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2024年11月21日
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【魔女とタンク3】
2013年01月15日
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「というわけで、学校に着いた」
「……何ヶ月もかかったように思えるのは、気のせい?」
「気のせい!」(断言)
「断言されては仕方ない」
「物分かりが良い奴は好きだぞ」(なでなで)
「タンクに好かれてもしょがない」
そう言いながらも、なでられて心なしか口角が上がってるラピスだった。
「酷い話だ。で、面接か。どこでやるんだ? 職員室?」
「ん」
「……大丈夫とは思うが、あんま魔法使うなよ」
「なんで?」
さも以外という顔でこちらを見るラピス。やはり俺と違う常識を持ってるようだ。まあ、世界が違うから仕方ないか。1つずつ教えていくしかないな。
「ばれたら面倒な事になるだろうが。下手すりゃ見世物小屋で一生を終えることになるぞ」
「んー……だいじょぶ。ばれない」
「どこからそんな自信が湧いてくるんだ」
「ばれたら魔法で頭いじくるから、だいじょぶ」
「せめて記憶を操作するって言ってくれませンかねェ!?」
「……うるさい」
ラピスは迷惑そうに眉をひそめた。誰のせいだ。
「はぁ……もう。とにかく、もし魔法使っちゃったら魔力を補充しに俺のトコ来いよ。俺のクラスは2-Aだから、探してくれな」
「使うな、って言ったのに使った時のこと言ってる。……やっぱこのタンク頭悪い」
「この魔女性格悪いな。じゃなくて、最悪の事態を想定してるだけだ。魔法を連発なんてできないんだろ?」
コクコクとうなずくラピス。素直でよろしい。
「何もなけりゃないに越したことはないが、想定外の事は得てして起こるものだからな。魔力を充填して、最悪の事態に備えることに越したことはないだろ」
「…………」
「どした? 見直したか?」
「ん。ちょっと」
「ほほう。惚れた?」
「魔女とタンクの間でそゆことは起きない」
「何事にも例外はあるものだ」
「……はぁ。じゃ」
小さく嘆息すると、ラピスは廊下の奥へ向かっていった。
「あ、待て待て」
「……まだ何か? 急いでるんだけど」
殊更面倒くさそうにそう言ってのけやがった。よっぽど放っておこうかと思ったが、一応言っておく。
「逆だ、逆。職員室は反対側だ」
「……初めての場所だから、間違えても仕方ない」
小走りにこっちに戻ってくるラピス。
「顔赤いぞ」
「赤くない。別に方向音痴じゃない」
「後者に関しては触れてなかったのだが」
「……後で根こそぎ魔力奪ってやる」
俺をじろーっと睨んでから、今度こそラピスは職員室の方へ歩いて行った。
軽く嘆息してから、自分の教室へ。友人に軽く挨拶して、世間話を開始。
「よぉ。あのさ、昨日公園の方で何か爆発みてーのあったろ? でもニュースとか全然やってねーの。あれ何だったんだろな?」
「魔女が怪物を退治してたんだ。ちなみに俺はその魔法タンクなんだ」
「中二病はもう卒業しろ」
試しに正直に話してみたが、全く信用されなかった。一安心だ。しかし、ニュースになってないのは一体……?
って、考えるまでもないか。魔法でなかったことにしたのだろう。しかし、それなら結界的なもので最初から隠蔽すりゃいいのに。何か考えがあるのだろうか。
とか考えてたらチャイムが鳴ったので、思考中断。学生らしく授業を受けよう。
それから数時間後、英語の時間。即ち、大変眠い時間。
いつものようにアクビを噛み殺していると、突然教室のドアが勢い良く開いた。嫌な予感がする。
いきなりのことに教室の皆が入り口を注視する。果たして、俺の予感は的中した。
「えーと……あ、いた」
その闖入者はキョロキョロとクラスを見回すと、一直線にこちらに近づいてきた。
「……いや、確かに言ったよ、なにかあれば来いって。でも、もうちょっとTPOを考えるとかあああああ!?」
「んー」
闖入者──ラピスは、むぎゅっと俺に抱きついてきた。女体の柔らかな感触が俺を絶叫に誘う。なにこれすごい。
「あ、あの、ら、ラピスさん?」
「んぅ」スリスリ
頬を襲う未経験の感触。噂に聞く頬ずりに違いない。本当に俺と同じ皮膚をしてるのか。柔らかすぎるぞ。
「……ろ」
しばし柔らかSHOCKに襲われてると、ラピスが小さくなにかつぶやいた。
「は、はい?」
「……なでなでしろ」
なんという破壊力。これは抗う術がない。
「は、はい」ナデナデ
「んー」
これで満足したのか、ラピスは最後に数度スリスリすると、俺から離れた。
「……ん、回復。……じゃ」
さっきの逆回しを見るかのように、ラピスはまっすぐに教室を出て行った。
「……え」
え、置いてかれるの? この状況で?
男子勢はほぼ全員が俺を親の仇とでも勘違いするばかりに鬼気迫る勢いで睨んでいるし、女性陣は何か周囲の女性とヒソヒソ囁き合ってるし、先生は仁王っぽくなってるし。
「……さて。どういうことか説明してもらえるな?」
先生の言葉に、そりゃ俺の台詞だ、と心の中でつぶやくのだった。
「……あ、やっと出てきた。……遅い」(ほっぺぷくー)
「よくもまあいけしゃあしゃあと……」
放課後、すごいことになってたが今世紀最大の口八丁手八丁スキルでどうにか切り抜け、へろへろになりながら昇降口へ向かうと、そこに頬を膨らませたラピスがいた。
「お前なあ、あれは一体どういうことだよ」
「……魔力が切れたら来いって言ったのはタンクなのに。……なんか怒ってる」シュン
「あ、いや、怒ってはいるが、その、あまり怒ってないぞ?」
「まあ、タンクのことだし、どっちでもいいけど」
「…………」
「じゃ、帰ろ? まだ帰り道よく分かんないから、待ってた」
「あー……まあ、途中で話すか」
「ん」コクコク
ラピスと並んで帰宅。14歳というのを差し引いてもコイツは結構背が低く歩幅が狭いので、ちょっと油断すると置いていってしまう。
「うー。……もっとゆっくり歩け、ばか」
そんなわけで、ラピスが頻繁に小走りする羽目になってしまう。
「ああ、悪い悪い」
「……好きで小さいわけじゃない」
「何も言ってません」
「……足の長さは普通。背が伸びないだけ」
「だから、何も言ってないのだが」
「……うー」
「唸られても。って、そんなのどうでもいい。教室でのことだ」
「…………。なんかあったっけ?」
「ええっ!? あれだけの爆弾を放り込んでおいて!?」
「……冗談。……面白い?」
「他人事ならなあ……!」
「やたっ。……将来は、お笑い芸人になろう。……片手間に適当なこと言って、億万長者」
「舐めくさった将来設計はともかく、今は教室での行為について、だ。なんであんな目立つ真似を」
「……別に、問題ないし」
「いやいやいや! 超あるよ! 現に俺さっきまで職員室で詰問されてたし! なんで魔法で助けてくれなかったんだ!?」
「……私のことじゃないし」
「なんという度胸だコンチクショウ。俺が『ラピスは魔法使いだぴょーん。TV局に売り払うでゲスよ』と先生たちにばらす危険性を考えなかったのか?」
「……信じてるから」
「う」
真っ直ぐに見据えられた。青い瞳が俺を映してる。
「……ま、まあ、俺も別にお前が嫌いとかじゃなくてだな、避けられる危険は避けたほうがいいんじゃないかって話をしたかっただけでだな、その……」
「……まあ、タンクごときが言った所で誰も信じないだろうし。信じても、魔法で頭いじくるからだいじょぶだし」
「さっきの信じるっていい台詞はなんだったんですかねェ……?」
「……ドキドキした?」
「あーもー心臓が破裂するかと思うほどですよ」(むぎゅー)
「……その割に、ほっぺを引っ張られてる。……ツンデレ?」
「うるせい。で、俺のトコ来たってことは、魔法使ったってことだよな。……何かあったのか?」
「……だいじょぶ。たいしたことない」
「本当か? ……その、何かやらしいことされた、とか?」
「……薄い本の読み過ぎ」
「うぐ」
……そういや、コイツは俺を数年に渡って観察してたって言ってたよな。……と、いうことは……。
「……いくらなんでも、毎日は、どうかと思う」
ほんのりと頬を染めて、自分の足元を見ながら、ラピスはぽしょぽしょと呟いた。
「よし。死のう」
「……それは、困る。……だから、ダメ」ギュッ
俺の前に回りこみ、ラピスは包み込むように俺の両手を握った。そして、真摯に俺を見つめた。
「フヒィ」
まるでモテた経験のない俺の当然の帰結として、そんな声が漏れる。
「……訂正。……やっぱどうでもいい」
汚いものを触ったかのように手を振り払われた。
「酷い! ニヤケ面ながらもどうにかいいセリフを返そうと苦心した結果なのに!」
「……失敗してるじゃん」
「頑張ったことを評価してくださいよ」
「……結果が大事」
「チクショウ! ……はぁ、過ぎたことだし、もういいや。と思い込もう。で、魔法はなんで使ったんだ?」
「……試験の後、ノド乾いたから、ジュース買おうと思ったけど、お金持ってなかったから」
「から……え? 偽造したの?」
「……魔法で自販機を壊して、ジュース手に入れた」
「より悪質な犯罪を!?」
「……うるさい」
迷惑そうな顔で両耳をふさぐラピス。この魔女、怖え。
「お前、そんな無茶すんなよ。その前に俺を探して金を借りろよ。ていうか100円くらいならおごってやるよ」
「……タンクごときに借りを作るなんて、魔女としてプライドが許さない」
「それくらいで借りなんて思わねーよ。いーから、次はちゃんと俺に言うこと。いいな?」
「むー」
頭をぽんぽんして言い聞かせたら、むーって口を尖らされた。なんて胸キュンな仕草だろう。
「ま、まあそういうことだから。ちなみに、その自販機の後始末は?」
「……だいじょぶ。……ちゃんと粉々にした」
「え、直したとかじゃなくて? 粉々を後始末と言い張る精神構造から、かなりの爆発性質を保持してると判断できますが、俺の推察はどうだと思います?」
「……このタンクも粉々にしようかな」
「怖いですね。とにかく、明日その粉々を直すように」
「……めんどい」
「めんどくても!」
「ぶー」
といった感じでぶーたれる魔女だったが、どうにか平穏無事(?)に転入は成功したようで、安心しました。
前回はこちら
「というわけで、学校に着いた」
「……何ヶ月もかかったように思えるのは、気のせい?」
「気のせい!」(断言)
「断言されては仕方ない」
「物分かりが良い奴は好きだぞ」(なでなで)
「タンクに好かれてもしょがない」
そう言いながらも、なでられて心なしか口角が上がってるラピスだった。
「酷い話だ。で、面接か。どこでやるんだ? 職員室?」
「ん」
「……大丈夫とは思うが、あんま魔法使うなよ」
「なんで?」
さも以外という顔でこちらを見るラピス。やはり俺と違う常識を持ってるようだ。まあ、世界が違うから仕方ないか。1つずつ教えていくしかないな。
「ばれたら面倒な事になるだろうが。下手すりゃ見世物小屋で一生を終えることになるぞ」
「んー……だいじょぶ。ばれない」
「どこからそんな自信が湧いてくるんだ」
「ばれたら魔法で頭いじくるから、だいじょぶ」
「せめて記憶を操作するって言ってくれませンかねェ!?」
「……うるさい」
ラピスは迷惑そうに眉をひそめた。誰のせいだ。
「はぁ……もう。とにかく、もし魔法使っちゃったら魔力を補充しに俺のトコ来いよ。俺のクラスは2-Aだから、探してくれな」
「使うな、って言ったのに使った時のこと言ってる。……やっぱこのタンク頭悪い」
「この魔女性格悪いな。じゃなくて、最悪の事態を想定してるだけだ。魔法を連発なんてできないんだろ?」
コクコクとうなずくラピス。素直でよろしい。
「何もなけりゃないに越したことはないが、想定外の事は得てして起こるものだからな。魔力を充填して、最悪の事態に備えることに越したことはないだろ」
「…………」
「どした? 見直したか?」
「ん。ちょっと」
「ほほう。惚れた?」
「魔女とタンクの間でそゆことは起きない」
「何事にも例外はあるものだ」
「……はぁ。じゃ」
小さく嘆息すると、ラピスは廊下の奥へ向かっていった。
「あ、待て待て」
「……まだ何か? 急いでるんだけど」
殊更面倒くさそうにそう言ってのけやがった。よっぽど放っておこうかと思ったが、一応言っておく。
「逆だ、逆。職員室は反対側だ」
「……初めての場所だから、間違えても仕方ない」
小走りにこっちに戻ってくるラピス。
「顔赤いぞ」
「赤くない。別に方向音痴じゃない」
「後者に関しては触れてなかったのだが」
「……後で根こそぎ魔力奪ってやる」
俺をじろーっと睨んでから、今度こそラピスは職員室の方へ歩いて行った。
軽く嘆息してから、自分の教室へ。友人に軽く挨拶して、世間話を開始。
「よぉ。あのさ、昨日公園の方で何か爆発みてーのあったろ? でもニュースとか全然やってねーの。あれ何だったんだろな?」
「魔女が怪物を退治してたんだ。ちなみに俺はその魔法タンクなんだ」
「中二病はもう卒業しろ」
試しに正直に話してみたが、全く信用されなかった。一安心だ。しかし、ニュースになってないのは一体……?
って、考えるまでもないか。魔法でなかったことにしたのだろう。しかし、それなら結界的なもので最初から隠蔽すりゃいいのに。何か考えがあるのだろうか。
とか考えてたらチャイムが鳴ったので、思考中断。学生らしく授業を受けよう。
それから数時間後、英語の時間。即ち、大変眠い時間。
いつものようにアクビを噛み殺していると、突然教室のドアが勢い良く開いた。嫌な予感がする。
いきなりのことに教室の皆が入り口を注視する。果たして、俺の予感は的中した。
「えーと……あ、いた」
その闖入者はキョロキョロとクラスを見回すと、一直線にこちらに近づいてきた。
「……いや、確かに言ったよ、なにかあれば来いって。でも、もうちょっとTPOを考えるとかあああああ!?」
「んー」
闖入者──ラピスは、むぎゅっと俺に抱きついてきた。女体の柔らかな感触が俺を絶叫に誘う。なにこれすごい。
「あ、あの、ら、ラピスさん?」
「んぅ」スリスリ
頬を襲う未経験の感触。噂に聞く頬ずりに違いない。本当に俺と同じ皮膚をしてるのか。柔らかすぎるぞ。
「……ろ」
しばし柔らかSHOCKに襲われてると、ラピスが小さくなにかつぶやいた。
「は、はい?」
「……なでなでしろ」
なんという破壊力。これは抗う術がない。
「は、はい」ナデナデ
「んー」
これで満足したのか、ラピスは最後に数度スリスリすると、俺から離れた。
「……ん、回復。……じゃ」
さっきの逆回しを見るかのように、ラピスはまっすぐに教室を出て行った。
「……え」
え、置いてかれるの? この状況で?
男子勢はほぼ全員が俺を親の仇とでも勘違いするばかりに鬼気迫る勢いで睨んでいるし、女性陣は何か周囲の女性とヒソヒソ囁き合ってるし、先生は仁王っぽくなってるし。
「……さて。どういうことか説明してもらえるな?」
先生の言葉に、そりゃ俺の台詞だ、と心の中でつぶやくのだった。
「……あ、やっと出てきた。……遅い」(ほっぺぷくー)
「よくもまあいけしゃあしゃあと……」
放課後、すごいことになってたが今世紀最大の口八丁手八丁スキルでどうにか切り抜け、へろへろになりながら昇降口へ向かうと、そこに頬を膨らませたラピスがいた。
「お前なあ、あれは一体どういうことだよ」
「……魔力が切れたら来いって言ったのはタンクなのに。……なんか怒ってる」シュン
「あ、いや、怒ってはいるが、その、あまり怒ってないぞ?」
「まあ、タンクのことだし、どっちでもいいけど」
「…………」
「じゃ、帰ろ? まだ帰り道よく分かんないから、待ってた」
「あー……まあ、途中で話すか」
「ん」コクコク
ラピスと並んで帰宅。14歳というのを差し引いてもコイツは結構背が低く歩幅が狭いので、ちょっと油断すると置いていってしまう。
「うー。……もっとゆっくり歩け、ばか」
そんなわけで、ラピスが頻繁に小走りする羽目になってしまう。
「ああ、悪い悪い」
「……好きで小さいわけじゃない」
「何も言ってません」
「……足の長さは普通。背が伸びないだけ」
「だから、何も言ってないのだが」
「……うー」
「唸られても。って、そんなのどうでもいい。教室でのことだ」
「…………。なんかあったっけ?」
「ええっ!? あれだけの爆弾を放り込んでおいて!?」
「……冗談。……面白い?」
「他人事ならなあ……!」
「やたっ。……将来は、お笑い芸人になろう。……片手間に適当なこと言って、億万長者」
「舐めくさった将来設計はともかく、今は教室での行為について、だ。なんであんな目立つ真似を」
「……別に、問題ないし」
「いやいやいや! 超あるよ! 現に俺さっきまで職員室で詰問されてたし! なんで魔法で助けてくれなかったんだ!?」
「……私のことじゃないし」
「なんという度胸だコンチクショウ。俺が『ラピスは魔法使いだぴょーん。TV局に売り払うでゲスよ』と先生たちにばらす危険性を考えなかったのか?」
「……信じてるから」
「う」
真っ直ぐに見据えられた。青い瞳が俺を映してる。
「……ま、まあ、俺も別にお前が嫌いとかじゃなくてだな、避けられる危険は避けたほうがいいんじゃないかって話をしたかっただけでだな、その……」
「……まあ、タンクごときが言った所で誰も信じないだろうし。信じても、魔法で頭いじくるからだいじょぶだし」
「さっきの信じるっていい台詞はなんだったんですかねェ……?」
「……ドキドキした?」
「あーもー心臓が破裂するかと思うほどですよ」(むぎゅー)
「……その割に、ほっぺを引っ張られてる。……ツンデレ?」
「うるせい。で、俺のトコ来たってことは、魔法使ったってことだよな。……何かあったのか?」
「……だいじょぶ。たいしたことない」
「本当か? ……その、何かやらしいことされた、とか?」
「……薄い本の読み過ぎ」
「うぐ」
……そういや、コイツは俺を数年に渡って観察してたって言ってたよな。……と、いうことは……。
「……いくらなんでも、毎日は、どうかと思う」
ほんのりと頬を染めて、自分の足元を見ながら、ラピスはぽしょぽしょと呟いた。
「よし。死のう」
「……それは、困る。……だから、ダメ」ギュッ
俺の前に回りこみ、ラピスは包み込むように俺の両手を握った。そして、真摯に俺を見つめた。
「フヒィ」
まるでモテた経験のない俺の当然の帰結として、そんな声が漏れる。
「……訂正。……やっぱどうでもいい」
汚いものを触ったかのように手を振り払われた。
「酷い! ニヤケ面ながらもどうにかいいセリフを返そうと苦心した結果なのに!」
「……失敗してるじゃん」
「頑張ったことを評価してくださいよ」
「……結果が大事」
「チクショウ! ……はぁ、過ぎたことだし、もういいや。と思い込もう。で、魔法はなんで使ったんだ?」
「……試験の後、ノド乾いたから、ジュース買おうと思ったけど、お金持ってなかったから」
「から……え? 偽造したの?」
「……魔法で自販機を壊して、ジュース手に入れた」
「より悪質な犯罪を!?」
「……うるさい」
迷惑そうな顔で両耳をふさぐラピス。この魔女、怖え。
「お前、そんな無茶すんなよ。その前に俺を探して金を借りろよ。ていうか100円くらいならおごってやるよ」
「……タンクごときに借りを作るなんて、魔女としてプライドが許さない」
「それくらいで借りなんて思わねーよ。いーから、次はちゃんと俺に言うこと。いいな?」
「むー」
頭をぽんぽんして言い聞かせたら、むーって口を尖らされた。なんて胸キュンな仕草だろう。
「ま、まあそういうことだから。ちなみに、その自販機の後始末は?」
「……だいじょぶ。……ちゃんと粉々にした」
「え、直したとかじゃなくて? 粉々を後始末と言い張る精神構造から、かなりの爆発性質を保持してると判断できますが、俺の推察はどうだと思います?」
「……このタンクも粉々にしようかな」
「怖いですね。とにかく、明日その粉々を直すように」
「……めんどい」
「めんどくても!」
「ぶー」
といった感じでぶーたれる魔女だったが、どうにか平穏無事(?)に転入は成功したようで、安心しました。
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