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2024年11月21日
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【生まれて初めて雪を見たツンデレ】

2010年04月16日
 寒いなと思っていたら、雪が降っていた。
 喜び勇んで外に駆け出し顔面からコケること7回、顔をさすりながら大人しく学校へ向かう。
「うわ、別府だ……」
 快い声と快くない言葉に振り向くと、そこに交際熱烈希望中のレミットさんがおりました。
「おはよう、レミットたん。今日も元気そうで何よりです」
「たんとか言うな! いい? 近寄らないでよね!」
 なんて、レミットは悲しいことを言うのだった。
「了解。後ろから獲物を狙う狩人の視線でじっとレミットを眺めることにします」
「だからそういうことをするなって……ひゃあ!?」
 振り返った時に足を滑らしたのか、レミットの体が斜めに倒れて行く。
「よっ、と。大丈夫か?」
 咄嗟にインド人ばりに手を伸ばし、レミットを抱き留める。転ばなくてよかった。
「あ……う、うん」
 俺の腕の中で、レミットは小さな体をさらに小さくさせ、軽くうなずいた。
「ん、怪我がなくて何よりだ。こけると結構痛いからな」
「そ、そう。……べっ、別に誰も助けてくれなんて言ってないからね! お礼なんて言わないから!」
「いや、それは別に構わないけど……いつまで抱っこされてんだ? 俺としてはこの上なく幸せだけど」
「えっ……きゃっ! あ、アンタねぇ、そういうことはもっと早く言いなさいよ!」
 慌てて俺から離れ、レミットは頬を染めたまま素早くまくし立てた。
「ごめんなさい」
「う、う~……別に、謝らなくてもいいんだけどさ。……うう」
「あー……それにしても、寒いな。雪が降ると嬉しいけど、寒いのだけは勘弁してほしいよな」
 何か困っているようなので、適当に話題を振る。
「あ……そ、そうね。……そういえば、雪見るのって初めてかも」
「ほう、それは珍しい。今まで住んでたとこは、暖かい所だったんだな」
「ん、ん~……まぁ、そうかも。……冷たいけど、けっこ綺麗ね、雪」
 手の平を出し、レミットはちらつく雪を受けた。
「……そんな嫌な奴でもないのかも、ね」
「そんな、どころか嫌なところなんて全くないぞ。そんな俺に惚れろ」
「えっ……ちょ、勝手に独り言聞くなぁ!」
 隣を歩いてるのに勝手に独り言を言うほうがどうかと思うなぁ、なんて思いながらレミットに腕を噛まれる。痛い。
「やっぱヤな奴! ばか、ばーか! べーっ、だ!」
 レミットは軽く駆けて俺から距離を取り、大きく口を開けて舌を出し、俺を馬鹿にした。だけど、馬鹿にされるというよりむしろ微笑ましく、思わず笑ってしまう。
「わっ、笑うなーっ! くのっ、ホントヤな奴!」
「あ、いや……とにかく、一緒に学校行こう」
「お断りよ、ばーか!」
 レミットはもう一度舌を出し、学校へ駆けて行った。
「はぎゅっ!」
 そしてすぐにコケた。
「ううううう~……何よ何よ、雪まで私を馬鹿にして!」
 レミットは雪の上にぺたんと座り、苛立たしげに雪をぺしぺし叩いた。
「走ったりするからそうなるんだ。雪の日は歩くべし」
「うっさい! ……何よ」
 レミットの元まで歩み寄り手を差し出すと、彼女は疑わしげに俺を見つめた。
「んなとこ座ってたら寒いだろ。ほら、掴まれ」
「じ、自分で立てるわよ!」
 俺の手を振り払い、レミットは一人で立った。雪を払い落とし、俺を睨む。
「あんたのせいでコケちゃったじゃない! どうしてくれるのよ!」
「俺のせい……か?」
「そ、そうよ! コケたのも服が濡れちゃったのも寒いのも全部アンタのせい!」
「じゃあ、パンツまで濡れたのも俺のせいだな」
「なっ、なんで知ってるのよ!」
 適当に言ったのに、当ててしまったようだ。レミットの顔が羞恥で赤く染まっていく。
「う、ううう~っ!」
 気が立ってるせいか、どこか獣じみてきたレミット嬢。さてどうしよう。
「つまり、俺のせいでパンツがびしょびしょで濡れ濡れ、というわけか。……やるなぁ、俺」
 どうやらダメな選択肢を選んだようだ。真っ赤な顔で俺の腕に歯を食い込ませるレミットを見ながらそう思った。

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