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2024年11月23日
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【ツンデレと宿題】

2010年04月03日
 俺の部屋は冬寒く夏暑い欠陥住宅なので、とてもとても暑い。扇風機をつけたところで焼け石に水、もう溶けそう。
「いや、あるいはもう溶けているのではないだろうか」
「な~にがあるいは、やねん。くだらんこと言っとる暇あったら、手動かしや」
 机を挟み、俺の対面に座るいずみが馬鹿にしたように言った。
「淫靡にか? 任せろ、得意だ」
「アホっ! なんで宿題すんのに手を淫靡に動かさなアカンねんっ!」
「いや、いずみが嫌がるかなぁ、と」
「ホンマにアホやねんなぁ……」
 しみじみ言われると、本当にそのように思えるからやめてください。
「うーむ……疲れた。いずみ、休憩しよーぜ、きゅーけー」
「アカンよー。まだやり始めて30分も経ってへんやろ? もうちょっと頑張らんと」
「えー、しんどい疲れた脳が勉強禁止令を発令するのです」
「……はぁ。あのな、夏休みの宿題一気に片付けるから手伝ってください、って言うたん誰やったっけ?」
「俺。忘れたのか? うむ、いずみの脳も勉強のあまり老化が始まったか」
 鼻を引っ張られた。そういうことではない様だ。
「あのな、タカシ。別にウチは手伝わんでもええねんで?」
「貴様、俺の学力が下から数えた方が早い雰囲気と知っての狼藉か!」
「狼藉って……でも、アンタ確かに英語は全然ダメやけど、国語とか数学はそこそこ得意やろ? やったらそれだけでも自分で……」
「む、褒めるのか? 心の準備……よし。さ、褒めれ。頭をなでろ。なでなですれ」
「犬か」
「人間です」
「知ってるわ!」
「知ってるなら聞かないで欲しい。犬になったかとドキドキするだろ」
「あのな……ああもぅええわ。なんやウチも疲れたし、休憩しよか」
「やった! アイス持ってくるな!」
 急ぎ台所に走り、カップアイスとスプーンを二つずつ取る。そして部屋に戻る。
「アイス! この日のために買っておきました!」
「そうなん、ご苦労様やな。……てっきり棒アイス持ってくる思たけど、普通のカップアイスやな」
「しまった、その手があったか! ちょっとコンビニ行ってくる!」
「アホ! 買ってきてもウチ食わんで!」
「ええ~、折角の擬似フェラチャンスなのに」
「死ね」
「嫌です」
 ちょっと泣きそうになるが、なんとか断る。
「……はぁ。ほら、諦めてそれ食い」
 しぶしぶアイスを食う。冷たくておいしい。
「ん~……やっぱ夏はアイスやなぁ」
「ひゃっこくて、おいしい」
「あ、アンタのチョコなん? ウチにもちょうだい」
「お前のバニラちょっとくれるなら」
「ん~……まぁええで」
「よし、交渉成立。ほい」
「え?」
 スプーンでアイスをすくい、いずみの前に突きつけると、彼女は目を瞬かせた。
「え、じゃない。食え」
「そ、そんなんせんでも自分で食べるからええわ」
「いーから食え。言ってる間に溶けるだろ。ほら、あーん」
「う……あ、あーん」
 何か言いたそうだったけど、それでもいずみは素直に口を開けてアイスを食べた。
「ん……チョコもおいしいなぁ」
 いずみは顔を綻ばせた。見てるこっちまで嬉しくなっちゃうじゃんコンチクショウ。
「次は俺の番。あー」
「あー……って、ま、まさかウチもすんの!?」
「当然だ。ほれ、あー」
「う……しゃ、しゃあないな。はい、あーん」
 小さく頬を染めながら、いずみは俺の口にアイスを入れた。バニラの甘みが口中に広がる。
「ん、うまい。バニラもいいなぁ」
 バニラ味を堪能したので自分のを食べてると、いずみがなんだかぼーっと自分のスプーンを見ているのに気がついた。
「どした?」
「えっ、な、なんでもないで?」
 しばらく逡巡していたいずみだが、やおら決心したようにスプーンを口に含んだ。そして、ちゅうちゅうと吸いだした。
「……いずみ。スプーンは吸うものではなく、すくうものだぞ?」
「えっ、あっ、ちゃ、ちゃうねん、ちゃうねんで?」
 何が違うのか分からない。
「よく分からんが、程々にな」
「うっ、う~……馬鹿にしてるやろ」
 不満そうに俺を睨むいずみ。
「馬鹿にはしてない。馬鹿には」
 変な奴だなぁとは思ったけど。
「う~……あっ、アンタのせいや! 全部アンタのせいやからな!」
「何が?」
「う、うるさいわ! ええか、全部アンタが悪いんやからな? ウチ悪ないで?」
 全然なんのことか分からない。……性格のことか?
「確かに悪いかもしれんが、なにも今言わなくても……」
「いっ、いま言わんでいつ言うねん! アンタがあんな、その、……間接キスみたいなマネするから、ウチ……」
「ああ!」
 なるほど、なんか変だと思ったらそれが原因か。理由が分かってすっきり。
「つまり意識してしまったのか。初々しい奴だなぁ、かーわいー」
「かっ、からかうな、アホっ!」
 いずみは真っ赤になりながら、ヤケクソ気味に俺のほっぺをにうにう引っ張った。
「わはははは、かーわいー」
「まだ言うかッ!」
 沢山沢山にうにうされたけど、からかえて満足。ただ、まるで宿題が手につかなかったのだけが残念無念。
 明日もいずみ誘おう。

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