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2024年11月21日
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【ツンデレにレンタルビデオ屋へ付き合わされる男】

2010年03月29日
 部屋でマンガ読んでたら、いきなりかなみが部屋に入ってきた。
「いま暇? 暇よね。ちょっと映画でも見たいし、レンタルビデオ屋行かない?」
「行かない」
「……暇? 暇よね。だったら行かない?」
「行かない」
「……行くわよね?」
「行きます」
 首にかなみの腕が絡みついたので、震えながら頷いた。
 そんなわけで真昼の太陽が照りつくクソ暑い中、かなみと一緒に近所のビデオ屋へ。
「んー、何借りよっかな。タカシ、アンタ何か見たいのある?」
「エロビデオ」
 そそくさと奥にある18禁コーナーに行こうとしたら、首根っこを掴まれた。
「女の子と一緒に来てるのに、そういうの借りるな! 第一、そういうのは18歳になってから! アンタまだ学生でしょうが」
「すいません」
 謝ってから再び18禁コーナーに向かおうとしてると、今度は手を握られた。
「謝ったら行っていいってことじゃない! いいからあたしと一緒に来なさいっ!」
「あぁん」
 そのまま無理矢理手を引かれ、一緒に見て回ることになってしまった。
「ねぇねぇ、これなんてどう?」
「……恋愛モノ? かなみが?」
「な、なによ、あたしだってこういうの見たい時もあるわよ」
 かなみは少しだけ恥ずかしそうに頬を染めた。
「や、ちょっと驚いただけ。決してかなみのキャラと合ってないなーとか、かなみが恋愛の機微を理解できる訳がないとか思ってないから安心しろ」
「ありがと♪」
 ありがとうと言いながら俺を殴打するのは何故だろう。
「じゃ、これにしよっと。アンタも何か借りる?」
「エロビデオ」
「…………」
「あ、アクションとか、どうだろう?」
 殺し屋の目で見られたので、思わずひよる。
「あー、いいわね。血沸き肉踊るようなの探しましょ」
 やっぱり、かなみのような武闘派には恋愛なんかよりアクションの方が似合ってる。
「……なんか失礼なこと考えてない?」
「考えてる」
「嘘でもいいから否定しなさいっ!」
 怒られながら適当に選び、失礼なことを考えた罰として俺の財布で会計を済まされ、帰宅。
「さっ、見よ見よ」
 かなみはデッキに借りてきたビデオを入れた。四つんばいになりながら入れてるので、後ろから見たらスカートの中丸見え。パンツだ、パンツ!
「ぐぇ」
 後ろに回りこんでじーっと眺めてたら、尻が降って来て俺が潰れた。
「ちょ、アンタ何やってんのよ!」
「パンツ見てたら尻に襲われた」
 無言でたくさん殴られた。
「ったく、いらんことばっかして……」
「パンツ見えてるのに、見ないのは失礼だろ」
「何も言わないで見てる方が失礼に決まってるでしょ!」
「分かった。次は見ないで触るだけにする」
「アンタさては何も分かってないでしょ!?」
 怒られてると、予告が始まった。
「ああもう、説教は後々。見ましょ」
 映画鑑賞開始。水泳を通し、コーチと弟子が絆を深め、信頼が愛情に変わる……という話のようだ。
 まぁそれはいいのだが、とにかく甘い。甘すぎる。なんだ、このだだ甘展開。
「はふぅ……」
 ほれ、かなみも呆れてため息吐いて……ねぇぇぇぇ!? え、え? うっとりしてるの?
「いいなぁ、こういうの……」
 いいの!? え、だって別に誰も殴られたり撃たれたりしてないよ? それでいいの暴虐王かなみさん!?
「はぁぁぁぁ……」
 ……しかし。
「ちょっと、可愛いと思えなくも……」
「えっ!?」
 かなみの顔が突然こっちを向いた。なんだ?
「あ、アンタ、いま……」
「ん? どうかしたか?」
「え、ううん、なんでもない」
 隣から小さく「聞き間違いよね……」とか聞こえてきた。何のことだろう。
 ……んーむ。しかし、テレビに映されてるものが甘ったるすぎて、見てたらなんか体が痒くなってきた。
 見てるのが辛くなってきたので、かなみの横顔をぼーっと眺める。
「……はふぅぅぅ」
 真っ赤になって甘々シーンを食い入るように眺めるその顔は、見慣れているはずなのに、
「……なんか、可愛い、かも」
「え、ええっ!?」
 突然かなみの顔がこっちを向いた。さっきから俺の視線はかなみに固定されていたので、自然と目が合う。
「な、な、なんか言った!? ていうか、なんでアンタあたし見てるのよ!」
「え、あ、いや……」
 “甘すぎてテレビ見てるのが辛いから隣の緩んだ顔見てた”なんて言い出せず思わず口ごもってると、かなみはまるで犯人を追い詰めた名探偵のように目を細めた。
「……はは~ん。さてはアンタ、あたしとこういうコトしたいんでしょ?」
「は?」
「でもごめんねー、あたしこういうの興味ないんだー」
 いやいやいや、ついさっきまで食い入るように見てたの誰ですか。そもそもこのビデオ借りたの誰ですか。
「……で、でもタカシがどうしてもそういうことしたいんなら、我慢してあげなくも……」
「や、別にいい」
「……あ、あっそ! 残念ね、この機会を逃したらタカシなんかにはこういうことしてくれる相手なんていないでしょうに! あーあー可哀想!」
 そう言って、かなみは再びテレビの方を向いた。
 なんで怒ってるのかよく分からんが、とにかく興味が他所に行ったなら俺に言うことはない。視線をかなみからテレビに移すと、
「ぶっ!」
 ラブシーン、いやさエロシーンの真っ最中でした。
「う、うわぁ……」
 隣の声にそっと様子を覗き見ると、口元を押さえ、目をこれでもかと見開いてテレビを見つめる少女がいた。ちょっとがっつきすぎです、お嬢さん!
「え、そ、そんなところまで映すの? ……え、ええっ!?」
 ……うーむ、テレビの様子も気になるが、かなみを見てた方が面白い予感。
「え、ちょっとこれ、ホントに普通のビデオ? タカシがいつも借りてるえっちなビデオじゃないの?」
 失礼な、いつもじゃないぞ。たまにだ、たまに。
「ふわ、ふわぁ……」
 なんかもう見てて可哀想なくらい真っ赤になりながら意味不明の言葉を呟くかなみ。
 テレビを見つめるかなみと、その様子を眺める俺の図式が成立したまま映画は終了。
「は、はぁぁぁぁ~」
 まるで魂が抜けるようなため息をつくかなみに、置いてあったジュースを渡す。
「あ、ありがと。……すごかったわね」
「そうなのか?」
「そうなのかって、見てなかったの? ……ひょっとして寝てた?」
「見てなかったが、起きてたぞ」
「……? じゃあ何見てたの?」
「かなみ見てた」
「え……ええーっ!?」
 かなみの顔が茹でタコみたいになった。
「な、なんで? ……じゃなくて、折角借りてきた映画見ないであたし見てるなんて、やっぱアンタって馬鹿ねー」
 ふふん、なんて偉そうに腕組んでそっぽ向いてるが、その顔が赤いことに気づいているのだろうか。
「や、赤くなったり意味不明の言葉呟いてる生物見てるのがことのほか楽しくてな」
「……そ、そう。そんなにあたしの顔見てるの楽しいんだ。……ふぅん」
 怒られるかと思ったが、予想外なことにかなみは少しだけ嬉しそうに頬を緩ましていた。
「……じゃ、じゃあ、次も映画、アンタと一緒に見たげる。特別よ、特別! 感謝しなさいよね!」
 “別にいい”と言おうとしたが、凄く嬉しそうなかなみの笑顔を見て、ノドの奥に仕舞い込む。
「……そりゃありがたい話だな」
「ふふん、当然よっ! だからこのビデオ返しに行く時、ちゃんとあたし呼びなさいよね。呼ばなかったら怒るからねっ!」
 ちょっとしたデートの約束を取り付けながら、かなみはにっこり笑った。

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無題
かなみは可愛いなぁ…もっと増やしていただけませんか…?
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