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2024年11月23日
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【ファンタジーな世界でツンデレをかばって男が大けがしたらどうなるの】
2010年04月14日
今でない時、ここでない場所。剣と魔法な世界に住む俺は、宿代を稼ぐためギルドで怪物退治を請け負い、怪物が出るという場所へ向かっている最中だった。
「それで、何を退治するの?」
相棒のかなみがめんどくさそうに俺に語りかける。
「んーと、ゴブリンを1匹、かな。畑を荒らすんで、退治してくれって近隣の村から依頼があった」
「地味ねぇ……ドラゴン退治とか、そういう派手な依頼ないの?」
腰の剣を抜き、かなみは近くの草を切った。
「返り討ちに遭うのがオチだろ。かなみはともかく、俺は最近まで武器なんて使ったことなかったんだ。一瞬で焼き尽くされるぞ」
真新しい剣が腰にあるのを確認しつつ、かなみに答える。
「そんなのがなんで怪物退治なんてするの?」
「一番依頼額が高かったから。もう三ヶ月分ツケがたまってるし、少しは払っておかないと追い出される」
「……そんなとこだと思った」
かなみは呆れたように息を吐いた。
「ま、かなみがいるから大丈夫だろ」
「……へぇ、信頼してくれてんだ」
「かなみなら片手でトロルでも引き千切るのも容易いだろうし」
「人を筋肉バカみたいに言うなっ! 無理に決まってるでしょ!」
などと適当に話していると、依頼された場所についた。
「ここね、ゴブリンが出るっていう畑は」
「近くに森があるな。あそこからやってくるんだろ」
「どうする? 来るの待つ?」
「いや、こっちから行こう。相手は一匹なんだ、大丈夫だろ」
「……戦いの素人がなんか言ってるけど、その通りね。んじゃ、サクサク行きましょ」
毒を吐いてからかなみは森の中へ入って行った。置いていかれては敵わないので、俺も後に続く。
しばらく森を歩いていると、洞穴を見つけた。
「あそこかな?」
「よし。かなみ、突っ込め」
「なんで私が! こういうのは男の役目でしょ!」
「じゃあ尚更だ。行け、かなみ」
「誰が男か! いーから行けッ!」
尻を蹴っ飛ばされ、洞穴に頭から突っ込む。
「いてて……ったく、蹴らなくてもいいのに」
洞穴の中は暗く湿っていた。鞄の中からカンテラを取り出し、火を入れる。
「…………」
明かりに照らされ、洞穴の中がはっきり見えた。10匹以上いる、ゴブリンの姿が。
「うわ、うわあああ!」
慌てて洞穴から飛び出し、外で待機していたかなみに抱きつく。
「ちょ、ちょっと! なに抱きついてんのよ!」
「ご、ご、ゴブリン! 10匹ぐらいいる!」
「うそっ!? 依頼じゃ1匹って話だったんじゃないの!?」
「いーから逃げろ! 俺たちじゃ無理だ!」
「ダメよ! 私たちが逃げたら、村が襲われるじゃない!」
「そんな場合じゃないだろ! 死ぬぞ!?」
そうこうしている内に、洞穴からゴブリンたちが姿を見せた。その数、ざっと10。
「私だけでもやってやる! タカシは応援呼んで来て!」
その群れの中に、かなみは剣を掲げて飛び込んだ。
「ああもう……畜生! お前一人じゃ持ち堪えられるわけないだろうが!」
鞘から剣を抜き、俺も群れに飛び込む。ゴブリンたちは雄叫びを上げて敵を迎えた。
どれくらい剣を振るっただろう、もう腕の感覚はない。体は裂傷複数、打撲多数で満身創痍。地面にはゴブリンたちの死骸が8つほど。
「はぁっ、はぁっ……ちょっと、きついわね」
「はぁ、はぁ……言っただろーが、逃げろって」
「うっさいなー、私は応援呼んでって言っでしょ。……バカね、アンタだけでも逃げりゃいいのに」
笑いを浮かべるかなみだったが、イマイチ精彩に欠ける。俺と同じように、限界が近いのだろう。
「バカはそっちだ」
「うるさいわね、アンタこそ……」
「ほっとけるわけないだろ。仲間なんだから」
残ったゴブリンがじりじりと間合いを詰めてくる。数はこちらと同数だが、傷を負っていないだけ向こうが有利だろう。
「……あは、仲間か。……アンタって、そういうことしれっと言うのね」
「さぁって。かなみ、生き残るぞ」
血がこびりついた剣を持ち直す。ゴブリンは低い唸り声を上げた。
「ふふっ、素人がかっこつけて。……そうね、こんな怪物が相手じゃ私の輝かしい歴史の終止符に相応しくないものね」
そう強がって、かなみも剣を持ち直した。そして、化け物に飛び掛った。
もう一匹のゴブリンがかなみに襲い掛かろうとしたところを、牽制してこちらに向かせる。
「お前の相手は、俺だよん」
軽口を叩きながら両手で剣を持ち、ゴブリン目掛けダッシュ。鋭い爪を皮鎧で受け、思い切り胴体を貫く。ゴブリンは悲痛な叫びを上げながら、尚も爪を振り回した。
鎧を切り裂き肩にまで爪が食い込むが、それでもゴブリンを貫いたまま剣を奴の背後にある木に突き立てる。苦悶の叫びを上げ、ゴブリンは息絶えた。
「かなみは!?」
慌ててかなみを見ると、ちょうどゴブリンを仕留めたところだった。ほっと胸を撫で下ろす。
「あー……しんどかった」
地面に転がるかなみの元へ歩み寄ろうとして、気づいた。洞穴にもう一匹いる。そして、そいつは今まさにかなみに襲いかかろうとしていた。
「かなみッ!」
「えっ、きゃっ!」
かなみを突き飛ばすと同時に、背中に衝撃と熱が走る。
「ちょっと、いきなり何……」
かなみの顔が青く染まっていく。
「逃げろ、かなみ……」
「ちょっと、ねえ! なに血なんか流してるのよ! ちょっと、やめてよ!」
「ばか、逃げろって……」
「やめてよ、嘘でしょ!? ねえ、タカシ!」
意識が保てない。かなみの像が揺らぐ。ただかなみの無事だけを願い、俺の意識は閉じた。
目覚めると、そこは白い部屋だった。
「……あっ、タカシ!」
耳をつんざく大声に振り向くと、そこに目を潤ましたかなみがいた。
「アンタねぇ、生きてるならとっとと起きなさいよ!」
目を擦りながら、かなみは少し怒ったように言った。
「ええと……どうなったんだ?」
「あの後、偶然通りがかった魔術師に助けてもらったの。……あそこ、ゴブリンの巣窟だったんだって」
「なんだって!? ギルドの親父、適当なこと言いやがって……依頼料上乗せしてもらわないとな」
「それより! なんで庇ったりしたの!? 下手したら死ぬところだったのに!」
「なんで、と言われても……体が勝手に動いたんだ、仕方ないだろ」
「何それ! 馬鹿にしてるの!?」
「まーまー、いーじゃん。助かったんだし」
「よくない! あのままタカシが死んだりしたら、私、わたし……」
かなみの瞳から涙が零れる。
「かなみ……」
「うぐっ、ひっく……次あんなことしたら、許さないから! 勝手に死んだりしたら、殺すからね!」
「……殺されるのは敵わないな。分かった、次からは無茶しない」
流れる涙を手で拭ってやる。
「……約束、だよ?」
その手を、かなみはぎゅっと握った。未だ潤む瞳で、俺をじっと見ている。
「……ああ、約束だ」
かなみの目が閉じられた。吸い込まれるように、俺は……
「……ちーす。……ん、病院でエロいことしてるので、罰ー。……なむなむ、ふぁいあー」
魔術師の衣装に身を包んだ変な奴が、病室に入ってくるなり俺目掛け火の玉を放ってきた!
「うぎゃあああ!」
「ああっ、タカシが吹っ飛んだ!」
「……正義の勝利。……ぶい」
後で聞いた話だが、俺を吹っ飛ばした悪魔は、かなみを助けてくれた魔術師らしい。
「……ちなみです。……愛と正義のラブリー魔法使いなのです」
「愛と正義の人は怪我人に火の玉放ったりしないぞ。“暴力と悪の残虐魔法使い”ならよく似合ってる」
「……むか。……不愉快なので、貴方のパーティに入ることにします」
「なんで!?」
「……ダメな人を更生させるのもラブリー魔法使いの務め。……ふぁいと、ちなみ」
悪魔が仲間に入ってしまった。
「うう……せっかくタカシと二人きりのパーティだったのに……」
かなみが何か言ってるけど、俺はただ悪魔の参入に頭を抱えるばかりだった。
「それで、何を退治するの?」
相棒のかなみがめんどくさそうに俺に語りかける。
「んーと、ゴブリンを1匹、かな。畑を荒らすんで、退治してくれって近隣の村から依頼があった」
「地味ねぇ……ドラゴン退治とか、そういう派手な依頼ないの?」
腰の剣を抜き、かなみは近くの草を切った。
「返り討ちに遭うのがオチだろ。かなみはともかく、俺は最近まで武器なんて使ったことなかったんだ。一瞬で焼き尽くされるぞ」
真新しい剣が腰にあるのを確認しつつ、かなみに答える。
「そんなのがなんで怪物退治なんてするの?」
「一番依頼額が高かったから。もう三ヶ月分ツケがたまってるし、少しは払っておかないと追い出される」
「……そんなとこだと思った」
かなみは呆れたように息を吐いた。
「ま、かなみがいるから大丈夫だろ」
「……へぇ、信頼してくれてんだ」
「かなみなら片手でトロルでも引き千切るのも容易いだろうし」
「人を筋肉バカみたいに言うなっ! 無理に決まってるでしょ!」
などと適当に話していると、依頼された場所についた。
「ここね、ゴブリンが出るっていう畑は」
「近くに森があるな。あそこからやってくるんだろ」
「どうする? 来るの待つ?」
「いや、こっちから行こう。相手は一匹なんだ、大丈夫だろ」
「……戦いの素人がなんか言ってるけど、その通りね。んじゃ、サクサク行きましょ」
毒を吐いてからかなみは森の中へ入って行った。置いていかれては敵わないので、俺も後に続く。
しばらく森を歩いていると、洞穴を見つけた。
「あそこかな?」
「よし。かなみ、突っ込め」
「なんで私が! こういうのは男の役目でしょ!」
「じゃあ尚更だ。行け、かなみ」
「誰が男か! いーから行けッ!」
尻を蹴っ飛ばされ、洞穴に頭から突っ込む。
「いてて……ったく、蹴らなくてもいいのに」
洞穴の中は暗く湿っていた。鞄の中からカンテラを取り出し、火を入れる。
「…………」
明かりに照らされ、洞穴の中がはっきり見えた。10匹以上いる、ゴブリンの姿が。
「うわ、うわあああ!」
慌てて洞穴から飛び出し、外で待機していたかなみに抱きつく。
「ちょ、ちょっと! なに抱きついてんのよ!」
「ご、ご、ゴブリン! 10匹ぐらいいる!」
「うそっ!? 依頼じゃ1匹って話だったんじゃないの!?」
「いーから逃げろ! 俺たちじゃ無理だ!」
「ダメよ! 私たちが逃げたら、村が襲われるじゃない!」
「そんな場合じゃないだろ! 死ぬぞ!?」
そうこうしている内に、洞穴からゴブリンたちが姿を見せた。その数、ざっと10。
「私だけでもやってやる! タカシは応援呼んで来て!」
その群れの中に、かなみは剣を掲げて飛び込んだ。
「ああもう……畜生! お前一人じゃ持ち堪えられるわけないだろうが!」
鞘から剣を抜き、俺も群れに飛び込む。ゴブリンたちは雄叫びを上げて敵を迎えた。
どれくらい剣を振るっただろう、もう腕の感覚はない。体は裂傷複数、打撲多数で満身創痍。地面にはゴブリンたちの死骸が8つほど。
「はぁっ、はぁっ……ちょっと、きついわね」
「はぁ、はぁ……言っただろーが、逃げろって」
「うっさいなー、私は応援呼んでって言っでしょ。……バカね、アンタだけでも逃げりゃいいのに」
笑いを浮かべるかなみだったが、イマイチ精彩に欠ける。俺と同じように、限界が近いのだろう。
「バカはそっちだ」
「うるさいわね、アンタこそ……」
「ほっとけるわけないだろ。仲間なんだから」
残ったゴブリンがじりじりと間合いを詰めてくる。数はこちらと同数だが、傷を負っていないだけ向こうが有利だろう。
「……あは、仲間か。……アンタって、そういうことしれっと言うのね」
「さぁって。かなみ、生き残るぞ」
血がこびりついた剣を持ち直す。ゴブリンは低い唸り声を上げた。
「ふふっ、素人がかっこつけて。……そうね、こんな怪物が相手じゃ私の輝かしい歴史の終止符に相応しくないものね」
そう強がって、かなみも剣を持ち直した。そして、化け物に飛び掛った。
もう一匹のゴブリンがかなみに襲い掛かろうとしたところを、牽制してこちらに向かせる。
「お前の相手は、俺だよん」
軽口を叩きながら両手で剣を持ち、ゴブリン目掛けダッシュ。鋭い爪を皮鎧で受け、思い切り胴体を貫く。ゴブリンは悲痛な叫びを上げながら、尚も爪を振り回した。
鎧を切り裂き肩にまで爪が食い込むが、それでもゴブリンを貫いたまま剣を奴の背後にある木に突き立てる。苦悶の叫びを上げ、ゴブリンは息絶えた。
「かなみは!?」
慌ててかなみを見ると、ちょうどゴブリンを仕留めたところだった。ほっと胸を撫で下ろす。
「あー……しんどかった」
地面に転がるかなみの元へ歩み寄ろうとして、気づいた。洞穴にもう一匹いる。そして、そいつは今まさにかなみに襲いかかろうとしていた。
「かなみッ!」
「えっ、きゃっ!」
かなみを突き飛ばすと同時に、背中に衝撃と熱が走る。
「ちょっと、いきなり何……」
かなみの顔が青く染まっていく。
「逃げろ、かなみ……」
「ちょっと、ねえ! なに血なんか流してるのよ! ちょっと、やめてよ!」
「ばか、逃げろって……」
「やめてよ、嘘でしょ!? ねえ、タカシ!」
意識が保てない。かなみの像が揺らぐ。ただかなみの無事だけを願い、俺の意識は閉じた。
目覚めると、そこは白い部屋だった。
「……あっ、タカシ!」
耳をつんざく大声に振り向くと、そこに目を潤ましたかなみがいた。
「アンタねぇ、生きてるならとっとと起きなさいよ!」
目を擦りながら、かなみは少し怒ったように言った。
「ええと……どうなったんだ?」
「あの後、偶然通りがかった魔術師に助けてもらったの。……あそこ、ゴブリンの巣窟だったんだって」
「なんだって!? ギルドの親父、適当なこと言いやがって……依頼料上乗せしてもらわないとな」
「それより! なんで庇ったりしたの!? 下手したら死ぬところだったのに!」
「なんで、と言われても……体が勝手に動いたんだ、仕方ないだろ」
「何それ! 馬鹿にしてるの!?」
「まーまー、いーじゃん。助かったんだし」
「よくない! あのままタカシが死んだりしたら、私、わたし……」
かなみの瞳から涙が零れる。
「かなみ……」
「うぐっ、ひっく……次あんなことしたら、許さないから! 勝手に死んだりしたら、殺すからね!」
「……殺されるのは敵わないな。分かった、次からは無茶しない」
流れる涙を手で拭ってやる。
「……約束、だよ?」
その手を、かなみはぎゅっと握った。未だ潤む瞳で、俺をじっと見ている。
「……ああ、約束だ」
かなみの目が閉じられた。吸い込まれるように、俺は……
「……ちーす。……ん、病院でエロいことしてるので、罰ー。……なむなむ、ふぁいあー」
魔術師の衣装に身を包んだ変な奴が、病室に入ってくるなり俺目掛け火の玉を放ってきた!
「うぎゃあああ!」
「ああっ、タカシが吹っ飛んだ!」
「……正義の勝利。……ぶい」
後で聞いた話だが、俺を吹っ飛ばした悪魔は、かなみを助けてくれた魔術師らしい。
「……ちなみです。……愛と正義のラブリー魔法使いなのです」
「愛と正義の人は怪我人に火の玉放ったりしないぞ。“暴力と悪の残虐魔法使い”ならよく似合ってる」
「……むか。……不愉快なので、貴方のパーティに入ることにします」
「なんで!?」
「……ダメな人を更生させるのもラブリー魔法使いの務め。……ふぁいと、ちなみ」
悪魔が仲間に入ってしまった。
「うう……せっかくタカシと二人きりのパーティだったのに……」
かなみが何か言ってるけど、俺はただ悪魔の参入に頭を抱えるばかりだった。
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これシリーズ化してくれたら感涙の雨を降らせます