【パンダちなみん】
2010年05月31日
ちなみがパンダになった、と言い張る。何か言う前に逃げようとしたけど捕まった。
「……パンダです、がお」
「パンダの鳴き声って、がお、か?」
「……よく分からなかったんです」
ちなみは少し不満そうに言った。
「パンダの鳴き声は『オニーチャーン』だ」
「違います」
即答される。非常に残念。
「それで、今回はなんだ?」
「……パンダは食欲旺盛です。……パンダちなみも、食欲旺盛です」
そう言って、ちなみは弁当箱を二つ出した。
「食欲旺盛のはず……なんですが、今日のパンダちなみはあまり食欲がありません。この残飯を処理してください」
ちなみは大きいほうの包みを俺に押し付けた。
「……残飯、すか」
「……ちゃっちゃと食べてください。食べないと、犯されたと言いふらします」
白黒の生き物に脅迫される。仕方ないので包みを解き、蓋を開ける。
「……残飯?」
「……です」
残飯どころか、死ぬほど気合いの入った弁当が出てきた。
「……はやく、食べてください。……それとも、笹の方がいいですか?」
鞄を漁りだしたので、俺はいそいで弁当を食った。
白黒の奇怪な生き物は、それを見て嬉しそうに自分の弁当を食べていた。
「……パンダです、がお」
「パンダの鳴き声って、がお、か?」
「……よく分からなかったんです」
ちなみは少し不満そうに言った。
「パンダの鳴き声は『オニーチャーン』だ」
「違います」
即答される。非常に残念。
「それで、今回はなんだ?」
「……パンダは食欲旺盛です。……パンダちなみも、食欲旺盛です」
そう言って、ちなみは弁当箱を二つ出した。
「食欲旺盛のはず……なんですが、今日のパンダちなみはあまり食欲がありません。この残飯を処理してください」
ちなみは大きいほうの包みを俺に押し付けた。
「……残飯、すか」
「……ちゃっちゃと食べてください。食べないと、犯されたと言いふらします」
白黒の生き物に脅迫される。仕方ないので包みを解き、蓋を開ける。
「……残飯?」
「……です」
残飯どころか、死ぬほど気合いの入った弁当が出てきた。
「……はやく、食べてください。……それとも、笹の方がいいですか?」
鞄を漁りだしたので、俺はいそいで弁当を食った。
白黒の奇怪な生き物は、それを見て嬉しそうに自分の弁当を食べていた。
【セミちなみん】
2010年05月31日
背後から足音がしたので逃げ出した。失敗した。
「……セミです。みーん、みーん」
「勘弁してください」
土下座して許しを請ったけど、セミはミンミンなくばかり。
「……今日はお友達を紹介するよー」
「せ、セミよ。みーんみーん」
「セミですわ。みーんみーん」
「セミじゃ。みーんみーん」
「セミだ。みーんみーん」
かなみにリナ、まつりにみことの四人が、セミのきぐるみを着てそこに立っていた。
「……だーいしゅーうごーう。いえー」
「馬鹿」
「……はい、タカシさん。セミといえば?」
俺の発言を無視し、ちなみが問いかける。
「えーと、夏?」
「ぶぶー。はずれ。ばーか」
「…………」
「正解は、おしっこでーす」
「ぶっ!」
「不正解者には罰ゲームです。罰ゲームには、問題にそったものが使われまーす」
「おまっ、そっ、それってもしかして!」
俺の両腕をかなみとリナが、両足をまつりとみことがそれぞれ固め、どこかに連行される。
「うぎゃーッ!」
何人目で気絶したか、覚えてない。
「……セミです。みーん、みーん」
「勘弁してください」
土下座して許しを請ったけど、セミはミンミンなくばかり。
「……今日はお友達を紹介するよー」
「せ、セミよ。みーんみーん」
「セミですわ。みーんみーん」
「セミじゃ。みーんみーん」
「セミだ。みーんみーん」
かなみにリナ、まつりにみことの四人が、セミのきぐるみを着てそこに立っていた。
「……だーいしゅーうごーう。いえー」
「馬鹿」
「……はい、タカシさん。セミといえば?」
俺の発言を無視し、ちなみが問いかける。
「えーと、夏?」
「ぶぶー。はずれ。ばーか」
「…………」
「正解は、おしっこでーす」
「ぶっ!」
「不正解者には罰ゲームです。罰ゲームには、問題にそったものが使われまーす」
「おまっ、そっ、それってもしかして!」
俺の両腕をかなみとリナが、両足をまつりとみことがそれぞれ固め、どこかに連行される。
「うぎゃーッ!」
何人目で気絶したか、覚えてない。
【ペンギンちなみん】
2010年05月31日
足音が聞こえた。もう諦めた。
「……ペンギンです。ぺたぺた」
ぺたぺた言いながら顔をぺたぺた触るのはやめて頂きたい。
「……ペンギンは、卵を孵すのに股を使います」
もう嫌な予感がする。あと、股じゃなくて正確には腹の肉。
「……タカシは学生なので、まだまだ半人前。……いわば、卵です」
「いや、半人前なら雛っていうんじゃ……」
「…………」
人殺しの目で見られたので黙る。
「……卵です。……だから、暖めてあげます」
そう言ってちなみは俺を押し倒し、顔を股で挟んだ。
「ふがっ!?」
「っ! う、動かないでください……ッ!」
動くなって、んな無茶な! ぱんつで鼻と口を押さえられてて、このままじゃ死ぬ!
……まぁ、ある意味最高の死に方だけど。
「ッ! ……か、孵りましたか?」
「ふがふが(喋れないから口をぱくぱく)」
「あう……ッ! ……は、反撃のつもりですか?」
「ふが、ふが(そんなつもりはないと首をぶんぶん)」
「ひぅッ……はぁはぁ。ち、ちょっと待って、ちょっと……」
「ふがふが、にゅっ(もういいやと思って舌をつきだす)」
「は、はああぁぁ……。やめ、やめて……あ、あああ、出ちゃう、出ちゃうよぅ……」
ちなみが俺の顔の上でぷるぷる震えた後、何やら生暖かい液体が。
「あ、ああ、あああああ……」
※タカシは、新しい性癖に目覚めかけた!
「……ペンギンです。ぺたぺた」
ぺたぺた言いながら顔をぺたぺた触るのはやめて頂きたい。
「……ペンギンは、卵を孵すのに股を使います」
もう嫌な予感がする。あと、股じゃなくて正確には腹の肉。
「……タカシは学生なので、まだまだ半人前。……いわば、卵です」
「いや、半人前なら雛っていうんじゃ……」
「…………」
人殺しの目で見られたので黙る。
「……卵です。……だから、暖めてあげます」
そう言ってちなみは俺を押し倒し、顔を股で挟んだ。
「ふがっ!?」
「っ! う、動かないでください……ッ!」
動くなって、んな無茶な! ぱんつで鼻と口を押さえられてて、このままじゃ死ぬ!
……まぁ、ある意味最高の死に方だけど。
「ッ! ……か、孵りましたか?」
「ふがふが(喋れないから口をぱくぱく)」
「あう……ッ! ……は、反撃のつもりですか?」
「ふが、ふが(そんなつもりはないと首をぶんぶん)」
「ひぅッ……はぁはぁ。ち、ちょっと待って、ちょっと……」
「ふがふが、にゅっ(もういいやと思って舌をつきだす)」
「は、はああぁぁ……。やめ、やめて……あ、あああ、出ちゃう、出ちゃうよぅ……」
ちなみが俺の顔の上でぷるぷる震えた後、何やら生暖かい液体が。
「あ、ああ、あああああ……」
※タカシは、新しい性癖に目覚めかけた!
【うさぎちなみん】
2010年05月31日
たまにはこっちから誘おうとちなみを探したら、うさぎに着替え中でした。
「…………」
ものすごい殴られたけど、どうにか生きてる奇跡。
「……うさぎです。ぴょんぴょん、うさ」
それでもちゃんと名乗るちなみは律儀だと思う。
「……うさぎは、寂しいと死ぬといいます」
「いや、それ迷信」
「……兎ちなみは、寂しいと死にます」
断言されると、信じるしかない。
「……死んで欲しくなかったら、かまってください」
そう言って、ちなみは両手を広げて俺を見上げた。
「……まー、ちなみに死なれると困るしな」
俺は、ちなみをぎゅっと抱きしめた。
「……わ」
そのまま少し強く抱きしめる。ぎゅっ、ぎゅー。
「は、はうぅ……」
「これでいいか?」
「……も、もっと、です」
ぎゅっ、とちなみの方から抱きついてきた。負けじと俺も抱きしめる。
ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅぎゅぎゅー。
「……これ、予想以上にいいです。……すごく、落ち着きます」
「ああ、確かに……」
ちなみの体は小さく、俺の胸にすっぽり収まる感じだ。抱き枕にちょうどいいかもしれない。
その時、チャイムが鳴った。
「あ、授業行かないと……」
手を離そうとすると、強く抱きしめられる感覚。
「……まだ、です。まだ、……充電が、足りません」
「いや、んなこと言っても授業が……俺、よくサボるから単位そろそろ危ないし」
「……なら」
必殺の策を携え、教室に戻る。少し遅刻だ。
「あー、すいません先生。ちっと遅れました」
「遅いぞ、別……」
俺を見て、先生が絶句する。それを尻目に、自分の席に着く。
「ちょ、ちょっとタカシ」
「ん?」
隣のかなみが話しかけてきた。
「……どしたの、それ」
かなみの指差す先……つまり、俺の首に腕を回し、しがみついている兎ちなみを見て、当然の疑問を口にする。
「うさぎだから、仕方ない」
「……です、うさ」
俺に続けてちなみが言った。
「はぁ? うさぎ?」
「……まぁ色々あるんだ。気にしないでくれ」
うさぎの頭をなでると、気持ちよさそうな鼻声を出して俺の胸に顔をこすりつけた。
「~♪」
機嫌のよさそうなちなみを見ていると、目が血走り、鼻息荒く、残り少ない髪を剥げ落としならがこちらへ向かってくる教師のことなんてどうでもよくなってくるよね。
「…………」
ものすごい殴られたけど、どうにか生きてる奇跡。
「……うさぎです。ぴょんぴょん、うさ」
それでもちゃんと名乗るちなみは律儀だと思う。
「……うさぎは、寂しいと死ぬといいます」
「いや、それ迷信」
「……兎ちなみは、寂しいと死にます」
断言されると、信じるしかない。
「……死んで欲しくなかったら、かまってください」
そう言って、ちなみは両手を広げて俺を見上げた。
「……まー、ちなみに死なれると困るしな」
俺は、ちなみをぎゅっと抱きしめた。
「……わ」
そのまま少し強く抱きしめる。ぎゅっ、ぎゅー。
「は、はうぅ……」
「これでいいか?」
「……も、もっと、です」
ぎゅっ、とちなみの方から抱きついてきた。負けじと俺も抱きしめる。
ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅぎゅぎゅー。
「……これ、予想以上にいいです。……すごく、落ち着きます」
「ああ、確かに……」
ちなみの体は小さく、俺の胸にすっぽり収まる感じだ。抱き枕にちょうどいいかもしれない。
その時、チャイムが鳴った。
「あ、授業行かないと……」
手を離そうとすると、強く抱きしめられる感覚。
「……まだ、です。まだ、……充電が、足りません」
「いや、んなこと言っても授業が……俺、よくサボるから単位そろそろ危ないし」
「……なら」
必殺の策を携え、教室に戻る。少し遅刻だ。
「あー、すいません先生。ちっと遅れました」
「遅いぞ、別……」
俺を見て、先生が絶句する。それを尻目に、自分の席に着く。
「ちょ、ちょっとタカシ」
「ん?」
隣のかなみが話しかけてきた。
「……どしたの、それ」
かなみの指差す先……つまり、俺の首に腕を回し、しがみついている兎ちなみを見て、当然の疑問を口にする。
「うさぎだから、仕方ない」
「……です、うさ」
俺に続けてちなみが言った。
「はぁ? うさぎ?」
「……まぁ色々あるんだ。気にしないでくれ」
うさぎの頭をなでると、気持ちよさそうな鼻声を出して俺の胸に顔をこすりつけた。
「~♪」
機嫌のよさそうなちなみを見ていると、目が血走り、鼻息荒く、残り少ない髪を剥げ落としならがこちらへ向かってくる教師のことなんてどうでもよくなってくるよね。
【タカシのにおいをクンクンしてるところを目撃されたツンデレ 】
2010年05月30日
ちなみが部屋を見たいと聞いたタカシは、彼女を自分の部屋に招待した。
「……汚い部屋。なんか変な臭いするし」
ポスンとベッドの上に座り、ちなみは物珍しそうにタカシの部屋を見ていた。
「悪かったな。掃除なんて面倒なんで滅多にしないもんでね」
「……特にこの枕。すごい汚い」
「あーあー悪かったな。俺、寝る時うつぶせで寝るから、よだれで汚れてんだろ」
「……最悪。ところで、お客さんに飲み物を出すという概念は、この家にはないの?」
「くっ……了解しましたよ、お客様。直ちにお持ち致しますので、少々お待ちください」
タカシは言われた通り、飲み物を取りに行った。
「…………」
部屋の主がいなくなったことを確認すると、ちなみは当初の目的を遂行すべく行動に移した。
「……これが、タカシの……」
枕に顔を埋め、深く深呼吸する。彼のにおいが鼻腔に充満する。
「……くんくん、くんくん。……はうぅ、臭いよぅ。タカシ臭いよぅ。くんくん、くんくん」
何度も何度も顔を寄せ、枕を嗅ぐ。まるで猫がマタタビに酔うように、ちなみはタカシの枕に酔っていた。
「はぅ、はぅ~♪ いい匂いだお~♪」
枕を抱きしめ、ベッドの上を転がる。ゴロゴロ、ゴロゴロ、がちゃ。
「…………」
「…………」
お盆にジュースを載せ棒立ちしているタカシの視線と、ベッドの上で枕を抱きしめ、悶え転がるちなみの視線が絡み合った。
「……こほん」
ちなみはゆっくり枕をベッドに置き、居住まいを正した。ほのかに頬が赤い。
「……ええと、ジュース持ってきたんだけど……早かったか?」
「何の話をしたいのか全然さっぱりちっとも分かりません」
「何の話って、さっきの……」
「分かりません。全然分かりません。そうだ用事を思い出しました、帰ります」
「えっ、ちょっ」
「そうだこの枕汚いから洗ってあげます」
一息でそう言うと、ちなみは素早く枕を自分の鞄の中に入れた。
「え、えと……?」
「それじゃさよなら。また明日学校で」
「あ、は、はぁ……」
ちなみは普段の緩慢な動きが嘘のように、素早く部屋を出て行った。それを、タカシは呆然と立ち尽くして見送った。
(……見られた)
ちなみは自室で激しく落ち込んでいた。
(……恥ずかしいところ、すごい見られた)
壁に頭を預け、タカシから頂戴した枕をぎゅっと抱きしめる。
(……嫌われたかな。……気持ち悪いって思われたかな。……もう、喋ってくれないかな)
自分の考えで、じわっと涙が出てくる。
「……いやだよぅ。もっと、いっぱいお喋りしたいよぅ……。頭、なでてほしいよぅ……」
涙が、抱きしめた枕に落ちた。後から後から涙がこぼれた。
結局、ちなみはほとんど眠れず朝を迎えた。泣きすぎたせいで、目が真っ赤だ。
(……とにかく、謝ろう。許してくれなくても、嫌われても、謝ろう。気持ち悪いことして、ごめんって。もう近寄らないから許して、って)
それが、一晩考えて出た結論だった。喋れなくなるのはとても辛いけど、そう考えただけで泣きそうになるけど、嫌われるよりはマシだ。
急いで学校に向かいたいのだけど、足がどうしても急いでくれない。どこかで、タカシに会うのを怖がっている自分がいる。
「おはよ」
「!」
心臓が飛び出るかと思った。振り返ると、……タカシがいた。
「……なんで? こんなところ、通らないでしょ?」
「んー……なんとなく今日はこっちから学校に行きたくなった、じゃダメか?」
この人は……どうして、こうなんだろう。
「枕を洗ってもらう礼も、昨日言えなかったしな。昨日のアレ、どんだけ汚れてるのか調べてだけだろ?」
どうして……私の悲しみを取り去ってくれる、魔法のような言葉を知っているのだろう。
それが嘘だと分かっていても、私を許してくれる言葉。私の心を暖かくしてくれる、魔法の言葉。
「ありがとな、ちなみ」
そう言って、タカシは笑って、すごく優しい顔で私の頭をなでた。
「…………」
「なっ、なに泣いてんだ!? なんかしたか、俺!?」
私は無言で頭を横に振った。小さくすん、とすすり上げ、タカシを見つめる。
「……なんでもないです。それより、遅刻しますよ」
タカシを置いて先に学校へ向かう。
「えっ? ま、待ってくれよ。折角だから一緒に行こうぜ」
「嫌です。……誰かに誤解されたら、不愉快です」
素直になれない私のばか。なんで嬉しい、って言えないの。
「俺は誤解されたら嬉しいけどな……ああ、待って! スピードあげないで!」
「ばか、ばーか。変なこと言わないでください」
私は、心の中でタカシに謝罪と、感謝をした。
素直じゃなくてごめんなさい。こんな私のそばにいてくれて、ありがとう、って。
……言葉になんてできないから、少しだけ勇気を出す。
私は立ち止まり、後ろを振り返った。息を切らせたタカシの手を素早く握る。
「うわっ! ち、ちなみ!?」
「……変なこと言わないなら、一緒に行ってあげます」
顔を上げずにそう言った。きっと、私の顔は真っ赤だろうから。
「……手、繋いでか?」
「……嫌ならいいです」
離そうとすると、タカシの手が私の手を強く握った。
「いや、そんなわけない! この時を夢みていたほどだ!」
「……やっぱり馬鹿」
私は、世界で一番大切な人と手を繋いで、できるだけこの時間が長く続くように、ゆっくり、ゆっくり歩いた。
「……汚い部屋。なんか変な臭いするし」
ポスンとベッドの上に座り、ちなみは物珍しそうにタカシの部屋を見ていた。
「悪かったな。掃除なんて面倒なんで滅多にしないもんでね」
「……特にこの枕。すごい汚い」
「あーあー悪かったな。俺、寝る時うつぶせで寝るから、よだれで汚れてんだろ」
「……最悪。ところで、お客さんに飲み物を出すという概念は、この家にはないの?」
「くっ……了解しましたよ、お客様。直ちにお持ち致しますので、少々お待ちください」
タカシは言われた通り、飲み物を取りに行った。
「…………」
部屋の主がいなくなったことを確認すると、ちなみは当初の目的を遂行すべく行動に移した。
「……これが、タカシの……」
枕に顔を埋め、深く深呼吸する。彼のにおいが鼻腔に充満する。
「……くんくん、くんくん。……はうぅ、臭いよぅ。タカシ臭いよぅ。くんくん、くんくん」
何度も何度も顔を寄せ、枕を嗅ぐ。まるで猫がマタタビに酔うように、ちなみはタカシの枕に酔っていた。
「はぅ、はぅ~♪ いい匂いだお~♪」
枕を抱きしめ、ベッドの上を転がる。ゴロゴロ、ゴロゴロ、がちゃ。
「…………」
「…………」
お盆にジュースを載せ棒立ちしているタカシの視線と、ベッドの上で枕を抱きしめ、悶え転がるちなみの視線が絡み合った。
「……こほん」
ちなみはゆっくり枕をベッドに置き、居住まいを正した。ほのかに頬が赤い。
「……ええと、ジュース持ってきたんだけど……早かったか?」
「何の話をしたいのか全然さっぱりちっとも分かりません」
「何の話って、さっきの……」
「分かりません。全然分かりません。そうだ用事を思い出しました、帰ります」
「えっ、ちょっ」
「そうだこの枕汚いから洗ってあげます」
一息でそう言うと、ちなみは素早く枕を自分の鞄の中に入れた。
「え、えと……?」
「それじゃさよなら。また明日学校で」
「あ、は、はぁ……」
ちなみは普段の緩慢な動きが嘘のように、素早く部屋を出て行った。それを、タカシは呆然と立ち尽くして見送った。
(……見られた)
ちなみは自室で激しく落ち込んでいた。
(……恥ずかしいところ、すごい見られた)
壁に頭を預け、タカシから頂戴した枕をぎゅっと抱きしめる。
(……嫌われたかな。……気持ち悪いって思われたかな。……もう、喋ってくれないかな)
自分の考えで、じわっと涙が出てくる。
「……いやだよぅ。もっと、いっぱいお喋りしたいよぅ……。頭、なでてほしいよぅ……」
涙が、抱きしめた枕に落ちた。後から後から涙がこぼれた。
結局、ちなみはほとんど眠れず朝を迎えた。泣きすぎたせいで、目が真っ赤だ。
(……とにかく、謝ろう。許してくれなくても、嫌われても、謝ろう。気持ち悪いことして、ごめんって。もう近寄らないから許して、って)
それが、一晩考えて出た結論だった。喋れなくなるのはとても辛いけど、そう考えただけで泣きそうになるけど、嫌われるよりはマシだ。
急いで学校に向かいたいのだけど、足がどうしても急いでくれない。どこかで、タカシに会うのを怖がっている自分がいる。
「おはよ」
「!」
心臓が飛び出るかと思った。振り返ると、……タカシがいた。
「……なんで? こんなところ、通らないでしょ?」
「んー……なんとなく今日はこっちから学校に行きたくなった、じゃダメか?」
この人は……どうして、こうなんだろう。
「枕を洗ってもらう礼も、昨日言えなかったしな。昨日のアレ、どんだけ汚れてるのか調べてだけだろ?」
どうして……私の悲しみを取り去ってくれる、魔法のような言葉を知っているのだろう。
それが嘘だと分かっていても、私を許してくれる言葉。私の心を暖かくしてくれる、魔法の言葉。
「ありがとな、ちなみ」
そう言って、タカシは笑って、すごく優しい顔で私の頭をなでた。
「…………」
「なっ、なに泣いてんだ!? なんかしたか、俺!?」
私は無言で頭を横に振った。小さくすん、とすすり上げ、タカシを見つめる。
「……なんでもないです。それより、遅刻しますよ」
タカシを置いて先に学校へ向かう。
「えっ? ま、待ってくれよ。折角だから一緒に行こうぜ」
「嫌です。……誰かに誤解されたら、不愉快です」
素直になれない私のばか。なんで嬉しい、って言えないの。
「俺は誤解されたら嬉しいけどな……ああ、待って! スピードあげないで!」
「ばか、ばーか。変なこと言わないでください」
私は、心の中でタカシに謝罪と、感謝をした。
素直じゃなくてごめんなさい。こんな私のそばにいてくれて、ありがとう、って。
……言葉になんてできないから、少しだけ勇気を出す。
私は立ち止まり、後ろを振り返った。息を切らせたタカシの手を素早く握る。
「うわっ! ち、ちなみ!?」
「……変なこと言わないなら、一緒に行ってあげます」
顔を上げずにそう言った。きっと、私の顔は真っ赤だろうから。
「……手、繋いでか?」
「……嫌ならいいです」
離そうとすると、タカシの手が私の手を強く握った。
「いや、そんなわけない! この時を夢みていたほどだ!」
「……やっぱり馬鹿」
私は、世界で一番大切な人と手を繋いで、できるだけこの時間が長く続くように、ゆっくり、ゆっくり歩いた。
