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2025年05月02日
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【ばくだんいわちなみん】
2010年03月11日
いつものように登校すると、俺の机の上にでかい岩があった。回れ右して、廊下へ。
「……逃しません」
机の上にあった物体が、ごろごろ転がってこっちに向かってきた。見ないようにしながら元来た道を走り、下駄箱へ。
「……帰ってはダメです。とうっ」
「げふぁ!?」
靴を履き替えていると、後ろから全力タックルを腰に喰らう。
「痛い痛い痛い!? この若さで腰痛持ちになろうとは!」
あまりの痛さに、登校してきた生徒がたくさんいるのも解さず下駄箱で転がりまわる。
「……ちょっと楽しそう。……私も。……ごろごろ」
その隣で俺と一緒に転がる岩がひとつ。
「うわ、別府の奴また華丹路をコスプレさせてやがる」
「しかも一緒に転げさせるなんて……別府くん、鬼畜」
俺への罵詈雑言を並べる通行人たち。俺が被害者だと言うのに、誰一人俺の味方をしてくれない。
「……普段の行いが出るというものです」
したり顔の岩にでこぴんする。
「あぅっ」
「こんなところで転がってるとみんなの邪魔だから、こっち来なさい」
「……おでこをひりひりさせ、あまつさえ転がされるとは……タカシは鬼です」
なんか言ってる岩をごろごろ転がして、誰もいない空き教室へ。
「で、この扮装はなんですか、華丹路ちなみ」
「……ばくだんいわ。……攻撃すると、爆発します。どかーん」
「そういうことを聞いているのではない。学校で、俺の机の上にいて、あまつさえ俺に攻撃を加えた理由を聞いているのだ」
「……ひょっとして、怒ってます?」
「怒りのあまりスーパー別府になりそうだ」
「……タカシが怒ると、実家がスーパーになると。……変な家」
そういう意味ではない。
「とにかく、脱げ」
ちなみの顔が赤くなった。
「……タカシは私の裸を見たくて見たくて仕方がないと言う。……やれやれ、タカシはエッチでエッチで困る」
「おまえの貧相な裸を見たいなんて一言もいってない」
「……貧乳フェチが、何を」
思わぬ反撃にうろたえる。
「ええと! とにかく、学生は学生らしく制服着ような。学生が岩なんて聞いたことないし」
「……じゃ、爆発して岩を分離します。……死ぬ可能性が極めて高いので、頑張って生き残ってください」
「え」
「……5、4、3、2」
なんかカウントダウンが始まった。隠れるところ、隠れるところ!
「……1」
右往左往している間にカウントが1に! 間に合わない! このままでは死ぬ!
「……どかーん」
ものすごくやる気のない声とは裏腹な爆発が俺のすぐ目の前で起きて意識途絶というか気絶。
「……ふぅ、分離成功。……おや、人が一生懸命分離したというのに、タカシときたら気持ち良さそうに寝てます」
「…………」(気絶中)
「……音と光だけの、殺傷力ゼロの爆発だったんですけど……そんなので気絶するとは、さすがはタカシ。超ヘタレです」
「…………」(やっぱり気絶中)
「……つん、つんつん」
「…………」(頬をつつかれても気絶中)
「……完全に気絶してます、ね。……空き教室なうえ、もう授業が始まってるので、周囲に人はいません」
「……ん、んう……」
うっすら目を開けると、ちなみが俺を膝枕して、ものすごく周りを見ていた。なに? 殺されるの?
「……ちゅ、ちゅーのチャンス、かも」
ある意味、殺されるよりもすごいことをされそうだ。しかし、それは望むところなのでよし! 気絶続行!
「……き、気絶してます。だいじょぶ。気づいてないから、だいじょぶ。……じゃ、じゃあ」
ちなみの顔が近づいてくる雰囲気を感じる。口をタコのように尖らせたいが、我慢我慢我慢。気絶。
そして、いよいよちなみの唇が俺の……
「……ちゅ」
「ほっぺかよ!」
「ふひゃっ!?」
てっきり口に来るものだと思い込んでいたので、ほっぺに感じた柔らかい感触を堪能する前に起き上がりつっこんだら、えらく可愛らしい悲鳴をあげられた。
「お、起きてたの……?」
ちなみの顔が見てて不憫になるくらい真っ赤になった。
「あ、しまった。……ええと、今現在起きているように見えますが、これは夢遊病みたいなもので、実際には気絶しているので引き続きちゅーをお願いします」
そう言って再びちなみの太ももに頭を預ける。
「……ちゅーはしません。しようともしてません。タカシがさっき聞いたのは、幻聴の可能性が極めて高いです。脳の病院へ行くべきです」
そう言いながら、ちなみは俺の頬をぎうぎう引っ張った。
「いていて、引っ張るない」
「……気絶してる人が喋るのはおかしいです。やっぱり脳の病院へ行くべきです。病院が嫌なら、今ここで私が診ましょうか?」
「ちゅーがお医者さんごっこに! 割と悪くない変更だ! よし、頼む!」
「……じゃ、ドリルをノコギリを探さないといけませんね」
「頭を開ける気ですね。死ぬゼ?」
「……死にたくないなら、タカシが気絶してる間に私が言ったこと全部忘れるコト」
「分かった。全部忘れた。『ちゅーのチャンス、かも』とか言ってない」
「……すっごく、覚えてます。忘れる気、ぜろです」
再び頬をぎうぎう引っ張られる。
「いてて。分かった、忘れる。忘れるから、もうしばらく膝枕してて」
「……しょ、しょうがないです。取引なので、我慢します。……まったく、タカシは甘えん坊で困ります」
なんて、優しく笑いながら俺の頭をなでるので、今が授業中なんてことも気にならなくなってきた。
気にならなくても、実際に授業は行われていたわけで。
「……全部タカシのせいです」
「いや、そもそもお前がばくだんいわにならなけりゃ済む話では」
鞄があるのに俺が教室にいないことを不審に思った教師と、物見高い生徒多数が連れ立って俺を探し回った結果、ちなみに膝枕されてる姿を目撃されまして。
すごく説教された後、教室に戻ったら戻ったでみんなに生暖かい目で見られまくるし。ああもう。
「……まったく、タカシに関わるといつもいつも酷い目に遭います。タカシはきっと呪われてます」
「着ぐるみの呪いにかかってる奴に言われたくない」
「……呪われてません。タカシは失礼です。失礼な人はほっぺを引っ張られます」
ぎうぎうほっぺを引っ張られた。そしてそれすらも燃料になるようで、生暖かい視線がさらに増してああもう勘弁。
「……逃しません」
机の上にあった物体が、ごろごろ転がってこっちに向かってきた。見ないようにしながら元来た道を走り、下駄箱へ。
「……帰ってはダメです。とうっ」
「げふぁ!?」
靴を履き替えていると、後ろから全力タックルを腰に喰らう。
「痛い痛い痛い!? この若さで腰痛持ちになろうとは!」
あまりの痛さに、登校してきた生徒がたくさんいるのも解さず下駄箱で転がりまわる。
「……ちょっと楽しそう。……私も。……ごろごろ」
その隣で俺と一緒に転がる岩がひとつ。
「うわ、別府の奴また華丹路をコスプレさせてやがる」
「しかも一緒に転げさせるなんて……別府くん、鬼畜」
俺への罵詈雑言を並べる通行人たち。俺が被害者だと言うのに、誰一人俺の味方をしてくれない。
「……普段の行いが出るというものです」
したり顔の岩にでこぴんする。
「あぅっ」
「こんなところで転がってるとみんなの邪魔だから、こっち来なさい」
「……おでこをひりひりさせ、あまつさえ転がされるとは……タカシは鬼です」
なんか言ってる岩をごろごろ転がして、誰もいない空き教室へ。
「で、この扮装はなんですか、華丹路ちなみ」
「……ばくだんいわ。……攻撃すると、爆発します。どかーん」
「そういうことを聞いているのではない。学校で、俺の机の上にいて、あまつさえ俺に攻撃を加えた理由を聞いているのだ」
「……ひょっとして、怒ってます?」
「怒りのあまりスーパー別府になりそうだ」
「……タカシが怒ると、実家がスーパーになると。……変な家」
そういう意味ではない。
「とにかく、脱げ」
ちなみの顔が赤くなった。
「……タカシは私の裸を見たくて見たくて仕方がないと言う。……やれやれ、タカシはエッチでエッチで困る」
「おまえの貧相な裸を見たいなんて一言もいってない」
「……貧乳フェチが、何を」
思わぬ反撃にうろたえる。
「ええと! とにかく、学生は学生らしく制服着ような。学生が岩なんて聞いたことないし」
「……じゃ、爆発して岩を分離します。……死ぬ可能性が極めて高いので、頑張って生き残ってください」
「え」
「……5、4、3、2」
なんかカウントダウンが始まった。隠れるところ、隠れるところ!
「……1」
右往左往している間にカウントが1に! 間に合わない! このままでは死ぬ!
「……どかーん」
ものすごくやる気のない声とは裏腹な爆発が俺のすぐ目の前で起きて意識途絶というか気絶。
「……ふぅ、分離成功。……おや、人が一生懸命分離したというのに、タカシときたら気持ち良さそうに寝てます」
「…………」(気絶中)
「……音と光だけの、殺傷力ゼロの爆発だったんですけど……そんなので気絶するとは、さすがはタカシ。超ヘタレです」
「…………」(やっぱり気絶中)
「……つん、つんつん」
「…………」(頬をつつかれても気絶中)
「……完全に気絶してます、ね。……空き教室なうえ、もう授業が始まってるので、周囲に人はいません」
「……ん、んう……」
うっすら目を開けると、ちなみが俺を膝枕して、ものすごく周りを見ていた。なに? 殺されるの?
「……ちゅ、ちゅーのチャンス、かも」
ある意味、殺されるよりもすごいことをされそうだ。しかし、それは望むところなのでよし! 気絶続行!
「……き、気絶してます。だいじょぶ。気づいてないから、だいじょぶ。……じゃ、じゃあ」
ちなみの顔が近づいてくる雰囲気を感じる。口をタコのように尖らせたいが、我慢我慢我慢。気絶。
そして、いよいよちなみの唇が俺の……
「……ちゅ」
「ほっぺかよ!」
「ふひゃっ!?」
てっきり口に来るものだと思い込んでいたので、ほっぺに感じた柔らかい感触を堪能する前に起き上がりつっこんだら、えらく可愛らしい悲鳴をあげられた。
「お、起きてたの……?」
ちなみの顔が見てて不憫になるくらい真っ赤になった。
「あ、しまった。……ええと、今現在起きているように見えますが、これは夢遊病みたいなもので、実際には気絶しているので引き続きちゅーをお願いします」
そう言って再びちなみの太ももに頭を預ける。
「……ちゅーはしません。しようともしてません。タカシがさっき聞いたのは、幻聴の可能性が極めて高いです。脳の病院へ行くべきです」
そう言いながら、ちなみは俺の頬をぎうぎう引っ張った。
「いていて、引っ張るない」
「……気絶してる人が喋るのはおかしいです。やっぱり脳の病院へ行くべきです。病院が嫌なら、今ここで私が診ましょうか?」
「ちゅーがお医者さんごっこに! 割と悪くない変更だ! よし、頼む!」
「……じゃ、ドリルをノコギリを探さないといけませんね」
「頭を開ける気ですね。死ぬゼ?」
「……死にたくないなら、タカシが気絶してる間に私が言ったこと全部忘れるコト」
「分かった。全部忘れた。『ちゅーのチャンス、かも』とか言ってない」
「……すっごく、覚えてます。忘れる気、ぜろです」
再び頬をぎうぎう引っ張られる。
「いてて。分かった、忘れる。忘れるから、もうしばらく膝枕してて」
「……しょ、しょうがないです。取引なので、我慢します。……まったく、タカシは甘えん坊で困ります」
なんて、優しく笑いながら俺の頭をなでるので、今が授業中なんてことも気にならなくなってきた。
気にならなくても、実際に授業は行われていたわけで。
「……全部タカシのせいです」
「いや、そもそもお前がばくだんいわにならなけりゃ済む話では」
鞄があるのに俺が教室にいないことを不審に思った教師と、物見高い生徒多数が連れ立って俺を探し回った結果、ちなみに膝枕されてる姿を目撃されまして。
すごく説教された後、教室に戻ったら戻ったでみんなに生暖かい目で見られまくるし。ああもう。
「……まったく、タカシに関わるといつもいつも酷い目に遭います。タカシはきっと呪われてます」
「着ぐるみの呪いにかかってる奴に言われたくない」
「……呪われてません。タカシは失礼です。失礼な人はほっぺを引っ張られます」
ぎうぎうほっぺを引っ張られた。そしてそれすらも燃料になるようで、生暖かい視線がさらに増してああもう勘弁。
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【"ちなみん"ならぬ"ちなまん"】
2010年03月10日
家に帰ると、なんか湯気たててる物体が。あ、こっち向いた。
「こんにちは」
まんじゅうに挨拶された。あ、いや、ちなみだ。まんじゅうの中心はくりぬかれており、そこからちなみが顔を覗かせている。
「……まんじゅうです。ちなみのまんじゅう、略してちなまんです。……おいしいと、大評判」
「そういうことでは、ないと思う」
ぺしぺしとちなみの頭にチョップする。
「……むぅ。チョップする人には、食べさせてあげませんよ?」
「別に食べたくないし、いい」
「……ダンボールは入ってませんよ?」
「時事ネタはすぐ風化するから危険ですよ、ちなみさん」
「……まぐまぐ、おいしい」
人がせっかく危機を知らせているのに、ちなみときたら自分の体をちぎって食べてる。
「……右っかわがあんこ、左っかわが肉。……一つで二つの味が楽しめます」
“すごい? 褒める?”と視線が訴えていたので、無視する。
「……タカシはあまり褒めてくれないので、つまらないです。……つまり、タカシはつまらない人間です。死んだほうがいいです。えいえい」
えいえいと言いながらちなみは俺の頬を引っ張った。そんなのでは死ねない。
「……ふぅ。……満足したので、死刑は中止します」
「近頃の死刑は気分次第で中止したりするのですね」
「うるさいです。……そんなのいいから、ちゃんと褒めるべきです。……褒めないと、結婚してあげませんよ?」
「嫁がまんじゅうなのはちょっと」
「……今明かされる新事実。実は、私は、……まんじゅうではないのです。ばばーん」
「知ってる。あと、効果音を口で言うな」
「…………」
不満そうな顔をされても。
「あーもー分かった。褒めてやる。……おほん。えっと、……ち、ちなみは可愛いなぁ」
「……わ、私を褒めるのでなく、まんじゅうを褒めるのです。……た、タカシの勘違いには、困ってしまいます」
珍しく照れた顔で、ちなみは俺の胸をぺちぺち叩いた。
「特に、貧乳な所が可愛い」
泣き怒りな顔で俺の顔をべしべし叩くちなみだった。
「こんにちは」
まんじゅうに挨拶された。あ、いや、ちなみだ。まんじゅうの中心はくりぬかれており、そこからちなみが顔を覗かせている。
「……まんじゅうです。ちなみのまんじゅう、略してちなまんです。……おいしいと、大評判」
「そういうことでは、ないと思う」
ぺしぺしとちなみの頭にチョップする。
「……むぅ。チョップする人には、食べさせてあげませんよ?」
「別に食べたくないし、いい」
「……ダンボールは入ってませんよ?」
「時事ネタはすぐ風化するから危険ですよ、ちなみさん」
「……まぐまぐ、おいしい」
人がせっかく危機を知らせているのに、ちなみときたら自分の体をちぎって食べてる。
「……右っかわがあんこ、左っかわが肉。……一つで二つの味が楽しめます」
“すごい? 褒める?”と視線が訴えていたので、無視する。
「……タカシはあまり褒めてくれないので、つまらないです。……つまり、タカシはつまらない人間です。死んだほうがいいです。えいえい」
えいえいと言いながらちなみは俺の頬を引っ張った。そんなのでは死ねない。
「……ふぅ。……満足したので、死刑は中止します」
「近頃の死刑は気分次第で中止したりするのですね」
「うるさいです。……そんなのいいから、ちゃんと褒めるべきです。……褒めないと、結婚してあげませんよ?」
「嫁がまんじゅうなのはちょっと」
「……今明かされる新事実。実は、私は、……まんじゅうではないのです。ばばーん」
「知ってる。あと、効果音を口で言うな」
「…………」
不満そうな顔をされても。
「あーもー分かった。褒めてやる。……おほん。えっと、……ち、ちなみは可愛いなぁ」
「……わ、私を褒めるのでなく、まんじゅうを褒めるのです。……た、タカシの勘違いには、困ってしまいます」
珍しく照れた顔で、ちなみは俺の胸をぺちぺち叩いた。
「特に、貧乳な所が可愛い」
泣き怒りな顔で俺の顔をべしべし叩くちなみだった。
【衆人環視の教室の中、ツンデレが寝ぼけて頭をすりつけてきました】
2010年03月07日
昼休みが終わった後の授業というのは、眠くて仕方がないものだ。それが英語の時間だと格別だ。
「……ぷー。……ぷー」
だからと言って寝ていい訳もないのに、早々に睡魔に降参してる隣のちなみのいびきがうるさい。あと、寝息が変。
まったく、人が必死に眠気をこらえてるというのに平和そうな顔して寝やがって……ほっぺつついてやれ。
「……うう、んー、……ぷー」
ダメだ、覚醒にまでは至らない。しっかし、弛緩しきった顔して……うあ、涎垂れてるじゃねえか。女の子の自覚ゼロだな。
「Mr.別府。隣のgirlを起こしてくださるかしら?」
先生の言葉に、慌てて前を向く。口調は丁寧だが、こめかみがひくついてる所を見るに、どうやら怒っているようで。
「ちなみ、起きろ。先生怒ってるぞ」
ちなみの肩を揺すって起こそうとするが、なかなか手強い。更に強く揺すると、かすかにちなみのまぶたが開いた。
「お、ようやっと起きたか。先生怒って……」
言葉が尻すぼむ。だって、ちなみの奴、何を考えてるのか知らないけど、俺を見上げたかと思ったら、ゆるゆるの顔のまま俺の胸に頭こすりつけるんですもの。
「あ、あの、あのの、ち、ちなみん? こ、こここ、この、これは、その?」
「……んう?」
んうじゃねえ。人語を使え。
「……んー」
いや、だから。んーじゃなくて。すりすりしないで。ここは学校ですよ……学校? そう、学校!
今さら気づいたかのように、いや今気づいたんだけど、ぐるり見渡すと人いっぱい! 60個くらいの目が俺たちを!
ちなみの寝言でゆるんだ心を締めなおし、激しくちなみの体を揺さぶる。
「ちちちなみ、起きろ! ここ学校! お前の部屋じゃない!」
「……むー」
「むーじゃなくて! いやすりすりでもなくて! ぎゅーでもなくて!」
「……む?」
すりすり&ぎゅーをした後、ちなみの焦点がゆっくりと定まり、そして、俺と目が合った。
「はぁ……やっと起きたか」
「……おっす。オラちなみ」
「これはご丁寧に。別府タカシと申します」
「……これはこれは、初めまして」
「10年来の友人です」
「……知ってる」
「じゃあ、ここが教室ってことも?」
「? ……っ!!??」
それは知らなかったようで、ゆっくり周囲を見渡した後、見てて可哀想になるくらいちなみは狼狽した。
「……ち、違う。これは違う。違うの。そう、違う。タカシは分かるよね?」
「寝ぼけて俺に抱きつき、ぐにゃんぐにゃんになってたとしか」
「~~~~~~~~っ!!」
ちなみから湯気が出た。
「あー……お弁当食べた後だから分かるけど、お昼寝はほどほどにね、Miss.ちなみ」
毒気を抜かれた先生が、それだけ言って黒板に向き直った。
「……うう、全部タカシのせいだ」
家に帰るなり俺の部屋にやってきたちなみが、寝ぼけ事件の責任を俺になすりつける。
「いやいやいや、俺はおまいを起こしただけ。すりすりしてきたお前に全責任はある」
「……な、ない。こう、タカシが私のすりすりをかわしてたら、こんな事態にはならなかったはず。やっぱり全部タカシのせいだ」
ちなみの すごい 責任転嫁
「いや……そもそも、すりすりしなけりゃ済む話じゃ」
「……だって、寝起きでタカシの顔見たら、ついしちゃうもん」
「あー……その、なんだ。恥ずかしい奴め」
思わず赤面しちゃいます。
「うう……惚れられてると勘違いされてる。なんたる屈辱、恐るべき自惚れ」
とか言いながらも、ちなみの顔も赤い。
「とにかく、今日みたいなことになったら困るから、以後すりすり禁止、禁止でーす」
手でバツを作ると、ちなみがこの世の終わりみたいな顔になった。
「そんなショックなことか?」
「……ぜ、全然。……べ、別にそんなのしなくても平気だもん。……そもそも、タカシにすりすりなんてしたくないし」
とか言いながらも、目に見えてどんどんへこんでいくちなみ。なんだか俺が悪いような気がしてきた。
「というのは冗談で、本当はすりすりしてもいいです。すりすり許可、許可でーす」
「……な、なんだ。残念なことこの上なし。……やれやれ、タカシはすりすりが好きで困る」
とか言いながら、ニッコニコの笑顔で早速俺に抱きつき、すりすりを開始するちなみでした。
「……ぷー。……ぷー」
だからと言って寝ていい訳もないのに、早々に睡魔に降参してる隣のちなみのいびきがうるさい。あと、寝息が変。
まったく、人が必死に眠気をこらえてるというのに平和そうな顔して寝やがって……ほっぺつついてやれ。
「……うう、んー、……ぷー」
ダメだ、覚醒にまでは至らない。しっかし、弛緩しきった顔して……うあ、涎垂れてるじゃねえか。女の子の自覚ゼロだな。
「Mr.別府。隣のgirlを起こしてくださるかしら?」
先生の言葉に、慌てて前を向く。口調は丁寧だが、こめかみがひくついてる所を見るに、どうやら怒っているようで。
「ちなみ、起きろ。先生怒ってるぞ」
ちなみの肩を揺すって起こそうとするが、なかなか手強い。更に強く揺すると、かすかにちなみのまぶたが開いた。
「お、ようやっと起きたか。先生怒って……」
言葉が尻すぼむ。だって、ちなみの奴、何を考えてるのか知らないけど、俺を見上げたかと思ったら、ゆるゆるの顔のまま俺の胸に頭こすりつけるんですもの。
「あ、あの、あのの、ち、ちなみん? こ、こここ、この、これは、その?」
「……んう?」
んうじゃねえ。人語を使え。
「……んー」
いや、だから。んーじゃなくて。すりすりしないで。ここは学校ですよ……学校? そう、学校!
今さら気づいたかのように、いや今気づいたんだけど、ぐるり見渡すと人いっぱい! 60個くらいの目が俺たちを!
ちなみの寝言でゆるんだ心を締めなおし、激しくちなみの体を揺さぶる。
「ちちちなみ、起きろ! ここ学校! お前の部屋じゃない!」
「……むー」
「むーじゃなくて! いやすりすりでもなくて! ぎゅーでもなくて!」
「……む?」
すりすり&ぎゅーをした後、ちなみの焦点がゆっくりと定まり、そして、俺と目が合った。
「はぁ……やっと起きたか」
「……おっす。オラちなみ」
「これはご丁寧に。別府タカシと申します」
「……これはこれは、初めまして」
「10年来の友人です」
「……知ってる」
「じゃあ、ここが教室ってことも?」
「? ……っ!!??」
それは知らなかったようで、ゆっくり周囲を見渡した後、見てて可哀想になるくらいちなみは狼狽した。
「……ち、違う。これは違う。違うの。そう、違う。タカシは分かるよね?」
「寝ぼけて俺に抱きつき、ぐにゃんぐにゃんになってたとしか」
「~~~~~~~~っ!!」
ちなみから湯気が出た。
「あー……お弁当食べた後だから分かるけど、お昼寝はほどほどにね、Miss.ちなみ」
毒気を抜かれた先生が、それだけ言って黒板に向き直った。
「……うう、全部タカシのせいだ」
家に帰るなり俺の部屋にやってきたちなみが、寝ぼけ事件の責任を俺になすりつける。
「いやいやいや、俺はおまいを起こしただけ。すりすりしてきたお前に全責任はある」
「……な、ない。こう、タカシが私のすりすりをかわしてたら、こんな事態にはならなかったはず。やっぱり全部タカシのせいだ」
ちなみの すごい 責任転嫁
「いや……そもそも、すりすりしなけりゃ済む話じゃ」
「……だって、寝起きでタカシの顔見たら、ついしちゃうもん」
「あー……その、なんだ。恥ずかしい奴め」
思わず赤面しちゃいます。
「うう……惚れられてると勘違いされてる。なんたる屈辱、恐るべき自惚れ」
とか言いながらも、ちなみの顔も赤い。
「とにかく、今日みたいなことになったら困るから、以後すりすり禁止、禁止でーす」
手でバツを作ると、ちなみがこの世の終わりみたいな顔になった。
「そんなショックなことか?」
「……ぜ、全然。……べ、別にそんなのしなくても平気だもん。……そもそも、タカシにすりすりなんてしたくないし」
とか言いながらも、目に見えてどんどんへこんでいくちなみ。なんだか俺が悪いような気がしてきた。
「というのは冗談で、本当はすりすりしてもいいです。すりすり許可、許可でーす」
「……な、なんだ。残念なことこの上なし。……やれやれ、タカシはすりすりが好きで困る」
とか言いながら、ニッコニコの笑顔で早速俺に抱きつき、すりすりを開始するちなみでした。
【ツンデレは惚れ薬を作ろうとしているようです】
2010年03月06日
……タカシのやろう、いつもいつも私のことを小さいとか、着ぐるみマニアとか、貧乳王つるぺたんだとか言う。
許し難い発言なので、ここはいっちょう惚れ薬で奴隷化しよう。うん、決定。……別に、好きになって欲しいとかじゃなくて、奴隷にしたいだけ。……本当に。
「……というわけで、研究の末やっと完成したこれを飲んでみて」
タカシに薬の詰まったビンを渡すが、ノーという感じの手をされた。
「ラベルに何も書かれてない、極めて怪しい薬を飲む趣味は俺にはないぞ、ちなみ」
「……これを飲むと、女の子がどんどん寄ってくる」
「怪しすぎだっての。もーちょっと頭使え」
興味の欠片も見当たらないのか、タカシは半分呆れながら私に言った。
「……胸がつるぺたい子がどんどん寄ってくる」
「何をしている、早くその薬を寄こせ! 金ならいくらでも出す!」
自分で言っておいてなんだが、こんなので騙されるのはどうかと思う。
それはそれとして、薬ビンを渡すと、タカシは何のためらいもなく一気に飲み干した。
「げふー。……とてもまずい! それはもう泣きそうなほど!」
「……ぎゅうにゅう、もしくはヤモリ、かと」
「嫌な響きが俺の耳朶を叩く! たぶんきっと恐らく確実にまずさの原因は後者! ……ん、ぐ?」
身体がぐらりと揺らぎ、タカシは片膝をついた。側に駆け寄り、タカシの顔を覗き込む。
「……だいじょぶ?」
「ん、あ、ああ。なんか急に身体がぐらぐらした。ぐりとぐらぐら、なんちて。うひゃひゃ」
……あれ、おかしいな。もう私のことが好きになってるはずなのに、タカシってば全然普通だ。……効いてないのかな?
なんて思ってたら、タカシは急に私の頭をなでだした。……また私が小さいって馬鹿にするつもりだ。ムカムカする。……ちょっと、嬉しいけど。
「心配してくれたのか? なんだかんだ言って、やっぱちなみは優しいな。ちなみのそーゆーとこ、好きだな」
……いま、なんと?
「わ、わんすあげいん」
「ひぃ、英語! 理解不能!」
「も、もっかい、もっかい言って」
「えーと……ひぃ、英」
「そっちじゃない」
「わざとだ。不愉快だろう?」
タカシのほっぺをつねる。
「冗談です。えっと、ちなみは優しいな、そういう所が好きだな」
……成功。普通に見えたけど、私にめろめろになってる。これでタカシを奴隷に……。ふふふふふ。
「ちなみが声も出さずに含み笑い! ちょっと気持ち悪い」
……本当に効いてるのかちょっと心配。一応、ちゃんと聞いてみよう。
「……タカシ、私のこと、……す、すき?」
「好きだよ」
間髪入れずに答えたよ、この人。……ふふ、効果はバツグンだ。
「ちなみは?」
「へ?」
「ちなみは俺のこと好き?」
なんてこと聞くのだろう、この人は。……まあ、薬効いてるし、適当に答えればいっか。
「……別に」
「ショックのあまり今すぐ舌を噛み千切りそうだ」
真顔で言った!? 薬が効きすぎてる? ……うう、我慢して嘘でも言わないと。
「う、嘘。……ホントは、タカシのこと、す……すき」
……へ、平常心、平常心。これは、仕方なく言っただけ。私の本心は、また別。
「やあ、真っ赤ですね」
「っ! ……き、気のせい」
「なんだ。こーいつう」
タカシが私のおでこをちょこんと突付く。
……ひょっとして、これ、私もやり返さないといけないのだろうか。……なんだか、すごく恥ずかしい。
「ちなみが返してくれない。悲しさのあまり今すぐ舌を噛み千切り、さらに唇まで引き千切りそうだ」
自殺の方法が酷くなってる!? う、うう……仕方ない、やろう。
「こ、こ……こーいつう」
「復讐とばかりに、ちなみが俺の目を狙う」
「……狙ってない。……狙ったのは、ほっぺ」
おでこを狙いたかったけど、ちょっと背が足りないので、タカシの頬を指でぷにぷにする。ぷにぷにして気持ちいいけど、とんでもなく恥ずかしい。
「じゃあ、お返しー」
タカシも私のほっぺを指でぷにっと押した。……お互いが指で互いの頬を押し合うって、どうなんだろ。
「いかん。途方もなく幸せだ」
タカシの顔がだらしなく緩む。油断しきってる。けど、見てるだけで幸せになりそうな顔だ。
「……私も」
……いやいやいや。違う。私も、じゃない。別に私は幸せとかじゃないし。タカシにほっぺぷにぷにされて、憤懣やるかたないし。
「ちなみー、ほっぺぷにー」(ぷにっ)
「……うぬれー、必殺、ぷにぷに返しー」(ぷにっ)
「ぬわー、なればさらに、ぷにぷに返し返しー」(ぷにっ)
「……ぬぬー」
……いや、だから。ぬぬーじゃなくて。しっかりしろ、私。これじゃただのバカップルだ。タカシを奴隷にするために惚れ薬を飲ましたんだから、目的を果たさないと。
「……た、タカシ、今から私の言う事を聞きなさい」
「可愛いちなみの頼みなら、なんだって言う事きいちゃうぞっ」(ぷにっ)
「……ほ、頬をつっつくのはもういいから」
「断る!」
「なんでも言う事きくと言った1秒後に断られた……」
やはり薬は効いていないのだろうか。しかし、私のことはすっごく好きになってるみたいなのに……うーん。
「まぁまぁ、とにかく話してみれ」
「……分かった。えっと、私の奴隷に……なって?」
……ストレートすぎかな? まぁ、薬効いてるし、だいじょぶだよね。
「肉奴隷とな! よし、ちなみ専用の性欲処理用奴隷として、頑張ろう!」
「……激しくノー。普通の奴隷」
「嫌です」
……普通に断られた。……タカシ奴隷化計画、失敗。……しょうがない、中和剤で惚れ薬の効果消そう。
「……タカシ、これ飲んで」
「愛液?」
タカシの頬をぎうぎう引っ張る。なんだってこの人はこんなえっちなのだろう。
「……これ飲んだら、元に戻るから」
「元に? 一体何の話でござろうか、この侍に話してみてはどうかな」
「……急に侍になったことに言及しないけど、とにかく、飲めば分かるから」
「いやしかし何の薬は分からないのにもがもがもが」
うにゃうにゃ言ってるタカシを押さえつけて無理矢理飲ませる。……これでお終い。
「げふー。……とてもまずい! それはもう泣きそうなほど!」
「……ぎゅうにゅう、もしくはイモリ、かと」
「絶対まずさの原因は後者! ……ん、ぐ?」
身体がぐらりと揺らぎ、タカシは片膝をついた。側に駆け寄り、タカシの顔を覗き込む。
「……だいじょぶ? 戻った?」
「あ? あー……うん」
そう言いながら、タカシは私を見て顔を赤らめた。……も、もしかして。
「……あ、あの、……覚えてる?」
「あー……うん。全部」
そりゃそうだ、惚れ薬の効果をなくしたからって、記憶まで改ざんできるはずがないもんね。
「ちなみ、見てて気の毒なほど顔が赤いですが」
「……う、うるさい。タカシだって、顔まっかっか」
「俺は哀れな被害者だからいいんだよ。何がつるぺたが寄ってくる薬だ、寄って来たのは……まぁ、間違ってないけど」
「……む、暗に私の胸のボリュームが悲しい事を指摘する発言。許せない、えいえい」
タカシの頬をぎうぎう引っ張る。
「いていて、どうせやるなら頬のつっつきあいの方が楽しいかと」
「……そ、その記憶、封印しなさい」
「断る! どうしても封印して欲しくば、俺と頬のつっつきあいをするのだなっ!」(ぷにっ)
「……やるなんて言ってないのに、タカシは私の頬をぷにぷにする。……タカシはちっとも私の話をきかない」
奴隷化計画は失敗したけど、……まぁ、楽しかった、かな。
タカシの頬をぷにぷにしながら、そう思った。
許し難い発言なので、ここはいっちょう惚れ薬で奴隷化しよう。うん、決定。……別に、好きになって欲しいとかじゃなくて、奴隷にしたいだけ。……本当に。
「……というわけで、研究の末やっと完成したこれを飲んでみて」
タカシに薬の詰まったビンを渡すが、ノーという感じの手をされた。
「ラベルに何も書かれてない、極めて怪しい薬を飲む趣味は俺にはないぞ、ちなみ」
「……これを飲むと、女の子がどんどん寄ってくる」
「怪しすぎだっての。もーちょっと頭使え」
興味の欠片も見当たらないのか、タカシは半分呆れながら私に言った。
「……胸がつるぺたい子がどんどん寄ってくる」
「何をしている、早くその薬を寄こせ! 金ならいくらでも出す!」
自分で言っておいてなんだが、こんなので騙されるのはどうかと思う。
それはそれとして、薬ビンを渡すと、タカシは何のためらいもなく一気に飲み干した。
「げふー。……とてもまずい! それはもう泣きそうなほど!」
「……ぎゅうにゅう、もしくはヤモリ、かと」
「嫌な響きが俺の耳朶を叩く! たぶんきっと恐らく確実にまずさの原因は後者! ……ん、ぐ?」
身体がぐらりと揺らぎ、タカシは片膝をついた。側に駆け寄り、タカシの顔を覗き込む。
「……だいじょぶ?」
「ん、あ、ああ。なんか急に身体がぐらぐらした。ぐりとぐらぐら、なんちて。うひゃひゃ」
……あれ、おかしいな。もう私のことが好きになってるはずなのに、タカシってば全然普通だ。……効いてないのかな?
なんて思ってたら、タカシは急に私の頭をなでだした。……また私が小さいって馬鹿にするつもりだ。ムカムカする。……ちょっと、嬉しいけど。
「心配してくれたのか? なんだかんだ言って、やっぱちなみは優しいな。ちなみのそーゆーとこ、好きだな」
……いま、なんと?
「わ、わんすあげいん」
「ひぃ、英語! 理解不能!」
「も、もっかい、もっかい言って」
「えーと……ひぃ、英」
「そっちじゃない」
「わざとだ。不愉快だろう?」
タカシのほっぺをつねる。
「冗談です。えっと、ちなみは優しいな、そういう所が好きだな」
……成功。普通に見えたけど、私にめろめろになってる。これでタカシを奴隷に……。ふふふふふ。
「ちなみが声も出さずに含み笑い! ちょっと気持ち悪い」
……本当に効いてるのかちょっと心配。一応、ちゃんと聞いてみよう。
「……タカシ、私のこと、……す、すき?」
「好きだよ」
間髪入れずに答えたよ、この人。……ふふ、効果はバツグンだ。
「ちなみは?」
「へ?」
「ちなみは俺のこと好き?」
なんてこと聞くのだろう、この人は。……まあ、薬効いてるし、適当に答えればいっか。
「……別に」
「ショックのあまり今すぐ舌を噛み千切りそうだ」
真顔で言った!? 薬が効きすぎてる? ……うう、我慢して嘘でも言わないと。
「う、嘘。……ホントは、タカシのこと、す……すき」
……へ、平常心、平常心。これは、仕方なく言っただけ。私の本心は、また別。
「やあ、真っ赤ですね」
「っ! ……き、気のせい」
「なんだ。こーいつう」
タカシが私のおでこをちょこんと突付く。
……ひょっとして、これ、私もやり返さないといけないのだろうか。……なんだか、すごく恥ずかしい。
「ちなみが返してくれない。悲しさのあまり今すぐ舌を噛み千切り、さらに唇まで引き千切りそうだ」
自殺の方法が酷くなってる!? う、うう……仕方ない、やろう。
「こ、こ……こーいつう」
「復讐とばかりに、ちなみが俺の目を狙う」
「……狙ってない。……狙ったのは、ほっぺ」
おでこを狙いたかったけど、ちょっと背が足りないので、タカシの頬を指でぷにぷにする。ぷにぷにして気持ちいいけど、とんでもなく恥ずかしい。
「じゃあ、お返しー」
タカシも私のほっぺを指でぷにっと押した。……お互いが指で互いの頬を押し合うって、どうなんだろ。
「いかん。途方もなく幸せだ」
タカシの顔がだらしなく緩む。油断しきってる。けど、見てるだけで幸せになりそうな顔だ。
「……私も」
……いやいやいや。違う。私も、じゃない。別に私は幸せとかじゃないし。タカシにほっぺぷにぷにされて、憤懣やるかたないし。
「ちなみー、ほっぺぷにー」(ぷにっ)
「……うぬれー、必殺、ぷにぷに返しー」(ぷにっ)
「ぬわー、なればさらに、ぷにぷに返し返しー」(ぷにっ)
「……ぬぬー」
……いや、だから。ぬぬーじゃなくて。しっかりしろ、私。これじゃただのバカップルだ。タカシを奴隷にするために惚れ薬を飲ましたんだから、目的を果たさないと。
「……た、タカシ、今から私の言う事を聞きなさい」
「可愛いちなみの頼みなら、なんだって言う事きいちゃうぞっ」(ぷにっ)
「……ほ、頬をつっつくのはもういいから」
「断る!」
「なんでも言う事きくと言った1秒後に断られた……」
やはり薬は効いていないのだろうか。しかし、私のことはすっごく好きになってるみたいなのに……うーん。
「まぁまぁ、とにかく話してみれ」
「……分かった。えっと、私の奴隷に……なって?」
……ストレートすぎかな? まぁ、薬効いてるし、だいじょぶだよね。
「肉奴隷とな! よし、ちなみ専用の性欲処理用奴隷として、頑張ろう!」
「……激しくノー。普通の奴隷」
「嫌です」
……普通に断られた。……タカシ奴隷化計画、失敗。……しょうがない、中和剤で惚れ薬の効果消そう。
「……タカシ、これ飲んで」
「愛液?」
タカシの頬をぎうぎう引っ張る。なんだってこの人はこんなえっちなのだろう。
「……これ飲んだら、元に戻るから」
「元に? 一体何の話でござろうか、この侍に話してみてはどうかな」
「……急に侍になったことに言及しないけど、とにかく、飲めば分かるから」
「いやしかし何の薬は分からないのにもがもがもが」
うにゃうにゃ言ってるタカシを押さえつけて無理矢理飲ませる。……これでお終い。
「げふー。……とてもまずい! それはもう泣きそうなほど!」
「……ぎゅうにゅう、もしくはイモリ、かと」
「絶対まずさの原因は後者! ……ん、ぐ?」
身体がぐらりと揺らぎ、タカシは片膝をついた。側に駆け寄り、タカシの顔を覗き込む。
「……だいじょぶ? 戻った?」
「あ? あー……うん」
そう言いながら、タカシは私を見て顔を赤らめた。……も、もしかして。
「……あ、あの、……覚えてる?」
「あー……うん。全部」
そりゃそうだ、惚れ薬の効果をなくしたからって、記憶まで改ざんできるはずがないもんね。
「ちなみ、見てて気の毒なほど顔が赤いですが」
「……う、うるさい。タカシだって、顔まっかっか」
「俺は哀れな被害者だからいいんだよ。何がつるぺたが寄ってくる薬だ、寄って来たのは……まぁ、間違ってないけど」
「……む、暗に私の胸のボリュームが悲しい事を指摘する発言。許せない、えいえい」
タカシの頬をぎうぎう引っ張る。
「いていて、どうせやるなら頬のつっつきあいの方が楽しいかと」
「……そ、その記憶、封印しなさい」
「断る! どうしても封印して欲しくば、俺と頬のつっつきあいをするのだなっ!」(ぷにっ)
「……やるなんて言ってないのに、タカシは私の頬をぷにぷにする。……タカシはちっとも私の話をきかない」
奴隷化計画は失敗したけど、……まぁ、楽しかった、かな。
タカシの頬をぷにぷにしながら、そう思った。
【牛乳と言えないツンデレ】
2010年03月05日
休み時間、ちゅーちゅー牛乳を飲んでたら、ちなみがこっちを見てるのに気づいた。
「なんだ、飲みたいのか? 白くてどろっとしててノドにこびりつく獣臭い液体を飲みたいのか?」
「……タカシはいつ何時でもエッチだ」
「俺は牛乳の話をしているのだけど」
「……私もにゅうにゅうの話をしている」
……え?
「ちなみ、今なんて?」
そう聞いた瞬間、ちなみはしまったと言う顔をした。
「……別に、何も言ってない。とうとうタカシは幻聴が聞こえる域に達した。……さよなら、タカシ」
「人をヤバイ人扱いするない。そうでなくて、なんか、……にゅうにゅう、とか言ってなかった?」
ちなみの体がびくりと震えた。
「あり? ひょっとしてここにおわすちなみさんは、牛乳と言えないのかにゃー? 体だけでなく、舌まで子供なのかにゃー?」
「……まったく、タカシは何を言っているのか。……体も舌も大人に決まっている。……そう遠くない未来に、育つに決まっている」
そう言いながら、ちなみは自分のぺたぺたの胸をぺたぺた触った。
「じゃ、牛乳って言って。さんはい」
「…………」
ちなみは机の中から文庫本を取り出し、読み始めてしまった。
「さんはい」
本を取り上げ、もう一度繰り返す。
「……にゅ」
「にゅ?」
「うるさい。……ちょっと、向こうむいて、耳塞ぐ」
ちなみは俺の頭を持ち、ぐるりと180度回転させた。
「首がぐるりと! エクソシスト!」
「……体も合わせて回転してるので、エクソシストならず。……首が取れなくて非常に残念」
「非常に残念とか言うな」
「……とにかく、耳塞ぐ。……じゃないと、……アレ、言わない」
「……ふむ、分かった」
と言ったけど、当然塞ぐはずがない。耳を塞ぐフリをして、少しだけ耳と手の間に空間を作る。そうしていたら、ちなみの小さな声が届いてきた。
「……にゅ、にゅうにゅう。……にゅうにゅう。……むぅ、言えない」
分かっていたことだけど、やはりちなみは牛乳と言えずにゅうにゅうと言ってしまうようだ。うむ、可愛すぎる。
「……にゅうにゅう。……に、にうにう」
惜しい! もうちょっとで牛乳だ! 最初の“に”を“ぎ”に変えろ! というか、何が難しいのか皆目検討がつかないのですが。
「……にゅうにゅう。……言えない。……いや、私は間違ってない。……にゅうにゅうの方が間違ってる」
ちなみの思考が変な方向に行きだした。
「……そもそも、言葉なんてその時々によって変わる物。……だから、にゅうにゅうと言ったからって、変なはずがない」
「いや、それはおかしい。牛乳は牛乳で、にゅうにゅうとはならないと思う」
「…………」
おや? 急にちなみが黙ったぞ。どうしたのだろうか。
なんて思ってたら、ぐるりと回転させられた。
「……聞いてた?」
なぜか顔を真っ赤にしながら俺に問いかけるちなみ。
「全然」
「……じゃあ、なんでさっき受け答えしたの」
「……? ……あ、ひょっとして、俺、……さっき喋った?」
ちなみはこっくり頷いた。
「いやはや、自分では心の中で思ってたつもりだったけど。うむ、そんなこともあるよね」
ぽんとちなみの頭に手を置き、全てをうやむやにする。
「……よくも聞いてたな」
うやむやは失敗したようだ。俺の手の下で顔を真っ赤にし、ちなみは半泣きでぷるぷる震えた。
「あ、いや、その、……にゅうにゅうに相談だ!」
「……にゅうにゅう言うな、ばか。……許さない」
にゅうにゅう言う娘っ子に追い掛け回された。捕まった。
「あー、授業を始め……うおっ、別府が縄でぐるぐる巻きで、いわゆるミノムシのような状態で窓から干されてる!」
「いじめだぁ! 先生、助けてぇ!」
「ま、どうせお前が余計なことしたんだろう、そこで授業受けてろ。あ、落ちても死ぬなよ。俺のせいになるから」
この学校はもうちょっと色々なことを気にした方がいいと思う。あと、俺見てにやにやしてるちなみがムカツク。
「なんだ、飲みたいのか? 白くてどろっとしててノドにこびりつく獣臭い液体を飲みたいのか?」
「……タカシはいつ何時でもエッチだ」
「俺は牛乳の話をしているのだけど」
「……私もにゅうにゅうの話をしている」
……え?
「ちなみ、今なんて?」
そう聞いた瞬間、ちなみはしまったと言う顔をした。
「……別に、何も言ってない。とうとうタカシは幻聴が聞こえる域に達した。……さよなら、タカシ」
「人をヤバイ人扱いするない。そうでなくて、なんか、……にゅうにゅう、とか言ってなかった?」
ちなみの体がびくりと震えた。
「あり? ひょっとしてここにおわすちなみさんは、牛乳と言えないのかにゃー? 体だけでなく、舌まで子供なのかにゃー?」
「……まったく、タカシは何を言っているのか。……体も舌も大人に決まっている。……そう遠くない未来に、育つに決まっている」
そう言いながら、ちなみは自分のぺたぺたの胸をぺたぺた触った。
「じゃ、牛乳って言って。さんはい」
「…………」
ちなみは机の中から文庫本を取り出し、読み始めてしまった。
「さんはい」
本を取り上げ、もう一度繰り返す。
「……にゅ」
「にゅ?」
「うるさい。……ちょっと、向こうむいて、耳塞ぐ」
ちなみは俺の頭を持ち、ぐるりと180度回転させた。
「首がぐるりと! エクソシスト!」
「……体も合わせて回転してるので、エクソシストならず。……首が取れなくて非常に残念」
「非常に残念とか言うな」
「……とにかく、耳塞ぐ。……じゃないと、……アレ、言わない」
「……ふむ、分かった」
と言ったけど、当然塞ぐはずがない。耳を塞ぐフリをして、少しだけ耳と手の間に空間を作る。そうしていたら、ちなみの小さな声が届いてきた。
「……にゅ、にゅうにゅう。……にゅうにゅう。……むぅ、言えない」
分かっていたことだけど、やはりちなみは牛乳と言えずにゅうにゅうと言ってしまうようだ。うむ、可愛すぎる。
「……にゅうにゅう。……に、にうにう」
惜しい! もうちょっとで牛乳だ! 最初の“に”を“ぎ”に変えろ! というか、何が難しいのか皆目検討がつかないのですが。
「……にゅうにゅう。……言えない。……いや、私は間違ってない。……にゅうにゅうの方が間違ってる」
ちなみの思考が変な方向に行きだした。
「……そもそも、言葉なんてその時々によって変わる物。……だから、にゅうにゅうと言ったからって、変なはずがない」
「いや、それはおかしい。牛乳は牛乳で、にゅうにゅうとはならないと思う」
「…………」
おや? 急にちなみが黙ったぞ。どうしたのだろうか。
なんて思ってたら、ぐるりと回転させられた。
「……聞いてた?」
なぜか顔を真っ赤にしながら俺に問いかけるちなみ。
「全然」
「……じゃあ、なんでさっき受け答えしたの」
「……? ……あ、ひょっとして、俺、……さっき喋った?」
ちなみはこっくり頷いた。
「いやはや、自分では心の中で思ってたつもりだったけど。うむ、そんなこともあるよね」
ぽんとちなみの頭に手を置き、全てをうやむやにする。
「……よくも聞いてたな」
うやむやは失敗したようだ。俺の手の下で顔を真っ赤にし、ちなみは半泣きでぷるぷる震えた。
「あ、いや、その、……にゅうにゅうに相談だ!」
「……にゅうにゅう言うな、ばか。……許さない」
にゅうにゅう言う娘っ子に追い掛け回された。捕まった。
「あー、授業を始め……うおっ、別府が縄でぐるぐる巻きで、いわゆるミノムシのような状態で窓から干されてる!」
「いじめだぁ! 先生、助けてぇ!」
「ま、どうせお前が余計なことしたんだろう、そこで授業受けてろ。あ、落ちても死ぬなよ。俺のせいになるから」
この学校はもうちょっと色々なことを気にした方がいいと思う。あと、俺見てにやにやしてるちなみがムカツク。