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2024年11月24日
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【クリスマスをツンデレと過ごしたら】
2010年02月05日
今年もそろそろ終わり。で、現在クリスマスイブの夜。今頃ホテルでは年頃の男女がイチャイチャラブラブしていることだろう。(怨)
一方、年頃の俺には何ら素敵イベントが起きる気配はない。寂しさを紛らわせるように、テレビを点ける。
何かの歌番組なのか、クラスメイトのかなみがテレビの中でサンタの格好をし、クリスマスの歌を歌っていた。
「一応は芸能人なんだし、すげーパーティーしてるんだろうなあ……」
想像の中で行われているパーティーの面子より、むしろ豪華な食事に興味をそそられていると、携帯が鳴った。
「誰だ。俺は現在想像の中で行われているパーティーの飯を羨ましがるのに忙しいので、よっぽどの用件でなければ許さない」
『……アンタ、哀れにも程があるわよ』
「なんだ、かなみか。なんか用か? なんか妖怪? なんちて。うひゃひゃ」
『うわ、寒ッ! 死ね!』
通話を切られた。泣きそうになってたら、またかかってきた。
『あんまりつまんないこと言うなッ! 思わず切っちゃったじゃないの!』
「なぜ俺が怒られているのだ」
『まあそんなのはどうでもいいわ。さっきの言動からすると、アンタ暇でしょ? 今からアンタの家行くから』
「いいけど……なんでまたこんな日に? 俺みたいな奴より、家族やら恋人やら、そういう大事な人と過ごす方がいいと思うぞ」
『え? あ、その、だ、だから、その……』
「うん?」
『……う、うっさい! どうでもいいでしょ! あたしの勝手よ!』
「はあ。まあいいや、来い来い。ちょうど死ぬほど暇してたんだ」
『……アンタねぇ、今世紀最大のアイドルと言われるかなみちゃんが来るって言うのに、そのテンションはなに? もっと盛り上がりなさいよ!』
「嬉しさのあまりかなみが来るころには全身から謎の汁を噴き出して死んでるだろうから、後始末頼む」
『死ぬなッ! あーもー、いーから変なことしないで大人しくしてないさいッ! ケーキとか買ってくるからアンタは動くなッ!』
「心臓とかも? 困る」
『臓器は動かしとけッ!』
それだけ言って、かなみは通話を切った。ふむ、よく分からんがこれから来るのか。何もするなと言ってたが、せめて掃除だけでもしておこう。
せっせこ掃除してると、インターホンが鳴った。玄関に向かい、ドアを開ける。
「やほー、サンタさんだよー♪」
サンタの格好をしたかなみが妙なポーズを決めてた。
「病院へ行け」
思ったことを言ったらサンタに殴られた。
「なんつー言い草よ! ったく、せっかく衣装さんに言ってサンタの衣装借りてやったってのに……」
「いてて……いやまあ、うん。可愛い可愛い」
「そ、そう……? え、えへへ、まあ当然よね。ほら、あたしってば超可愛いし?」
「衣装のことを言いました」
また殴られた。このサンタ凶暴だ。
「誰かに見られたら面倒だからあがるわよッ!」
足音も荒く勝手に人の家に入る凶暴サンタ。続いて家に戻る。
「(ったく……人がせっかく頑張って早めに仕事終わらせて来てやったってのに……あによ、この仕打ち)」
「ん、何か言ったか?」
「何も言ってないッ!」
また殴られた。よく殴られます。
「ほら、ケーキ」
「ははー。謹んでお預かりします」
ぶっきらぼうに差し出された箱を、恭しく両手で受け取る。結構でかいな。
「お前が帰ったらありがたく食べるな」
「あたしも食べるに決まってるでしょうがッ!」
「スイーツ(笑)」
再び殴られた。何度目だ。
「ホントにもう……アンタねぇ、この状況分かってるの? 超人気アイドルのかなみちゃんと一緒のクリスマスなんて幸運、アンタが100万回生まれ変わったって訪れないんだからね?」
「お、ホールケーキか。二人で食いきれるかな」
「人の話聞けッ!」
ケーキの箱を開けてたら怒られた。よく殴られるだけでなく、よく怒られもします。
「……はぁ、せっかくのクリスマスだし、怒ってばっかりいてもしょうがないか。ほら、食べましょ」
「ちょっと待ってろ、ナイフ持ってくる」
台所へ向かい、ナイフを探す。そんな洒落たのねぇ。皿と包丁を持って戻る。
「これしかなかった」
「……まあいいわ。ほら、切りなさい」
「分かった。全然関係ないけど、包丁持つと興奮するよな」
かなみは無言で俺から包丁をひったくると、自分でケーキを切ってしまった。
「ちゃんとやる時もあるのに」
「あんなこと言ってる奴を信用できるかッ! ほら、アンタの分」
取り分けられたケーキを受け取る。
「ん、さんくす。じゃ、いただきます」
「はいはい。……しっかし、色気の欠片もないクリスマスねー。……あ、あのさ」
居住まいを正し、かなみは俺に話しかけた。
「もぐもぐ……うん?」
「……あ、アンタは、さ。あたしでよかったの?」
「?」
「だ、だから! ……だから、さ。……クリスマスに一緒なのが、あたしで」
「いいも何も、お前みたいな……言うのも恥ずかしいが、いわゆる超人気アイドルと一緒のクリスマスが嫌な奴なんていないだろ」
「……なんか、芸能人だったら誰でもいいみたいで、嬉しくない」
なんだか機嫌を損ねてしまったようだ。難しいなあ。
「うーん。というか、クリスマスに俺と一緒にいてくれるような奇特な奴なんて、世界中でお前くらいしかいないからなあ。比較のしようがない」
「……じゃ、一緒にいてくれるなら、誰でもよかったってこと?」
誰でも? ……こうして俺の向かいに座ってるのが、かなみじゃなく、他の誰でも?
「うーん……」
フォークを咥えたまま、腕を組んで考える。
「ちょ、そんな真剣に考えなくても、別に……」
「……いや。やっぱり、かなみじゃないと嫌だな」
わたわたと手を振るかなみを遮り、はっきりとそう言う。
「あ……う、そ、そう」
かなみの顔がゆっくりと赤くなっていった。
「あ、赤くなるな。こっちまで照れるだろうが」
「て、照れてなんてないわよっ! ばか、タカシのばか!」
「むう」
何かをごまかす様に、ケーキをもさもさ。うめえ。
「……その。それ、おいしい?」
「おいしい」
「……そか。……ふふっ、そっか」
「なんだよ、笑ったりして」
「んーん、なんでも。ほらほら、それより食べよっ」
「言われずとも食べてる」
「男なんだからもっと食べなさいよ。ほらほらほら」
「もがもがもが」
口の中にケーキをたくさん詰め込まれる。いかん、殺される。
「ほらほら。ふふ、おいしい?」
「もげもげもぐ……もぐ、ごくん。助けてえ!」
「なんで助けを呼んでるのよ!」
生命の危機を感じたからです。
「ったく、相変わらずバカねぇ……ほら、もう無理やり食べさせないから、ゆっくり食べよ?」
そう言ってかなみは優しく微笑んだ。不意に、胸がドキリとした。……かなみって、こんな可愛かったか?
「……サンタ衣装のせいだな」
「ん? 何が?」
「俺の視力がおかしくなった理由」
「え、なになに? あたしが可愛く見えでもした? ふっふーん、やっとタカシにも絶世のアイドル、かなみちゃんの魅力が分かってきたのね」
「なっ、何故それを!?」
……ってえ! 語るに落ちすぎだ、俺!
「え、あ……そ、そなんだ。本当にそなんだ」
いかん。照れたように自分の髪をいじるかなみが、妙に可愛くて見えて仕方ない。
今更ながら、クリスマスの夜にかなみというテレビでお馴染みのアイドルと一つ屋根の下にいるという事実に半びびり。
「……あー、そのだな。今更言うのもなんだが、折角のクリスマスだというのに、お前は俺と一緒でよかったのか?」
「むっ。嫌だったら最初っから誘わないっての。そんなこと聞くな、ばか」
かなみは指でケーキの生クリームをすくい、それを俺の鼻につけた。
「何をする」
「罰ゲーム。手を使って取っちゃダメだからね」
「むう。妖怪鼻舐めになるしか、このクリームを取る術はないな。妖怪鼻舐めとは、人間の鼻の脂を主食にする舌の長い妖怪であり、夜な夜な山里から降りてきては人間の鼻を舐めとるエコロジーな妖怪だ。鼻の脂以外を食べると死ぬ」
「んじゃ死ぬじゃない! ……じゃ、じゃあ、代わりにあたしが舐め取ってあげる」
「え゛」
何か言う前に、かなみはふわりと俺のすぐ間近まで迫り、俺の鼻をぺろりと舐めた。
「なっ、お、おま、おまえ、おまえなあッ!」
「ふふっ、あまーい♪」
「あ、あま、甘いとか、甘くないとか、最初に言い出したのは誰なのかしら」
「ムードぶち壊しにするようなこと言うなっ! なんでときメモよッ!」
「緊張感に耐え切れなかったんだ」
「ああもう……色々台無しよぉ……」
テーブルに突っ伏し、ぐでーとなるかなみさん。しょうがないとはいえ、少し申し訳ない。
「えーと。えい」
「ひゃっ!? 何するの……よ」
かなみの鼻にクリームをつけ、それをぺろり。
「ええと、お返し」
「……あ、そ、そう。……あによ、これで勝った気?」
「はい?」
「そんな奴は……こーだ!」
かなみは手に大量のクリームをつけ、俺のほっぺにべたりと塗った。そしてすぐさまぺろぺろと舐めだした。
「わっ、お、おまっ! さすがにやりすぎだぞ!」
「知らないわよ! へっへー、悔しかったらやり返しなさいよ!」
「……と、当然だとも! とうっ!」
一瞬躊躇したが、すかさず思い直し、クリームを手に取りかなみのほっぺにぬたぬた。そして、ぺろぺろ舐め取る。
「ふひゅっ……な、なんか、これ、……すっごくえっちかも」
「じゃあこのままIN+OUTになだれ込んでも気がつかれないかも!」
「つくわよっ! ったく、このかなみちゃんとそう簡単にえっちできると思わないことね、このヘンタイっ♪」
かなみは両手につけたクリームを俺の首筋になすりつけ、それをぺろぺろと舐め取った。熱くて柔らかな舌の触感に、腰骨が震えるような感覚を覚える。
「ふ、うぐ……ま、負ける気がしねー」
かなみのサンタ服をまくり、出てきた腹にクリームをなすりつけ、そこをぺろぺろぺろ。
「はひゅっ!? ちょ、そこはちょっとどうかと思うわよ!?」
「実は俺もやりすぎているかもと思っている」
とか言いながら、舌先でヘソのくぼみをぺろぺろ。
「ふにゃっ!? ちょ、そこダメ!」
「テンション上がってきた」
「上がるな! 顔を振るな! ついでに人のおなか舐めまくるなあっ!」
俺の顔もかなみの腹もクリームまみれです。
「うー……ひ、人のお腹を陵辱して、許さないからね!」
「陵辱て。人聞きの悪い」
「う、うっさい! とうっ!」
かなみは俺を押し倒し、俺の顔についているクリームをぺろぺろと舐めた。頬やらおでこやらまぶたやら舐められ大変。
「ぷわ、ぬわ、ぷわ」
「ぺろぺろ、ぺろぺろ。……わ、どうしよ。なんかすっごい楽しい」
「ぬわ、だからって舐めまくるのは、ぷわ、どうかと、ぬわ」
「ひひー♪ じっとしてないと、間違って口舐めちゃうわよー?」
「動きたいという本能と、じっとしていなければならないという理性が、俺の中で戦を!」
「……そ、それで、どっちが勝ったの?」
真剣な表情で、かなみが尋ねる。
「あー……その。ほ、本能って強いよね」
ゆっくりとした動きで、少しだけ顔を動かす。かなみの頬が赤くなっていく。
「そ、そう。……そんな動いてたら、間違えちゃうかもしれないわよね」
「か、かもな」
ゆっくりと降りてくるかなみの顔。鼻息が届きそうな距離から、鼻と鼻が挨拶するほどの距離まで近づく。かなみの吐息が、鼓動が、熱まで届きそうな。
「……あ、あれ?」
そのまま口と口が触れ合うとばかり思ってたのだが、かなみの口は俺の頬に触れただけだった。
「……すると思った?」
イタズラっぽい笑みを浮かべるかなみに、ようやっと騙されたことに気づく。
「て、てめえ! 純情な俺様の感情を弄びやがったなあ!」
「へっへー、そーんな軽くないんだな、かなみちゃんは♪」
イタズラが成功した子供の笑顔で、かなみはニコニコした。
「ね、ね、本当にすると思った? へっへー、どう、あたしの演技?」
「あー、流石は芸能人、見事な演技だ。お前が俺のことを好きだと勘違いする程度には騙された」
「えっ、あ、そ、それは……勘違いってゆーか」
「うん?」
「……い、いいのっ、タカシは何も気にしないで! いーわね!?」
よくないけど、なんか鬼気迫る勢いなのでコクコクうなずく。
「そっ。……すっ、素直だから、ご褒美あげる」
かなみは自分の体を俺の隣に横たえ、そのまま俺に抱きつき、俺の顔に残ってるクリームをさらに舐めた。
「ぷわ、ぬわ。……これ、ご褒美?」
「あによ。こんなことしてあげる奴なんて世界中でタカシだけなんだから、もっと喜びなさいよ」
俺のほっぺを甘噛みしながら、かなみは少し不満そうに言った。
「独占欲が満たされた!」
「普通に喜びなさいよ! ……ほんっと、変なやつ」
力の抜けたような笑みを浮かべ、かなみは俺のほっぺをひと舐めした。その顔をぼーっと眺める。
「ん? なに?」
吸い込まれるようにかなみの頬に口づけする。
「んひゃっ!? な、なに? く、クリームついてないわよ?」
「や、なんかしたくなった」
「……そ、そう。じゃ、仕方ないわよね」
俺もかなみも何が仕方ないのか分からないまま納得する。
「……ええと、だな。もっかいしていいか?」
「ど、どうしてもしたいなら、別に?」
微妙な許可が出たので、もう一度かなみのほっぺに吸い付く。
「……うー、な、なんか、あたしもしたい。いい?」
「ちゅーちゅー……不許可」
「なんでよ! あたしもする!」
俺を引き離すと、今度はかなみが俺のほっぺに吸い付いた。
「んー♪ んうー♪」
「くう、負けるものか!」
「ちゅー……だめー。あたしの番だもんー♪」
その後、吸ったり吸われたり舐めたり舐められたりした。
そんなことをしてたら知らない間に寝てたようで、気がつくと既に日が昇っていた。
「んにゅ……くー」
隣で寝てるサンタの頭を優しくなでる。
「んにゅ♪ ……んー、んう?」
うっすらとまぶたが開いていく。
「おはよう、サンタさん」
「……んー♪」
俺に抱きついてくるかなみの頭を、軽くなでなで。
「んー……ん?」
何かに気づいたかのように、かなみは頭を巡らした。そして、ある一点でぴたりと止まった。俺も釣られて同じ場所を見る。時計……?
「あああああーッ! ちっ、遅刻ーッ!」
「遅刻? もう学校は休みに入ってるぞ?」
「仕事! あるの! 朝から!」
ばたばたと立ち上がり、かなみは携帯を取り出すと、なにやら操作した。
「……うわあ、マネージャーからメール、すっごい来てた」
「大変だなあ。ふわあああ……さて、俺は寝直すか」
「ダメ! タカシのせいで寝過ごしたんだから、アンタも一緒に謝るの! ……あ、マネージャ? ……ああもう、分かってるわよ。すぐ車回して。……うん、そう、いつものところ」
マネージャーさんに連絡しながら、不思議なことを俺に言うかなみさん。
「あの、俺が行っても面倒になるとしか思えないのだけど」
「うっさい! なんでもいいからアンタも来るの! うー、服クリームでべとべとぉ……」
「精液でベトベトじゃなくてよかったね。らっきー♪」
ものすごい怖い顔で睨まれたので怖い。とか思ってたら、かなみの携帯が鳴った。
「はい! ……え、もう来たの? 分かった、すぐ行く!」
マネージャからのようだ。通話を切り、かなみは俺の手を取った。
「ほら、行くわよ!」
「え、マジで俺も行くの?」
「行くの! 別に一緒に謝れとか言わないから! 現場見学してるだけでもいいから! ……そ、その、すぐ離れるの、なんか嫌だし。……ダメ?」
俺を見上げる叱られた子供のような視線に、ノックアウト。
「……せめて顔くらい洗わせてくれ」
「うんっ、うんっ!」
嬉しそうなかなみと一緒に洗面台へ向かう俺だった。
一方、年頃の俺には何ら素敵イベントが起きる気配はない。寂しさを紛らわせるように、テレビを点ける。
何かの歌番組なのか、クラスメイトのかなみがテレビの中でサンタの格好をし、クリスマスの歌を歌っていた。
「一応は芸能人なんだし、すげーパーティーしてるんだろうなあ……」
想像の中で行われているパーティーの面子より、むしろ豪華な食事に興味をそそられていると、携帯が鳴った。
「誰だ。俺は現在想像の中で行われているパーティーの飯を羨ましがるのに忙しいので、よっぽどの用件でなければ許さない」
『……アンタ、哀れにも程があるわよ』
「なんだ、かなみか。なんか用か? なんか妖怪? なんちて。うひゃひゃ」
『うわ、寒ッ! 死ね!』
通話を切られた。泣きそうになってたら、またかかってきた。
『あんまりつまんないこと言うなッ! 思わず切っちゃったじゃないの!』
「なぜ俺が怒られているのだ」
『まあそんなのはどうでもいいわ。さっきの言動からすると、アンタ暇でしょ? 今からアンタの家行くから』
「いいけど……なんでまたこんな日に? 俺みたいな奴より、家族やら恋人やら、そういう大事な人と過ごす方がいいと思うぞ」
『え? あ、その、だ、だから、その……』
「うん?」
『……う、うっさい! どうでもいいでしょ! あたしの勝手よ!』
「はあ。まあいいや、来い来い。ちょうど死ぬほど暇してたんだ」
『……アンタねぇ、今世紀最大のアイドルと言われるかなみちゃんが来るって言うのに、そのテンションはなに? もっと盛り上がりなさいよ!』
「嬉しさのあまりかなみが来るころには全身から謎の汁を噴き出して死んでるだろうから、後始末頼む」
『死ぬなッ! あーもー、いーから変なことしないで大人しくしてないさいッ! ケーキとか買ってくるからアンタは動くなッ!』
「心臓とかも? 困る」
『臓器は動かしとけッ!』
それだけ言って、かなみは通話を切った。ふむ、よく分からんがこれから来るのか。何もするなと言ってたが、せめて掃除だけでもしておこう。
せっせこ掃除してると、インターホンが鳴った。玄関に向かい、ドアを開ける。
「やほー、サンタさんだよー♪」
サンタの格好をしたかなみが妙なポーズを決めてた。
「病院へ行け」
思ったことを言ったらサンタに殴られた。
「なんつー言い草よ! ったく、せっかく衣装さんに言ってサンタの衣装借りてやったってのに……」
「いてて……いやまあ、うん。可愛い可愛い」
「そ、そう……? え、えへへ、まあ当然よね。ほら、あたしってば超可愛いし?」
「衣装のことを言いました」
また殴られた。このサンタ凶暴だ。
「誰かに見られたら面倒だからあがるわよッ!」
足音も荒く勝手に人の家に入る凶暴サンタ。続いて家に戻る。
「(ったく……人がせっかく頑張って早めに仕事終わらせて来てやったってのに……あによ、この仕打ち)」
「ん、何か言ったか?」
「何も言ってないッ!」
また殴られた。よく殴られます。
「ほら、ケーキ」
「ははー。謹んでお預かりします」
ぶっきらぼうに差し出された箱を、恭しく両手で受け取る。結構でかいな。
「お前が帰ったらありがたく食べるな」
「あたしも食べるに決まってるでしょうがッ!」
「スイーツ(笑)」
再び殴られた。何度目だ。
「ホントにもう……アンタねぇ、この状況分かってるの? 超人気アイドルのかなみちゃんと一緒のクリスマスなんて幸運、アンタが100万回生まれ変わったって訪れないんだからね?」
「お、ホールケーキか。二人で食いきれるかな」
「人の話聞けッ!」
ケーキの箱を開けてたら怒られた。よく殴られるだけでなく、よく怒られもします。
「……はぁ、せっかくのクリスマスだし、怒ってばっかりいてもしょうがないか。ほら、食べましょ」
「ちょっと待ってろ、ナイフ持ってくる」
台所へ向かい、ナイフを探す。そんな洒落たのねぇ。皿と包丁を持って戻る。
「これしかなかった」
「……まあいいわ。ほら、切りなさい」
「分かった。全然関係ないけど、包丁持つと興奮するよな」
かなみは無言で俺から包丁をひったくると、自分でケーキを切ってしまった。
「ちゃんとやる時もあるのに」
「あんなこと言ってる奴を信用できるかッ! ほら、アンタの分」
取り分けられたケーキを受け取る。
「ん、さんくす。じゃ、いただきます」
「はいはい。……しっかし、色気の欠片もないクリスマスねー。……あ、あのさ」
居住まいを正し、かなみは俺に話しかけた。
「もぐもぐ……うん?」
「……あ、アンタは、さ。あたしでよかったの?」
「?」
「だ、だから! ……だから、さ。……クリスマスに一緒なのが、あたしで」
「いいも何も、お前みたいな……言うのも恥ずかしいが、いわゆる超人気アイドルと一緒のクリスマスが嫌な奴なんていないだろ」
「……なんか、芸能人だったら誰でもいいみたいで、嬉しくない」
なんだか機嫌を損ねてしまったようだ。難しいなあ。
「うーん。というか、クリスマスに俺と一緒にいてくれるような奇特な奴なんて、世界中でお前くらいしかいないからなあ。比較のしようがない」
「……じゃ、一緒にいてくれるなら、誰でもよかったってこと?」
誰でも? ……こうして俺の向かいに座ってるのが、かなみじゃなく、他の誰でも?
「うーん……」
フォークを咥えたまま、腕を組んで考える。
「ちょ、そんな真剣に考えなくても、別に……」
「……いや。やっぱり、かなみじゃないと嫌だな」
わたわたと手を振るかなみを遮り、はっきりとそう言う。
「あ……う、そ、そう」
かなみの顔がゆっくりと赤くなっていった。
「あ、赤くなるな。こっちまで照れるだろうが」
「て、照れてなんてないわよっ! ばか、タカシのばか!」
「むう」
何かをごまかす様に、ケーキをもさもさ。うめえ。
「……その。それ、おいしい?」
「おいしい」
「……そか。……ふふっ、そっか」
「なんだよ、笑ったりして」
「んーん、なんでも。ほらほら、それより食べよっ」
「言われずとも食べてる」
「男なんだからもっと食べなさいよ。ほらほらほら」
「もがもがもが」
口の中にケーキをたくさん詰め込まれる。いかん、殺される。
「ほらほら。ふふ、おいしい?」
「もげもげもぐ……もぐ、ごくん。助けてえ!」
「なんで助けを呼んでるのよ!」
生命の危機を感じたからです。
「ったく、相変わらずバカねぇ……ほら、もう無理やり食べさせないから、ゆっくり食べよ?」
そう言ってかなみは優しく微笑んだ。不意に、胸がドキリとした。……かなみって、こんな可愛かったか?
「……サンタ衣装のせいだな」
「ん? 何が?」
「俺の視力がおかしくなった理由」
「え、なになに? あたしが可愛く見えでもした? ふっふーん、やっとタカシにも絶世のアイドル、かなみちゃんの魅力が分かってきたのね」
「なっ、何故それを!?」
……ってえ! 語るに落ちすぎだ、俺!
「え、あ……そ、そなんだ。本当にそなんだ」
いかん。照れたように自分の髪をいじるかなみが、妙に可愛くて見えて仕方ない。
今更ながら、クリスマスの夜にかなみというテレビでお馴染みのアイドルと一つ屋根の下にいるという事実に半びびり。
「……あー、そのだな。今更言うのもなんだが、折角のクリスマスだというのに、お前は俺と一緒でよかったのか?」
「むっ。嫌だったら最初っから誘わないっての。そんなこと聞くな、ばか」
かなみは指でケーキの生クリームをすくい、それを俺の鼻につけた。
「何をする」
「罰ゲーム。手を使って取っちゃダメだからね」
「むう。妖怪鼻舐めになるしか、このクリームを取る術はないな。妖怪鼻舐めとは、人間の鼻の脂を主食にする舌の長い妖怪であり、夜な夜な山里から降りてきては人間の鼻を舐めとるエコロジーな妖怪だ。鼻の脂以外を食べると死ぬ」
「んじゃ死ぬじゃない! ……じゃ、じゃあ、代わりにあたしが舐め取ってあげる」
「え゛」
何か言う前に、かなみはふわりと俺のすぐ間近まで迫り、俺の鼻をぺろりと舐めた。
「なっ、お、おま、おまえ、おまえなあッ!」
「ふふっ、あまーい♪」
「あ、あま、甘いとか、甘くないとか、最初に言い出したのは誰なのかしら」
「ムードぶち壊しにするようなこと言うなっ! なんでときメモよッ!」
「緊張感に耐え切れなかったんだ」
「ああもう……色々台無しよぉ……」
テーブルに突っ伏し、ぐでーとなるかなみさん。しょうがないとはいえ、少し申し訳ない。
「えーと。えい」
「ひゃっ!? 何するの……よ」
かなみの鼻にクリームをつけ、それをぺろり。
「ええと、お返し」
「……あ、そ、そう。……あによ、これで勝った気?」
「はい?」
「そんな奴は……こーだ!」
かなみは手に大量のクリームをつけ、俺のほっぺにべたりと塗った。そしてすぐさまぺろぺろと舐めだした。
「わっ、お、おまっ! さすがにやりすぎだぞ!」
「知らないわよ! へっへー、悔しかったらやり返しなさいよ!」
「……と、当然だとも! とうっ!」
一瞬躊躇したが、すかさず思い直し、クリームを手に取りかなみのほっぺにぬたぬた。そして、ぺろぺろ舐め取る。
「ふひゅっ……な、なんか、これ、……すっごくえっちかも」
「じゃあこのままIN+OUTになだれ込んでも気がつかれないかも!」
「つくわよっ! ったく、このかなみちゃんとそう簡単にえっちできると思わないことね、このヘンタイっ♪」
かなみは両手につけたクリームを俺の首筋になすりつけ、それをぺろぺろと舐め取った。熱くて柔らかな舌の触感に、腰骨が震えるような感覚を覚える。
「ふ、うぐ……ま、負ける気がしねー」
かなみのサンタ服をまくり、出てきた腹にクリームをなすりつけ、そこをぺろぺろぺろ。
「はひゅっ!? ちょ、そこはちょっとどうかと思うわよ!?」
「実は俺もやりすぎているかもと思っている」
とか言いながら、舌先でヘソのくぼみをぺろぺろ。
「ふにゃっ!? ちょ、そこダメ!」
「テンション上がってきた」
「上がるな! 顔を振るな! ついでに人のおなか舐めまくるなあっ!」
俺の顔もかなみの腹もクリームまみれです。
「うー……ひ、人のお腹を陵辱して、許さないからね!」
「陵辱て。人聞きの悪い」
「う、うっさい! とうっ!」
かなみは俺を押し倒し、俺の顔についているクリームをぺろぺろと舐めた。頬やらおでこやらまぶたやら舐められ大変。
「ぷわ、ぬわ、ぷわ」
「ぺろぺろ、ぺろぺろ。……わ、どうしよ。なんかすっごい楽しい」
「ぬわ、だからって舐めまくるのは、ぷわ、どうかと、ぬわ」
「ひひー♪ じっとしてないと、間違って口舐めちゃうわよー?」
「動きたいという本能と、じっとしていなければならないという理性が、俺の中で戦を!」
「……そ、それで、どっちが勝ったの?」
真剣な表情で、かなみが尋ねる。
「あー……その。ほ、本能って強いよね」
ゆっくりとした動きで、少しだけ顔を動かす。かなみの頬が赤くなっていく。
「そ、そう。……そんな動いてたら、間違えちゃうかもしれないわよね」
「か、かもな」
ゆっくりと降りてくるかなみの顔。鼻息が届きそうな距離から、鼻と鼻が挨拶するほどの距離まで近づく。かなみの吐息が、鼓動が、熱まで届きそうな。
「……あ、あれ?」
そのまま口と口が触れ合うとばかり思ってたのだが、かなみの口は俺の頬に触れただけだった。
「……すると思った?」
イタズラっぽい笑みを浮かべるかなみに、ようやっと騙されたことに気づく。
「て、てめえ! 純情な俺様の感情を弄びやがったなあ!」
「へっへー、そーんな軽くないんだな、かなみちゃんは♪」
イタズラが成功した子供の笑顔で、かなみはニコニコした。
「ね、ね、本当にすると思った? へっへー、どう、あたしの演技?」
「あー、流石は芸能人、見事な演技だ。お前が俺のことを好きだと勘違いする程度には騙された」
「えっ、あ、そ、それは……勘違いってゆーか」
「うん?」
「……い、いいのっ、タカシは何も気にしないで! いーわね!?」
よくないけど、なんか鬼気迫る勢いなのでコクコクうなずく。
「そっ。……すっ、素直だから、ご褒美あげる」
かなみは自分の体を俺の隣に横たえ、そのまま俺に抱きつき、俺の顔に残ってるクリームをさらに舐めた。
「ぷわ、ぬわ。……これ、ご褒美?」
「あによ。こんなことしてあげる奴なんて世界中でタカシだけなんだから、もっと喜びなさいよ」
俺のほっぺを甘噛みしながら、かなみは少し不満そうに言った。
「独占欲が満たされた!」
「普通に喜びなさいよ! ……ほんっと、変なやつ」
力の抜けたような笑みを浮かべ、かなみは俺のほっぺをひと舐めした。その顔をぼーっと眺める。
「ん? なに?」
吸い込まれるようにかなみの頬に口づけする。
「んひゃっ!? な、なに? く、クリームついてないわよ?」
「や、なんかしたくなった」
「……そ、そう。じゃ、仕方ないわよね」
俺もかなみも何が仕方ないのか分からないまま納得する。
「……ええと、だな。もっかいしていいか?」
「ど、どうしてもしたいなら、別に?」
微妙な許可が出たので、もう一度かなみのほっぺに吸い付く。
「……うー、な、なんか、あたしもしたい。いい?」
「ちゅーちゅー……不許可」
「なんでよ! あたしもする!」
俺を引き離すと、今度はかなみが俺のほっぺに吸い付いた。
「んー♪ んうー♪」
「くう、負けるものか!」
「ちゅー……だめー。あたしの番だもんー♪」
その後、吸ったり吸われたり舐めたり舐められたりした。
そんなことをしてたら知らない間に寝てたようで、気がつくと既に日が昇っていた。
「んにゅ……くー」
隣で寝てるサンタの頭を優しくなでる。
「んにゅ♪ ……んー、んう?」
うっすらとまぶたが開いていく。
「おはよう、サンタさん」
「……んー♪」
俺に抱きついてくるかなみの頭を、軽くなでなで。
「んー……ん?」
何かに気づいたかのように、かなみは頭を巡らした。そして、ある一点でぴたりと止まった。俺も釣られて同じ場所を見る。時計……?
「あああああーッ! ちっ、遅刻ーッ!」
「遅刻? もう学校は休みに入ってるぞ?」
「仕事! あるの! 朝から!」
ばたばたと立ち上がり、かなみは携帯を取り出すと、なにやら操作した。
「……うわあ、マネージャーからメール、すっごい来てた」
「大変だなあ。ふわあああ……さて、俺は寝直すか」
「ダメ! タカシのせいで寝過ごしたんだから、アンタも一緒に謝るの! ……あ、マネージャ? ……ああもう、分かってるわよ。すぐ車回して。……うん、そう、いつものところ」
マネージャーさんに連絡しながら、不思議なことを俺に言うかなみさん。
「あの、俺が行っても面倒になるとしか思えないのだけど」
「うっさい! なんでもいいからアンタも来るの! うー、服クリームでべとべとぉ……」
「精液でベトベトじゃなくてよかったね。らっきー♪」
ものすごい怖い顔で睨まれたので怖い。とか思ってたら、かなみの携帯が鳴った。
「はい! ……え、もう来たの? 分かった、すぐ行く!」
マネージャからのようだ。通話を切り、かなみは俺の手を取った。
「ほら、行くわよ!」
「え、マジで俺も行くの?」
「行くの! 別に一緒に謝れとか言わないから! 現場見学してるだけでもいいから! ……そ、その、すぐ離れるの、なんか嫌だし。……ダメ?」
俺を見上げる叱られた子供のような視線に、ノックアウト。
「……せめて顔くらい洗わせてくれ」
「うんっ、うんっ!」
嬉しそうなかなみと一緒に洗面台へ向かう俺だった。
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無題
かなみは可愛いなぁ…デレデレですね