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2024年11月21日
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【アン 押しかけむぅ】

2011年03月31日
 家でピコピコとゲームをしてると、何の前触れもなくドアがドアー(擬音)って開いたのでどあー(悲鳴)って驚いた。
「……洒落かい?」
「そう思われるのも癪だが、結果だけ見ればそうだな」
「ははは。君は面白いね」(棒読み)
「…………。んで、何用だ、アン」
 人の家に突然押しかけてきた傍若無人なこやつはアンといい、名前からも分かるとおり外国人だ。スウェーデンだかスイスだかから来たらしいが、詳しいことはよく分からん。あそこらの地理は苦手だ。
 こいつの本来の名前はアンジェリカなんたらかんたらという、30文字以上ある超長い名前だったので、もう最初から覚えるのは諦め、短くアンと呼んでいる。
 金髪のうえ金色の瞳と、どんだけ金色が好きなんだこの娘はと思うところだが、身体のことなので実際は好きとか関係ないと思う。
「……何をしている」
 と心の中でアンのパーソナルな情報について考えてると、その当人が俺の膝の上に乗っていた。
「ああ、気にしなくていい」
「いや、気にするだろ」
「家で優雅に紅茶を飲んでいたのだけれど、どうにも据わりがよくなくてね。どうしたものかと思っていたら、君がいないことに気づいてね。こうしてわざわざ来てあげたんだ」
「頼んでねぇ」
「ああ、それから紅茶を頼む。なに、種類は問わないから安心してくれ」
「俺は執事じゃねえからそんなのを甲斐甲斐しく準備しないし、そもそもこの家に紅茶はインスタントしか存在しねぇ」
「なんだって!? そんな家が存在するのか……」
 一般庶民との格差に驚いている模様。これだから金持ちは。
「ていうか降りろ。もっさりした毛が邪魔だ」
「むぅ。君ねぇ、こんな可愛らしい女子が家に来たんだ。少しくらい喜んでも罰は当たらないと思うのだけれど」
 アンは頬を膨らませ、俺の膝の上から人の頬をむいむい引っ張った。
「ゲームしてたんです。このままではお前の頭が邪魔で画面が見えません」
「むぅ。君はゲーム>私、なのか? ……まさか、君はいわゆる二次元しか愛せない人なのか?」
「三次元も愛せます」
「なんだ。君、あまり私を驚かせるものではないぞ」
「しかし、その言い方だとまるで俺がアンを愛しているかのようですね」
「これほど愛らしい容姿をしている私だ、心奪われるのも無理ない話だろう?」
「奪われてねぇ。ていうかお前も別に俺のこと好きとかじゃねえだろ」
「と、当然だ。どうして私が君なんかに。少しばかり仲が良いからといって、調子に乗るものではない」
「そういうことだから、お帰りください。俺は引き続きゲームする」
 アンの両ワキに手を通し、膝から下ろす。そして手でドアの方を指し示す。
「むぅーっ!」
 すると、不思議なことに再び俺の頬がむぃむぃと引っ張られた。
「痛いんですよ?」
「うるさい! 人がわざわざ来てやったというのに、君ときたら喜びもせず私を邪魔者扱いして! 不愉快だ、ああ不愉快だ!」
「ああもう叫ぶな。分かった、分かったから」
 ゲーム機の電源を落とすと、俺はアンを再び膝の上に座らせ、頭をなでてなだめることにした。
「……君はいつだって私を子ども扱いしているな。頭をなでておけばそれで済むと思ってる」
「実際、落ち着いてるし」
「……君の髪をとかす技術に少しばかり感心しているだけだ。それだけだ」
「ふーん。お前以外の女性の髪触ったことないけど、うまいのか、これ」
 くしくしとアンの金色の髪を指でとかしながら訊ねる。一切指にからまることのない滑らかな髪は、触れているだけで気持ちいい。
「少なくとも、私はこの膝でまどろむ時を、どの椅子で眠るより心地良いと感じている」
「椅子扱いか、俺」
「もう少し頑張れば無機物から脱却できるかもしれないよ?」
「せめて生命を持ったものになりたいものだ」
「この本を読み終えるまで私の頭をなでているのであれば、昇進も夢ではないかもしれないよ?」
 アンは懐から小さな小説を取り出し、ページをめくった。
「めんどくせえから無機物でいいや」
「…………」(ほっぺぷくー&恨みがましい視線&半泣き)
「……有機物になるまで頑張るゼ」(なでなで)
「う、うむ。頑張るのだよ、君」
 コクコクと機械みたいに何度もうなずくと、アンは小説を読み始めるのだった。同時に、俺のいつ終わるとも知れないなでなで地獄も始まったのだった。

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Comment
No title
素直クール気味でツンデレ風味な甘えん坊お嬢様って字面にするとアレだけど






最高だな
No title
相変わらずいい脳汁してやがるぜ・・・!
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