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2024年11月21日
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【ツンデレに相談したら】

2012年12月16日
「なんか最近大きいおっぱいが好きなんですが病気なんですかね?」
「…………」
 学校への道すがら、軽く話しかけただけなのに、みおが俺のことをさげすむような目で見てきます。
「や、そういう視線で興奮できるスキルがあるのでありがたいですが、今はそういうサービスはいいので、俺の相談に乗ってはくれまいか」
「んなつもりねーよ! きめーって思ってんだよ! 寄んな変態っ!」
「いやはや。それで、どうなんでしょう。治るんでしょうか」
「知んねーよ。まー、オレとしちゃ好都合だし」
「? ……ああ! みおはおっぱいが大変に小さいからなあ!」
 周囲にがおーって感じで吠え猛るように叫んだら、ものすごい勢いでしばかれた。
「殴らないでください」
「何叫んでんだよ何叫んでんだよ何叫んでんだよッ!?」
「大事なことなので二回どころか三回言いましたか。叫んだ内容はみおの胸部に収まる脂肪容量について少し」
「なんで叫ぶんだよっ!?」
 俺をがっくんがっくん揺さぶりながら、半泣きで訴えるみお。かーわいい。かーわいい。
「ちっぱいの素晴らしさを俺だけが愛でるのも申し訳なく思って、そして、貧乳の友を一人でも増やすための啓蒙活動のひとつでもある」
「オメーはおっきいのが好きになったんだろっ!?」
「ああ。そういやそうだ。ただみおの恥を撒き散らすだけに終わったね。まあ、他人事だし、いっか!」
「いくねー! んで酷すぎだっ! オメー絶対ろくな死に方できねーかんなっ!」
「まあ畳の上で死ねるとは思ってませんがね。でも昨今は大体病院で死ぬので誰しもがそうなのではないでしょうか? では俺の覚悟とはなんなのだ。畳の上で死ぬ覚悟より畳の上で水練でもした方がカロリーを消費できてマシなのだろうか」
「知るかっ! あとオメー泳げるから練習しても意味ねーしっ!」
「そうだっけ? プール入ったの半年前だからよく覚えてないよ」
「オメー、ある意味すげーな……」
「ただ、みおのスク水姿は今でもまぶたを閉じれば克明に思い出せる。……そう、思い出せるッ!」カッ
「うっせーっ! ……て、ていうか、オメーは大きいのが好きなんじゃねーのか。オレの、その、そーゆー姿思い出しても、しょーがねーんじゃねーのか?」
「む? ……ふむ」
 試しに目を閉じ、みおのスク水姿を思い浮かべる。今までに何度となく繰り返した行為だ、容易くできる。
 そうして浮かんだ像は、果たして目の前にじっさいにいるかと錯覚するほどの出来栄えだと自負できるものだった。作り上げた俺ですら惚れ惚れする。
 ぴたりと肌に張り付いた生地、水に濡れるナイロンの色、二の腕と肩の境目に現れる日焼けの境界線、そして楽しげに水と戯れるみお。の胸元のぺたんこ加減。
「……perfectだ」ニヤニヤ
「うわぁ」
「よかった……よかった! 俺は今でもちゃんと貧乳者だ! ただ、ストライクゾーンが増えただけなんだ。俺はここにいてもいいんだ!」
「いくねー。出てけ」
「俺も宇宙船地球号の一員なので、嫌です」
「はぁぁ……結局一緒かよ。いや、それどころか変態度が上がっただけか。最悪だな」
「ありがたうありがたう。これでも本気で悩んでたんだ。これでこれからもみおのおっぱいを……いや、なんでもない」
「んなわけねーっ! ちょーヤバげなこと言いかけてたろっ! なんだよ、オレのお……む、胸がどしたんだよっ!」
「おっぱい、って言ってくれたら言う」
「お……」
 みおは顔を赤くして停止した。これくらいで照れなくてもいいと思うのだが、そこもまた魅力なので言わない。
「言いにくいのであれば、『あのね……みおのおっぱいをもみもみして、おっきくしてくれる?』とロリロリな感じで言うのでも構わない。いや、そっちの方がいい。是非そっちで。言って。言ってくれ。いくら出せば言ってくれる? 録音は別料金か? 有り金全部で足りるか?」
「もうどっからつっこみゃいいのかわかんねーよっ!」
「さて、妄言に満足したので今まで通りみおのおっぱいを観察していよう」
「にゅ? ……あ、それかっ! つか、見んな変態ッ!」
「ああっ! さっきの『にゅ』って台詞が大変に可愛かったのに録音しなかった! ええい、どうして準備をしておかなかった! 自分の迂闊さが恨めしい! ええい!」
「……ふふん。にゅー。にゅー」
「ああ! 待って待って今ケータイ出すから待って!」ワタワタ
「にゅーにゅーにゅー♪」
「待ってああ可愛い可愛すぎて手が震えてうまく鞄を探れないああ、あああ」
「にゅー。にゅあー。にゅー」
 みおは調子に乗って俺の周囲をクルクル回りながら、節をつけてにゅーにゅー言いまくった。それに混じって、理性のタガが壊れる音が聞こえた。
「ああもういいや」ナデナデ
「ぬあっ!? な、なでるなっ!」
「度を越した挑発の罰だ。甘んじてなでられるがよい。断った場合、俺は妖怪なで男と成り果て周辺の女性をなでまくり、数刻後には警察官に囲まれていること請け合いなので断らないでくださいお願いします」ナデナデ
「罰なのに最終的にはお願いしてんじゃねーか……はぁ、まーいーよ、オレも挑発しすぎたもんな。……だ、だからなでられてもしょがないもんな。……だ、だよな?」
「何の確認ですか」
「い、いーんならいーんだよっ! ほ、ほらっ、手が止まってんぞ!」
「なでられたいのですか」
「ん、んわけねーから! 絶対にねーから! 誰がオメーなんかに!」
「そりゃそうだ。はっはっは」
「…………。ふんっ!」
「痛いっ!?」
 どういうわけか全力で足を踏まれた。
「あの、みおさん」
「ふんっ。知るか。オレの勝手だ」グリグリ
「いやはや。痛いです」ナデナデ
「とか言いながら怒りもせずにオレの頭なでてるし。ばかじゃねーの」
「んーむ。怒るよりなでる方が楽しいと思いませんか?」ナデナデ
「……うー。今日もばか」
 みおは困ったように俺を見上げたまま、なでられてた。

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【ツンデレとマクドナルド】

2010年06月18日
 放課後、みおと一緒に帰ってると、突然ハラヘッタという台詞が飛び出した。
「そこに雑草が生えてます」
「オマエが食え」
「うっうっうっ……」
「泣きながら抜くな! 嘘に決まってんだろ!」
「なんだ。みおのことだ、無理やりにでも食わせるのかと思った」
「どんだけ悪人だと思われてんだよ……むかついたから、オマエの奢りでどっかで飯食わせろ」
「なんということでしょう」
 そんなわけで、近くのマクドナルドへやって来た。
「で、何食うんだ?」
 列に並びながら、みおに訊ねる。
「んと……てりやきバーガーとクォーターパウンダーとベーコンレタスバーガーとチキンタツタと」
「…………」
「無言で店から出ようとすんな!」
 首根っこを掴まれ、列に引き戻される。
「あのですね、みおさん。俺の財布は叩いても内容物が増えないので、そんなに買われると死に絶えるのですが」
「んなの知らねーよ、ばーか」
「…………」
「だから、無言で出ようとすんな! なんで半泣きなんだよ!」
「お金が、お金がないんです……」
「だーっ、もう! うるせーなー! わーったよ、ちょっとだけにしてやんよ。なっさけねーなー、オマエ」
 俺に情けがなかったおかげで、みおはてりやきセットだけ頼むことになった。俺はハンバーガーひとつ。
「んーで、なんでオマエはセットじゃねーんだ?」
 席で注文の品ができあがるのを待ってると、みおが疑問をぶつけてきた。
「さっきも言ったように、お金がないのです」
「びんぼーにん」
「その貧乏人にたかってるのは誰だ」
「にゃはは……まっ、気にすんな」
「にゃははと可愛い感じで誤魔化されては、気にしないに決まってるであろう!」
「ぅ……か、可愛いとか言うなっ!」
「照れ隠しに殴るのもまた。だがしかし、その打撃力は俺の予想を遥かに超えており、結果すいません助けてください!」
「イチイチ叫ぶな!」
 などと店に迷惑をかけていると、店員さんが注文の品を持ってきた。
「へへー、んじゃいただきまーす!」
「おあがりなさい」
「んがんが……んぅー♪ 久々だけど、やっぱうめーな!」
 みおは嬉しそうにハンバーガーをほうばった。女性とは程遠い口調だが、元気いっぱいで可愛いので頭とかなでたい。
「……なに人の頭なでてんだよ」
「お?」
 宿主の意向を無視したのか尊重しすぎたのかは知らないが、俺の腕が欲求だけに留まらず、実際にみおの頭をなでていた。
「おお! いやあのですね、説明するからせめてその間だけは生かしておいてくださると何かと助かります」
「なんで殺す前提なんだよ! ……んで、いつまでなでてんだ?」
 みおはハンバーガーをはぐはぐ食いながら、俺をじろーっと睨んでいた。しかし、その頭には俺の手が載っており、さらにせわしなくなでているので、結果俺になでられながらも怒ってるみお、という図式が完成しているので、持って帰りたい。
「な、何をにやにやしてんだ! ばっかじゃねえの? ……つ、つーか、ホントにいつまでなでてんだ」
「だってもぐもぐ中のみおがなんかもう新種の生物かーってくらい可愛いので、俺の腕が制御を受け付けないんですもの!」
「で、で、ですものじゃねえ、ばーか! ……え、えと、あと、……ばーか!」
 人をなじりながらも、みおはそれでも俺の腕を跳ね除けようとはしなかった。あと、頬の赤さは指摘しない方がいいのでしょうか。
「いや本当すいません今度俺の制御を受け付けない腕になったのであれば切除も視野に入れるのでどうか勘弁を」
「……とか言いながら、ちっともやめる気配ねーし」
「うーん……まあいいか。さよなら五体満足」
「一瞬で諦めんな! ……はぁ。も、もーいーよ。好きなだけなでたらいーよ。べ、別に減るもんじゃないしさ」
 みおはハンバーガーの包み紙で顔を隠そうとしながらもごもご言った。
「やったあ! あ、最初に言っとくが、なですぎて発火したらごめんな? いわゆるナデボッてやつ」
「…………」
 とても怖い目で睨まれたので、細心の注意を払ってみおの頭をなでる。震えながらもなでるのをやめない俺をどうか褒めて欲しい。
「もがもが……ごくん。ごちそーさま」
 向こうは食べ終わったようだが、俺のターンは未だ終了していない。俺はみおの頭をなで続けた。
「……うぅ」
 みおはちらちら俺を見ながら、目だけでまだかと催促した。それに気づかないフリをして、なでなでを堪能する。
「……うー。……うー!」
 両手で自分のズボンをぎゅっと握り、みおは声を出して俺を急かした。しかし、それでもなお俺は気づかないフリを続ける。
「うー! うー! うー!」
 俺の気づかないフリにいい加減怒ったのか、みおは俺の頬をつねりながらうーうー言った。しかし、そんなもので俺のなでなで欲を抑えられようか。俺はそれでもみおの頭をなで続けた。
「うーっ!」
 殴られたので、なでなで中止。
「お前……殴るのはナシだろ」
 あふれ出る鼻血を止めつつ、みおを糾弾する。
「うっさい、ばーか! いつまでなでてんだ!」
「お前が好きなだけなでてもいいと言ったではないか」
「限度があんだろ! いくらなんでもなですぎだ、ばーか!」
「こんな機会でもないと、みおの頭をなでられないので」
「う……な、なんでオレの頭をそんななでてーんだ?」
「恐らく、みおの考えてる通りかと」
 みおの顔が一気に赤くなった。
「えっ、ええっ!? なんでバレて!? あ、あのっ、違うぞ!? みおはオマエなんてちっとも!?」
「まあ本当はお前が何考えてるかなんてちっとも分からないのですがね。はっはっは」
「…………」
「おや? どうしましたみおさん? 何やらぷるぷると震えているようにお見受けしますが。そして嫌な予感がふつふつと」
「……しゅんごくさつ!」
 何か選択肢を誤ったようで、マクドナルド店内だというのにKOされたので辛い。あと、一人置いてかれるのも辛い。

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【気持ち良さそうに眠るツンデレの口からよだれが垂れていたら】

2010年06月07日
 みおが俺の家まで遊びに来て、さっきまで適当に話してたはずなんだが、気づけばなんか爆睡してる。しかもよだれ垂れてるし。
「女性としての自覚ゼロだな、こいつ……」
 ほっぺをつついてみると、うっとうしそうに手で払ってる。口元がむにむにしてて、猫みてえ。
「んに……すひゃー」
「すひゃーじゃねえ」
 などと、寝言につっこみを入れてる場合じゃない。乳でも揉みたいところだが、揉むところがない。……じゃない、ばれたら大変なことになる。主に俺の命関連が。
 そういうわけで、毛布をかけてやろう。もうすぐ夏で暑いとはいえ、うっかり風邪でも引かれたら、無理やり俺の責任にされて酷い目に遭わされそうだし。
「んに……んー」
 そんなわけで優しさたっぷり毛布をかけてやったのに、みおの奴、あろうことかその毛布で涎拭きやがった。俺の毛布が!
「んぅ……う?」
 悲しみのあまり頭を抱えてたら、ふとみおの目が開いた。
「くぁぁぁぁぁ……ん。おあよー」
 猫のように大きく身体を伸ばしながらあくびをして、みおは舌っ足らずな挨拶をした。
「おあよ、じゃねえ。人んち来て寝るな」
「んー。なんか眠くってさー。オマエんち、なーんか落ち着くんだよなあ」
「壁に貼られている美少女ポスターの群れが、みおを優しく見つめているからじゃないか?」
「こんなオタク部屋がなんで落ち着くんだろなあ……あ、コレ」
 自分にかけられた毛布をひょいとつまみ、みおは俺を見た。
「俺様が寒かろう寒かろうと毛布を夜なべして編み、かけてやったんだ。感謝しろ」
「もう夏だし。放課後に来て夜なべも何もないし。編み物できねーだろーし。……でも、まあ、アリガト」
 最後だけぽしょぽしょと、少し恥ずかしそうにみおは言った。
「んむ、存分に感謝しろ。ところでみお、お前一応女の子なんだから、寝てる最中とはいえ涎を垂らすのはどうかと」
「んなの知らねーし。寝てる間のことまで分かんねーよ」
「俺だったからなんとか自制できたが、これが普通の男だったら今頃涎を舐めに舐められまくってるぞ」
「やんねーし! 普通の男はまず舐めようって考えとかねーし! つーかオマエ、まさかとは思うけど、舐めたりしてねーだろーな?」
「…………。うん、舐めてない」
「ぜってー嘘だ! その間はなんだよ!?」
「いや、なんとなく。とまれ、嘘じゃないよ? 本当に舐めてないよ?」
「ううううう……ぜんっぜん信じらんねーし。それ、ふつーに犯罪だかんな」
 みおは俺を犯罪者的な何かを見る目つきでじとーっと見た。
「いやはや。信用ないなあ、俺」
「普段のオマエの行動を鑑みるに、当然だろ。むー……」
「そんな可愛い感じで口を尖らせられても」
「そっ、そんなつもりじゃーねよ! ばか!」
 みおは顔を赤くしながら俺の背中をばんばん叩いた。
「痛い痛いっていや本当に背骨折れそうなくらい痛いのでやめて助けてぇ!」
「イチイチ叫ぶな、ばか! ……そ、それよりだ。ホントのところはどーなんだ? お、オレのよだれ、舐めたのか?」
「だから、舐めてないっての。いくらなんでも寝てる友達の涎をこっそり舐めるほど堕ちちゃあいないつもりだ」
「そ、そか。……あの、ごめんな?」
「いいさ」
「怒ってる?」
「怒ってない」
「……なんか言葉が怒ってる」
 みおは不満げに俺を睨んだ。まったく。こいつは普段は粗野なくせに、こういうところは無駄に気を使いやがる。
「本当に怒ってないっての。お前はいつもみたく、適当に笑ってろ」
 みおの頭をわしわし混ぜくりながら、わざとぶっきらぼうに言う。
「うぅ~。なんだよ、それってオレが普段馬鹿みたいじゃねえか」
「自覚がないとは。酷い馬鹿がいたものだ」
「うっせー! オマエの方がよっぽど馬鹿じゃねーか! 今日も教師に呼び出し喰らってたろ!」
「え、あ、いやあれはその、更衣室での色々が、その……まあいいじゃん。わはははは!」
「えろやろー」
「なんて不名誉な称号を授かってしまったものだろう」
「あはははっ。……んとな、あのさ。その、ごめんな? 疑って」
「またその話か。もう怒ってないから気にするなっての」(なでなで)
「うに……で、でもさ! ……あのさ、よかったら、オレの涎、舐める?」
「みおの頭がおかしくなった」
「なってねー! ほら、アレだよ。……お詫び?」
「お詫びに涎を舐めさせる、という話を聞いたことがないのは俺だけなのだろうか」
「う、うっせー! どーすんだよ、舐めるのか、舐めねーのか!?」
「そりゃどちらがいいといえば、もちろん舐めたいです」
「や、やっぱか。えろやろーだもんな、オマエ」
「そんなえろやろーに舐められるお前は何なんだろうな」
「い、いーから早くしろ!」
「わーったよ。動くなよ」
「う、あぅ……」
 みおの顔に自分の顔を寄せる。……ぐ、なんかいい匂いが。
「ま、まだ? もーいいか?」
「まだ全然。てか、ちょっと口開けろ」
「う、うぅー」
 みおは俺の顔をちらちら見ながら、おずおず口を開いた。隙間から八重歯が覗く。
「で、涎垂らせ」
「明らかに変態の欲求だ、この変態やろー!」
「お前が舐めさせるって言ったんだろーが。ほれ、早く」
「う、うぅ……」
 恥ずかしがるばかりで、みおはちっとも垂らそうとしない。あんまりにも遅いのでれろんと口周辺を舐めてやれ。せーの、れろん。
「ふひゃっ!? なっ、なにすんだっ、ばかっ!」
「すごく痛いっ!?」
 舐めると同時にすごく痛い感じのパンチを繰り出され、壁まで吹き飛ぶ。すごく痛い。
「なっ、なっ、舐めた、舐めたろ!? オレの口!」
「いたた……いや、周辺。口はセーフ」
「う、うっせー! 絶対舐めた! べろべろーって!」
「舐めてないっての……」
「うっせー、えろやろー! もーよだれはナシ! 口舐めたんだからいーだろ!」
「やってないと言うのに、頑な奴め。しかし、仮に口を舐めたのであれば、それはもうキスではなくって?」
「へ? ……う、うぅぅぅぅ~!」
 みおの怒りゲージと羞恥ゲージが一気にMAXへ上がっていくのが傍目にも分かる。そして、俺の命が大変ピンチなのも分かる。
「……し、しゅんごくさつ!」
「お?」
 何やら滅されたようで、死ぬほど痛い。
「こ、このえろやろー! オマエなんか、オマエなんか……その、アレだぞ、許さないかんな!」
「滅されたうえ、さらに何かされるとほぼ確実に死にますがよろしいか!?」
「オマエなんか死んじまえ、ばーかばーかばーか!」
 顔を真っ赤にしながら、床に転がる俺をぺしぺし叩くみおだった。

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【バレンタインにチョコ渡し損ないホワイトデーに期待の持てないツンデレ】

2010年03月14日
 一ヶ月前のことは何一つ思い出したくない。戦果が0とか嘘だと言ってよバーニィ。
 だがしかし。それでも男には戦わねばならない時がある!
「具体的には記憶喪失を装い、バレンタインにチョコを貰った風で何気ない顔でホワイトデーにお返しを贈り、目当ての女の子と仲良くなるってえ寸法だ」
「……で、なんでそれをオレに言うんだ?」
 放課後、学校に残ってた友人のみおに相談したら、嫌な顔をされた。
「俺の演技力では記憶喪失を装うのは難しいし、ここはひとつみおに一発殴ってもらって実際に記憶を飛ばしてみようと思ったんだ。あ! でも、飛ばすのは記憶だけで生命は留まらせていただければ幸いです」
「なんでオレがそんなのやんなくちゃいけないんだよ。一人でやってろ、ばか」
「あと、パンツとか見せてもらっても幸いです」
「言いながらオレのスカートの中に入るなっ!」
「とても居心地がいいので住みたいです」
 たくさん殴られ蹴られたので、ほうほうの体で逃げ出す。
「畜生、しまぱんまでが俺を迫害する……!」
「いっ、言うなっ、ばかっ! えっち!」
 真っ赤な顔で俺をなじるみおだったが、そのような台詞は俺を喜ばすばかり。
「ふふん」
「なんで誇らしげなんだよっ! う~……あのなあっ! おまえのそーゆーとこ、すっごいダメだかんなっ! 分かってんのか!? ちょっとは反省しろっ、ばかっ!」
「知ってるけど、止められないんだ。体が勝手に動いたんだ」
「痴漢常習犯の台詞だぞ!?」
「大丈夫。俺の体が勝手に機能は、みおのしまぱんにしか発動しないから」
「うっ……い、いちいち人のパンツの柄を言うなっ! ばかっ、えっち!」
「白と薄い水色のコントラストが俺の心を掴んで離さないんだ。ただ、さらにもう一歩踏み込み、ローレグにしてくれると俺嬉しくて泣いちゃうかも。……いや、うん。泣きます!」
「そんな宣言知らんっ! お前もうどっか行けっ!」
「まあそう言わないで。俺を記憶喪失にしてくれたらどっか行くから」
「勝手にやってろ!」
 みおはぷりぷり怒って教室を出て行った。やりすぎたか。しょうがない、俺も帰ろうと思いながら鞄を取ろうとしたら、みおの席に鞄が置いてあるのに気づいた。
 あいつ、怒りすぎてて忘れたな。俺のせいだし、持っていってやるか。
 軽い駆け足で下駄箱へ急ぐ。果たして、ちょっと困ったような顔で所在なさげに立っているみおがそこにいた。恐らく鞄がないことに気づいたはいいが、怒って出て行った手前戻ることも出来ないのだろう。
「ん」
「あ……オレの鞄。……な、なんだよ、別に感謝なんかしないかんなっ!」
「か、勘違いしないでよねっ! 感謝されたくて持ってきたんじゃないからねっ!」
「どやかましいっ!」
 超怒られた。
「せっかく持ってきたのに怒られて悲しいが、まあいいや。一緒に帰ろうぜ、みお」
「う、うー……わ、わーったよ」
 みおとてくてく帰路に着く。
「……で?」
 その途中、みおが不意に口を開いた。
「はい?」
「だ、だから。……バレンタインにさ、誰に貰いたかったんだよ、チョコ」
 こちらを見ないまま、ぶっきらぼうにみおは俺に問い質した。
「誰って、まあ、別にいいじゃん」
「まあ、そだけどさ」
 ややあって。
「……誰でもいいならさ、別に教えてもいいよな?」
「まあ、そうなんだけど。逆に言えば、教えなくてもいいよな?」
「……あー、もう! いーよ、もう!」
 それからしばらくして。
「……な、なー?」
「ああもう。分かったよ。お前だよ、お前」
「ふぇ……っ!?」
 みおの口から変な声が出た。
「だから、お前だっての。一日中わくわくしてたのに、そのそぶりすらなかったので泣く泣く帰宅したのですよ」
「う、あ、う……」
「何を口をパクパクさせてる。気絶したいほど恥ずかしいのは俺だっつーの。ふん」
 顔に血が集まるのを感じたので、分からない程度に自分の顔をみおの反対に向ける。ええい。
「え、あ、いやだって、……う、嘘だろ! そーやってオレにお世辞言ってるだけだろ!」
「まあ、好きにとってくれ」
「う……うー!」
「頬を抓るな。痛いです」
「う、うっさい! ……え、えーと! あ、あのさ、お前さ、ホワイトデーにお返しを渡す相手誰もいないんだろ?」
「どこかの誰かが義理でも渡してくれなかったので、渡す権利が発生していないので。だからこそ、みおに俺が記憶喪失するように殴打してくれと頼んだんだけどな」
「なんで当の本人に頼むんだよ、ばか。……んでさ、その。……どーしてもってんなら、さ。……お、オレに渡してもいーぜ?」
 慌ててみおを見る。夕日のせいだかなんだか知らないが、みおの顔はまっかっかだった。
「ちっ、違うかんな!? べ、別にそーゆーのじゃなくて、お前があんまりにも哀れだったからで! みおは全然欲しくなんてなくて! え、えーと! あ、あの、罪滅ぼし! それで!」
「みおさん、一人称、一人称」
「あっ……う、うー」
 みおは興奮すると一人称がオレからみおへと変化するので、俺の好物となり危険です。
「うー!」
「なんで俺が唸られているの? そしてなんで俺の頬をつねっているの?」
「うっさい! いーから明日はオレに貢物よこせ! いーな!?」
「渡すとこの頬引っ張りは解除されるのでしょうか」
「されるから!」
「じゃあ、渡す」
「う、うん。……あ、あの、いちおー聞くけどさ、嫌々じゃないよな?」
 ……ここまで根掘り葉掘り聞いて、何を不安げな顔をしているかな、この娘は。
「確かに誰にもお返しできないってのは、男として矜持が許さない。だからと言って誰でもいい、という話でもない。その点、前述したように、みおが相手なら嬉しいことこの上ない」
「う……うー!」
「なぜ俺の頬引っ張りが再開されたのでしょうか」
「う、うっさい! そーゆーことを真顔で言うやつなんか信用できないから! とかそーゆーの!」
「そろそろ痛みで涙腺が決壊しますが、いいでしょうか」
「だから、なんでいっつも真顔なんだ!?」
「気を抜くと顔が緩み、嬉しさがはちきれるので」
「う……うーっ!!!」
「超痛いのですが」
 いつまで経っても頬引っ張りは解除されそうにないようだ。みおの真っ赤な顔を見ながら、そう思った。

 そんなわけで翌日、ちょっと高めのクッキーを買ってみおに渡す。
「ほい、お返し。……いや、貰ってないのだから、お返しってのはおかしいな。そうな、貢物だな。年貢?」
「人を悪代官にすんな、ばか。……で、でもそーだよな、何も渡してねーのにお返しって変だよな」
「あ、いやまあそうなんだけど、今回は俺のわがままを通してもらった形だし、気にすることはないと思うが」
「う、うっさい! オレを礼儀知らずにしたいのか!?」
「よく分からんなあ……」
「い、いーから! ……その、こ、これ」
 みおが後ろ手に持っていた包みが差し出された。これは……
「……チョコレート?」
「ちっ、違うかんな!? 別に渡せなかった奴とかじゃないから! こないだ沢山買って家に余ってたの! ホントに!」
「あー……。うん。ありがと、みお」
 感謝の意を込めて、みおの頭をなでる。この娘は標準より小さいので、なでやすくて俺に最適なので持って帰りてえ。
「う、うー……。お前、すぐみおの頭なでる……」
「みおさん、みおさん。一人称」
「え? ……あ、う、……うー!」
「照れ隠しに俺の頬を引っ張るのやめませんか」
「うっ、うるさいっ! 照れてなんかないもんっ!」
「しかし、そんな真っ赤な顔では信憑性が」
「うるさいうるさいうるさいっ! 文句言うぞチョコやんねーぞ!?」
「それは大変にいけない! 何も言わないのでどうか俺にチョコレートを」
「……そ、そんな欲しいの?」
「そりゃ、みおの一ヵ月ごしのバレンタインだし」
「そ、そーゆーのじゃないってば! これはみおが買いすぎて余ってただけなの!」
 またしても一人称が変わってるが、言うとまた俺の頬が大変なことになるので黙っておこう。
「と、とにかく。……はい、ちょこ。あげる」
 綺麗にラッピングされた包みを受け取る。なんかこれだけで生きてた甲斐があったような。
「……あ、あのさ。まじくても文句言うなよ?」
「え? あれ、これ手作り……?」
「な、なんだよ。いいじゃんか」
「や、さっき買いすぎで余ってるって」
 ややあって、みおの顔が音を立てて赤くなった。
「ち、ちがーの! 間違えただけなの! 市販品だけど、まずいって有名なとこで買ったから! ホントに!」
 無茶ないいわけだなあ、と思いながら改めて受け取った包みを見る。確かに綺麗にラッピングされているが、何箇所かに折り目がついていた。生まれつき不器用なコイツのことだ、何度も失敗したのだろう。
 ラッピングでそれなのだから、中身は推して知るべし、か。不器用ながら一生懸命……ええい、畜生。
「う、うー……にやにやすんな、ばか!」
「嬉しいと人間はニヤニヤしちまうもんなんだ。諦めろ」
「う、うぐぐ……うー!!!」
「だから、頬を引っ張るのはやめてくれと何度言ったか」
「うるさい! みおの勝手だもん!」
 もう全力で顔を赤くさせながら、俺の頬を引っ張り続けるみおだった。

拍手[18回]

【ツンデレが寝ぼけて男の布団に潜り込んできたら】

2010年02月10日
 みおが遊びに来たので遊んでやったら夜になった。
「帰るのもめんどくせーし、泊めてくれよ。な?」
「俺の超絶いやらし技に耐えれるなら泊めてやろう」
「……折るぞ」
「絶対確実に何もいたしませんので、どうか泊まっていってください」
 僕のバナナンを見ながら言われたら、へりくだるしか術はありません。
「最初っからそー言やいいのに……んじゃ、オレ風呂入ってくんな」
 部屋から出て行くみおに続いて、俺も出て行く。不審げな様子で俺を見るみおと一緒に風呂場に入ったら、蹴り飛ばされた。
「馬鹿な!?」
「馬鹿はオメーだ、馬鹿。ぜってー覗くなよ。だからって一緒に入るのもナシだぞ。とにかくこの区域から出てけ」
「俺の行動が読まれている」
「うっせーばーかばーかばーか。いーから出てけ」
 俺を追い出し、みおは一人で風呂に入りやがった。中から鼻歌とか聞こえてきやがる。
「覗きたいなあ!」
『でっけー声で恥ずかしいこと叫ぶな、馬鹿!』
 中からくぐもった叫び声が聞こえてきた。

 廊下で待ってても寒いだけなので、部屋に戻ってだらだらテレビ見てたら、みおが戻ってきた。
「ふぃー……いー湯だったぞ」
 髪をタオルで乱暴にがしがし拭き、そのタオルを俺に投げつけた。
「それ、洗濯しといてくれよな」
「乙女の要素がないぞ、娘さん」
「うっせーなあ……知らねーよ。ほれ、早く風呂入って来い」
「分かった。みおの残り湯に浸かってくる」
「いらねーこと言うなッ、馬鹿ッ!」
 尻を蹴飛ばされた。痛いからみおの残り湯で癒やすとしよう。

「あがったぞー」
 ひとっ風呂浴びて戻って来ると、みおの奴は既に寝息を立てていた。俺の布団に寝転がり、刻々と涎を枕に染み込ませている。
「だらしねえなあ……。さて、どこで寝ようか」
 俺の布団はみおに取られてしまったし……仕方ない、予備の布団で寝るか。
 隣の部屋から布団を取ってきて、自室に敷き、電気を消す。おやすみなさい。

「ん……」
 夜、ふと目を覚ますと、隣から気配がする。みおの奴が起きたか?
「……むー」
 果たして、みおはむっくら上体を起こし、一度大きくアクビをすると、部屋から出ていった。便所か。
 ほどなく、戻ってきたみおは普通に俺の寝床に入ってきてえええええ!?
 思わず声を上げそうになり、必死で口を押さえる。やばいやばいやばい。何考えてんだコイツ。いくら女らしくないとはいえ、一応は女だろ。
「ん、んにゃー……」
 こんな時に限って変な寝息立てるし! なんだよ、んにゃーって! 猫気取りかコイツ! ちらちら見える八重歯が可愛くてああもう!
「……んぎゅ」
 んぎゅ、とか言いながら、みおが抱きついてきた。体が凍りつく。
「……ん、んぅー、……ん」
 ごそごそと身体をよじらせ、やがて落ち着いたポジションを見つけたのか、俺の肩に口を寄せ、すやすや寝やがった。
 一方こちらは全くと言っていいほど落ち着きません。なんか身体の半分が柔らかいしいー匂いするし口元がむにむにしてるの見るの楽しいしよく見たらみおの奴可愛いし! 嗚呼!
 結局眠れたのは、空が白み始めた頃でした。

「……ん、んぁ……ん~ッ! ……ふう。あー、よく寝……ッッッ!!!」
 (なっ……なんで別府がオレの横で寝てんだ!?)
 (お、落ち着け、オレ。……えーと、そうだ! 素数を数えんだ! 1、2、3、5……落ち着かねー! 使えねーぞ神父!)
 (とっ、とにかくだ。ゆっくり、ゆっくり離れたら、気づかれないで離れられるんじゃねーか?)
 (……って、別府の野郎、オレをむぎゅーって抱っこしてやがる! 離れらんねー!)
 (……ん? つーか、オレも抱きついてる、別府に抱きついてる! うわうわ、うわうわうわ!)
 (……しかし、ぐっすり寝てんなー。……なんでオレが隣で寝てんのに、しかも抱きついてんのに、こんなぐっすり寝てんだ? ……オレばっかドキドキして、馬鹿みてーじゃんか)
 (……もーちょっとだけ抱きついたりしても、いーよな? 寝てるし、気づかねーよな?)
 (と、とりゃ♪)
「……んー?」
「!!!!!」
 (や、ヤバイヤバイヤバイ! なんか言った! 疑問系! 起きた? 起きた?)
「……ぐ、ぐーぐー」
 (……ふ、ふー。だいじょぶだったか。焦らせやがって)
 (焦らせた罰だ。もーちょっと抱きついてやる。とやっ♪)
「んぐっ……ぐ、ぐーぐー」
 (んー♪ 気持ちいー♪ すりすりサイコー。ついでにはむはむしてやれ。はむはむ、はむはむ)
「ぐぅぐぅぐぅ……ッ!」
 (むーむー♪)
「ぐーぐー! あーもう、ぐーぐー!」
 (むーむー……む? ……喋った?)
「……べ、別府? 起きてんのか?」
「いいえ」
「そ、そっか。……んなわけねーッ!!!」
 (起きてたすげー起きてた超絶起きてた別府の野郎起きてたオレがはむはむしてるの全部知られてたッ!!!)
「お、お前なあ! 起きてんならとっととなんか言えよッ!」
「いやはや、その、そうしたいのは山々でしたが、何やら抱きつかれててどうしたものかと思ってたら、すりすりされまして、気持ちよくて! 気持ちよくて!」
「う、あ、あ……」
「なんと言いますか、こう、結婚してえなあと思う程度には幸せでした」
「も、もう喋んな! いーか、ぜってー誰にも言うなよ! 約束だかんなッ!」
「…………。分かった、約束だ!」
「お前ぜってー言う気だろ!?」
「…………。言わないよ?」
「嘘だ嘘だぜってー言うぞコイツ!? オレのイメージがた崩れだー! うわあああん!」
「…………」
「無言で頭を撫でんなあッ!」
 (あーもうっ! 撫でられて嬉しいのがムカツクムカツクムカツク! からパンチ!)
「痛え。殴るな」
「うっせーばーかばーかばーか!」
 照れ隠しで一方的に殴られる別府に、ちょっと申し訳なく思った。殴るけど。

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