん、お腹が空いてるからだと思う」
「だからテディにあんなこと言ってたのね……かわいそうに。あの子震えてたわよ」
「俺だって震えられるぞ? はぁぁぁぁッ!」
「なんでいちいち対抗するのよ! 揺れるな!」
周囲の人間がざわつく程度には震えていたら、叱られた。
「ただいまの震源地は俺。震度2強」
「もー! 彰人が震えるから鳥がびっくりして逃げちゃったじゃない! どうしてくれるのよ!」
「こんなことなら震えるんじゃなかったと思った」
「もー!」
「痛ぇ」
頬をぐにーっと引っ張られながら公園を歩いてると、屋台を発見した。甘い香りが腹を刺激する。
「あっ、クレープだって! 彰人、買って買って!」
俺の頬から手を離すと、マリアは俺の腕を取ってわっさわっさと揺らした。
「わーった、分かったから揺らすな」
匂いに引き寄せられるようにふらふらと屋台の前までやってくる。中で綺麗なお姉さんがせっせとクレープを焼いていた。
「ふー……あ、いらっしゃい。どれにする?」
お姉さんが素敵スマイルで俺を魅了する。俺に年上属性があったら危ないところだっただろう。
「ぶ~! ニヤニヤしない!」
「してねぇよ……」
俺達のやりとりに、お姉さんは笑顔をこぼした。
「ふふっ、可愛い妹さんね」
「妹じゃないもんっ! マリアは、マリアは……その、彰人の……」
「?」
マリアは俺をチラチラと見ては、何やら指をちょこちょこと遊ばせていた。
「……い、いいのっ! マリア、チョコ&バナナ!」
「よく分からん奴だなあ。まあいいか。さて、俺はどれにするかな……」
「彰人はチョコ&イチゴね」
「あい、了解」
「お?」
不思議なことに、俺の意見が存在しないままに注文が終わった。お姉さんが手早く生地を焼き、てきぱきと具を入れ、あっという間に完成した。
「あい、二つで16Gね」
お金を支払い、商品を受け取る。その間にマリアは近くの芝に座り、おいしそうにかぶりついていた。
「ん~☆ おいしーっ♪」
「そいつぁよござんした」
そのすぐ隣に座り、俺もクレープをいただく。なるほど確かに大変甘くて、とてもおいしい。
「ね、ね。彰人のクレープもおいしそうだよね?」
「ゴミ以下の味がする」
「そんなわけないでしょ! ……ね、一口ちょーだい?」(小首をこてりと傾げながら)
「断ろうと思ったのだけど、おねだりポーズが鼻血が出そうなほど可愛らしかったのであげます」
「い、イチイチ言わなくていーのっ! ……あ、そのままでいーよ」
マリアの渡そうと思ったのだが、制された。……まさかっ!?
「……あ、あー、っむ」
マリアは大きく口を開けると、そのまま俺のクレープにかぶりついた。いわゆる“あーん”が発生したッ!
「むぐむぐ……うん、彰人のクレープもおいしいねっ☆」
こんなでも一応は羞恥心があるのか、少し頬を染めながらマリアははにかむような笑顔を見せた。
「…………」
「あ、あの、彰人?」
「うん?」
「ど、どしてマリアの頭をなでてるの?」
「うん? ……ぬぅんっ!?」
言われて見れば確かに俺の手がせっせとマリアの頭をなでていた。
「これはたぶん先ほどのマリアの笑顔にしてやられた結果と見てよろしいのではないでしょうか」
「し、知らないわよっ!」
とまれ、このままではいけないと思い手を離そうとしたら、マリアの少し悲しそうな顔が目に入った。
「……あ、あー。もうちょっといいでしょうか」
「……ち、ちょっとだけなら」
そんなわけで、べたーっとくっついたままマリアの頭をなでてる俺がいます。
「こ、これは誰かに見られたら恋人と勘違いされそうですね」
「……い、妹じゃなくて?」
「あんまりこういうことは妹にゃしねーだろ」
「そっか。……へへっ、そっか☆」
「?」
「いーから。彰人はマリアの頭をいっぱいなでるの!」
「魔法の実験はいいのか?」
「え? うーんと……うん。それはもういいの!」
よく分からないが、晴れやかな笑顔だったので追求はしないでおいてそのままぺとーっとくっついて頭をなでてたら、帰りが遅いと心配したマリアの執事がやってきてその様を目撃し、俺が大変なことになった。超怖かった。
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オリジナルはわからんが
意外と楽しめたゼ(`∇´ゞ
アーカイブで出ないかなぁ。
あれから15年か・・・