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2024年11月24日
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【ツンデレに男が理想の女について語ってみたら】

2010年04月01日
 昼休み、友人らが理想の女性像を熱く語り合っている。
「別府、さっきからぼーっとしてるけど、お前もなんか言えよ」
「腹減った」
「いや……なんでも言えばいいってもんじゃなくて、理想の女のこと言えよ。胸がでけーのがいいとか、巨乳がいいとか、あるだろ?」
「俺にご飯くれる人がいい」
「…………」
 巨乳フェチの友人はなんだか疲れた顔をして、他の友たちとの会話に入っていった。それにしても腹減った。
 弁当でも食おうと思ってたら、幼なじみのかなみがやってきた。なんか怖い雰囲気。
「アンタら、何やってんの?」
「え、俺らは別に……」
 ややひるんだ様子で答える友人。
「別に、じゃないわよ。教室中に響く声でやれ『やっぱ巨乳だよな』とか、『前髪ぱっつんが』とか。もうちょっと静かにしなさいよ」
 かなみに注意され、友人らはなんだか居心地悪そうに体を小さく揺すった。
「あ、お、俺用事あったんだ」
 と誰かが言ったのを皮切りに、友人らは全員教室から出て行った。
「……アンタは行かないの?」
 一人残された俺に、かなみが問いかける。
「弁当食う」
「はぁ……そう言えば、アンタは『ご飯くれる人』とかワケ分かんない答え言ってたわね。犬みたい」
「危うい所ですが、人間です」
 鞄を漁るが、どうしたことか弁当が見つからない。
「あ、そういや早弁したんだっけ」
 学食でも行くかと財布を漁ってると、かなみがためらいがちに声をかけてきた。
「あ、あのさ、よかったらあたしのお弁当食べる?」
「後で倍にして返さないといけない気がするので遠慮する」
「しないわよっ! 失礼ねぇ……」
「そうか? 前になんか倍返ししたような……」
「……あっ、この間のこと? アレはアンタが勝手にあたしのお弁当食べちゃうからでしょ!」
 言われて思い出した。先日、腹が減ってかなみの弁当を黙って食い、それがばれて倍返しさせられたのだった。
「だって、お腹が空いたんですもの」
「お腹空いたからって、人の食べたらダメでしょっ! ……なんでこんな子供に言うようなこと、同級生に言わなきゃいけないのよ……」
「玉子焼きが絶品でした」
「……そっ、そう。ありがと」
 なんで感謝されたのだろう。
「とっ、とにかく、あたしの食べなさい。いーわね?」
「気持ちは嬉しいが、もう倍返しのお金ないんです」
「だから、勝手に食べなかったらしなくていいのっ! ……もう、馬鹿なんだから」
 馬鹿と言われ少し悲しくなったが、食っていいなら頂こう。わさわさと移動し、かなみの席へ。そこにはかなみの友人らしき他の女子たちもいた。
「あっ、別府くんだ。やほー」
「やほー」
 ノリのいい女子にやほーを返すと、かなみになんか睨まれた。
「す、すいません」
「あははっ、別府くんってかなみに弱いねー」
「いや、俺は老若男女全てに弱いんだ。歩く欠陥住宅なんだ。攻城兵器に特攻なんだ」
「アンタ、その適当に喋るクセどうにかしなさいよ……」
 かなみに呆れられたので、大人しく席に着いてかなみの食べかけ弁当に箸をつける。
「ほら、もっと落ち着いて食べなさいよ。ああもう、ご飯こぼしてる。ほら、野菜もちゃんと食べなさい」
 かなみに横から色々注意される。言い返すと三倍くらいになって返って来るので、素直に頷いておく。
「かなみと別府くんってさ、なんかすっごい仲いいよね。本当の姉弟みたい」
「おばさんに世話頼まれてるし、何よりコイツほっといたら野垂れ死にしそうだからね。嫌々よ、イヤイヤ」
 失礼な奴だもぐもぐ……うぐぐ、ノドに飯詰まった。死ぬ。
「あっ、またご飯ノドに詰めてる! ほら、お茶!」
 かなみが淹れてくれた茶を受け取り、一気に飲み干す。
「ごくごくごく……ぷはーっ。死にかけた」
「落ち着いて食べなさいよ、バカ。ほら、またご飯粒ほっぺにつけて……」
 俺の頬についた飯粒を取り、かなみは口に入れた。それを見て、女性陣が声を荒げた。
「どしたんだ?」
「さぁ……」
 不審がる俺とかなみをよそに、女性陣はなんだか盛り上がっていた。
「もぐもぐ……ごっそさん。ありがとな、かなみ。うまかった」
「そう。……で、どれが美味しかった?」
「すき焼き」
「誰もアンタの好物なんて聞いてない! お弁当に入ってたので答えなさい!」
「た、玉子焼きです」
「ふぅん……そっか。……ふぅん」
 なんだか嬉しそうにニヤニヤ笑ってるかなみ。
「気でも触れたか?」
「触れてないわよっ!」
「いや、やけに嬉しそうだし」
「うっ、嬉しくなんかないわよっ!」
 なんで怒られたのか分からないけど、このままここにいたらもっと怒られると俺の経験が告げている。とっとと自分の席に戻ろう。
「んじゃな」
「あ、うん」
 ぽてぽて後ろの席に戻り、前方にいるかなみの方をぼんやり見る。友達たちになんか言われて顔真っ赤にしてる。何言われてんだ?
 ……あ、こっち来た。
「だっ、誰がアンタなんかと! ばーか!」
「……えーと、意味が分からんのだが。説明してくれるとありがたい」
「せっ、説明なんてできるわけないでしょっ! ばか、ばーか!」
 顔を真っ赤にしたまま、かなみは俺にバカと言い続けた。それを、かなみの友人たちがにやにやしながら見ていた。
 訳の分からない俺は、馬鹿馬鹿言われ泣きそうです。

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