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2024年11月25日
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【デートすっぼかされたツンデレ】

2010年05月19日
 タカシにデートの約束を取り付けた。買い物に付き合って、と言ったけど、ほとんどデートよね、うん。
 お風呂に入って体中キレイにして、明日着ていく服選んで、ワクワクしながら寝て、あんまりにもワクワクしすぎてなかなか寝れなくて。
 日が昇る前に起きてお弁当作って、でもなかなか上手に出来ないから何度も作り直して、結局出来たのは約束の時間の2時間前。早起きしておいてよかった。ほとんど寝れなかったけど。
 集合場所の公園に着いたのが1時間半前。……ちょっと早すぎたかな。
 でも、いっか。こうやって待ってるのもデートの楽しみの一つだもんね。うん。
 ……タカシ、この服気に入ってくれるかな。とっておきの白のワンピース。……気合入りすぎてないよね? 変に勘繰られないよね?
 そうだ、お弁当大丈夫かな? 夏だし腐りにくいのは入れてないけど、あんまり日なたに置いてたら痛んじゃうよね。日陰に置いておこ。
 ……10分前か。タカシのことだし、たぶん遅れてくるよね。それをあたしは「こらー!」とか言って怒って出迎えるんだ。ふふっ、楽しみ♪
 ……30分過ぎた。ちょっと遅いな。でも、タカシのことだし仕方ないよね。もうちょっと待とっと。
 ……一時間が過ぎた。どうしたのかな? 寝過ごしたのかな? 電話でも……あ、携帯持ってくるの忘れちゃった。取りに帰ろうかな……。
 でも、その間にタカシが来たらがっかりするだろうし……うー、待とう。もうちょっとしたら来るよ、きっと。
 ……二時間が過ぎた。……忘れてるのかな。……それとも、あたしが相手だから嫌だったのかな。……やだ、涙出てきた。
 ……三時間が過ぎた。……嫌われちゃった、のかな。……帰ろう、かな。……でも、もし来たら、って思うと帰れない。
 ……タカシ。あたし、寂しいよぉ……。
「……はぁっ、はぁっ、かなみーっ!」
 待ち望んでいた声がした。あたしは、その声に顔を上げた。
「ごめん、マジでゴメン! 俺、約束明日だとばっかり勘違いしてて! 本当にごめん! 謝って済むこととは思わないけど、今は謝らせてくれ!」
 土下座しそうな勢いで、タカシはあたしにありったけの謝罪の言葉を口にした。
「……遅い」
 あたしは、それだけ言うので精一杯だった。だって、ちょっとでも口を開くと涙がこぼれそうだったから。
「あああああ、俺の馬鹿! なんでもするから許して! 本当、俺にできることならなんだってするから!」
「……じゃ、ここで裸踊りして」
「任せろ!」
 そう言って、人通りの多い公園でタカシは躊躇なく服を脱ぎだした。あたしは慌てて止めた。
「……冗談よ」
「へ? なんだ、冗談か。それでかなみの溜飲が下がるなら、俺は構わないのに」
 ……この人は、あたしのためならどんな恥ずかしいことでもできるんだ。
 嬉しくって、でもあんなことを言った自分が恥ずかしくて、笑ったような、怒ったような、泣きたいような、微妙な表情を浮かべてしまう。
「えっと、それで、かなみさん、……買い物に付き合いたいのですが、よろしいでしょうか?」
「……ぐすっ。お腹すいた」
「あ、それじゃどっかで飯食うか? どんな高いのでもいいぞ。今日は全部俺のおごりだ」
「…………」
 あたしは無言で首を振って、物陰に置いていたランチパックを取り出した。
「……遅れてきた罰。……これ、食べて」
「……罰って、えっと……」
 不安そうなタカシに、あたしはランチパックを開けた。中にある弁当箱を見て、タカシはほっと息を吐いた。
「なんだ、かなみの弁当か。こりゃ罰じゃなくてご褒美だな」
 あたしは恥ずかしくて、照れ隠しに満面の笑みを浮かべるタカシのほっぺをつねった。
「いへへへへ! なんだよ、本当のことなのに……」
 あたしは無言で弁当箱を取り出し、タカシに渡した。
「……早く食べなさいよ。それ食べたら、今日のことは不問にしてあげるから」
「任せろ! ……あ、早く食べるのだけは却下。折角のかなみの手料理だ、味わって食いたいしな」
 そう言って弁当箱の蓋を開けるタカシを、あたしはやっと笑って見ることができた。

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